北翔大学 教育文化学部 教育学科

本学科は保育士資格、小学校、特別支援学校教諭、幼稚園教諭、養護教諭、中学・高校(音楽)の一種教員免許などが取得できます。

北翔大学教員の活動 エッセイ「百歳までのピアノ人生?」鈴木しおり

2015年01月07日 | 教育学科 音 楽 コース
 本ブログで大学の教職員の活動などについてもブログで紹介していきます。今回は教育学科の音楽コースの鈴木しおり先生です。

「明けまして、おめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。栗林育英学術財団発行の財団便り『かけ橋 第36号(平成26年12月15日)』に私のエッセイが掲載されました。
 札幌交響楽団のコンサートマスター大平まゆみさんの著書『100歳まで弾くからね!(北海道新聞社、平成12年12月)』に触発され、ピアノについて書いたものです。」







「百歳までのピアノ人生?」


北翔大学 鈴木しおり


 先日、札幌交響楽団コンサートマスターの大平まゆみさんが『100歳まで弾くからね!』というご本を出版されました。私は、北翔大学教育学科音楽コースで教えており、専門はピアノですが、私も大平さんのように100歳までピアノを弾くことができるでしょうか?・・・ ウ~ン、自信がありません。
ピアノは、直接に息を使う声楽や管楽器とは違って、息を止めても2分間くらいは演奏でき、しかも猫が鍵盤の上を歩いてもそれなりの音が出ます。音程も調律師によってすでに鍵盤で整えられています。これだけではピアノは簡単そうに見えますが、実はまったく難しい楽器です。他の楽器と立ち位置がやや違う、端的に申せば、より現代に近いバーチャルの世界、つまり“錯覚の位置”にいるからです。例えば、ショパンのノクターンの旋律をソプラノ歌手が歌うように切々と奏でていても、打てば直ちに減音する音をさまざまな工夫でつなぎ合わせて、なんとか歌のようなレガート(なめらかさ)を演出しているのです。更に、ピアノの難しさは“一人でアンサンブルをする”ところにあります。
ピアノは88鍵盤で240本以上の弦を響かせ、「打楽器・鍵盤楽器・弦楽器」の3つの顔をもつ複雑な楽器です。1700年に生まれてから現代までに300年間かけて、音楽の圧倒的な情報量に対応できる楽器に成長しました。オーケストラの最高音ピッコロから最低音のコントラバスやチューバの音域を軽く網羅し、リズムやデナーミク(強弱)にも強くなりました。オーケストラが多様な楽器の音色による“色彩のアンサンブル”なら、ピアノは“白黒のアンサンブル” です。私はいつもピアノの楽譜をみながら、「この旋律はどの楽器?」と自問自答し、イメージ作りに苦労しています。モノトーンの世界に、多くの経験、知識、技術とイメージでもって“音楽の命”を吹き込まなくてはなりません。
ですので、とりわけピアノ曲を理解するには人生経験がものを言い、「長い年月をかけて精進することが大切」と私なりに考えています。ピアニストこそ百歳まで弾く覚悟で勉強しなくてはならないのでしょう。
とにかくピアノ独奏ともなれば、10本の指と両足、体全体を使ってまさに全身全霊でピアノに向かうのですが、私が百歳まで演奏する自信がないという理由は、その圧倒的な情報量である「楽譜の記憶力」、そして「演奏する体力(筋力)」、練習するための「防音室の確保(金力)」・・・この3Kです。
とはいえ、少しでも長くピアノとお付き合いができるように「3K対策」に心をくだき、ピアノ音楽の魅力を一人でも多くの人々に伝えたいとつくづく思う今日このごろです。


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