夜パートへ向かおうと用意していた夕方、病院から電話。
「先生から説明があります。いつ来られますか?」
「緊急なのでしょうか。」
「骨の手術についてなので なるべく早く来ていただきたいのですが」
母の右頭部は、正面から見ても 米粒のようにへこんできた。
丸刈りにされた頭髪も、2センチほど伸びて来た。
母さん、アタマの形、きれいだよ。
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脳梗塞を起こし、壊死してしまった脳の右半球はすぐさま膨張を開始し、放置すると頭蓋内で、残った左脳を圧迫し、呼吸困難を起こして死に至るという。
母は運ばれた日の翌朝早朝に、連絡を受けた家族の到着を待たず、頭蓋骨を切除して内部の脳圧を外へ逃すため手術室に運ばれた。
六時間にわたる手術の後、二十九日間 眠り続けた。
左半身は完全麻痺。
わずかずつではあるが 反応が見られるようになり、
左目を少し開き、右手指がわずかに動き、右足が少し動き。
右頭部は頭蓋に穴が開き脳が突出した状態で人工硬膜で覆い、頭皮をもどした状態で、
ベッドへ寝かされるにも麻痺した左半身を下に強制的に固定された形。
遠軽から北見は片道1時間。病院から戻ると深夜まで夜パート。
毎日はきつい。
39日目の今日、病院から電話があり、先生からの説明があるので来るようにと。
壊死した右脳の腫れが治まり、頭蓋内へ落ち着いてきたので、切除した頭蓋片をもとに戻すのだろう。
再び、母は手術台に乗らなくてはならない。
寝たきりで、栄養チューブを介した液体食。カロリーは最低。体力は失われたままだ。
もう一度、きつい手術に耐えて、再び 笑顔を見せてほしい。