魚を大事にしない日本人シリーズ R5-15
ROUND5 魚を食べる時に思った疑問
かつお節パワーの効果(2)鰹節はたんぱく質の塊・疲労回復効果
鰹は回遊の長旅に要すスタミナ・瞬発力を発揮するパワーも備える
「鰹節のパワー」の2回目です。「UMAMI」(旨味)は、今や世界共通語です。日本人は、遥か昔から魚を食べてきました。国土が山の幸・海の幸に恵まれ、南北の長い列島なので地域ごとの食文化が育ちました。それが世界へ躍進し、鰹節と昆布の出汁を基本とした「和食」がクローズアップされています。「出汁」も、世界中の人が認識し始めているのです。しかし逆に肝心な日本人の食文化が、肉食化し懸念されます。美味しさは言うまでもなく、疾病・メタボ予防などからも、和食・出汁を基本とした伝統的な日本食を大事にしたいものです。味噌や醤油は中国から伝来しましたが、鰹節はカビ付けを行い旨みを出すなど日本独自の食品です。
かつお節パワーの効果の2つめは、たんぱく質が豊富なことから「疲労回復の効果」です。鰹節は、抜群にたんぱく質が多いのです。生の鰹は約26%、鰹節は77%もあり、たんぱく質の塊と言えます。たんぱく質を構成するアミノ酸がいくつか結合してできた「ペプチド」は、疲労回復効果があると注目を集めています。ペプチドの効果には、もう1つ集中力を高める効果あり、仕事や学力向上に繋がります。さらに必須アミノ酸のリジンが多く、リジンが少ない米と一緒に食べるとアミノ酸のバランスが良くなるそうです。おかかのおにぎりは、先人が生み出した生活の智恵でしょうか!
ここで、鰹の生態にも触れておきましょう。ご存じのように、鰹は太平洋近海を南北に回遊します。初夏に獲れる初鰹、夏場に三陸沖へ北上する下り鰹、そして秋に房総半島に南下する戻り鰹です。鰹の泳ぐスピードは、鮪(まぐろ)とともに最高です。平均は時速30km、餌に突進する際には瞬間時速100kmとも言われています。絶えず泳ぎ続けているため、魚体は筋肉の固まりで固く張っています。そのせいでしょうか?漢字は、「魚」に「堅」です。赤黒い身肉は色素たんぱく質ミオグロビンの色で、ミオグロビンは酸素を貯蔵しておくタンクのようなものです。鮪と同じく長距離回遊に要するスタミナ、高速で泳ぐ筋力など素晴らしいのです。
鰹節の国内生産量は、約5万トンあります。内訳は鰹節(1本のもの)が3.1万トン・鰹削り節が約1.8トンです。さらに輸入が4,500トンあり、ほとんどが東南アジアからです。インドネシア・フィリピン・ベトナムだけで、90%以上に及びます。なお鰹は、名前や味が全く違っても鮪(まぐろ)の仲間・一種なのです。年配の方はご存じのように、かつて遠洋漁業が華やかりし頃は「かつおまぐろ船団」として注目されました。また現在でもデータ上は、「かつお・まぐろ類」と括る場合や、まぐろ類の中に鰹が含まれる表現をします。北半球では、北から温帯性マグロ類のクロマグロ・ビンナガマグロが生息、その南に熱帯性マグロのメバチマグロ・キハダマグロ、赤道付近にいるのが「カツオ」です。