THE BOOKハンター!

~〈本の虫〉の痛快読書日誌~

「涙の川を渡るとき――遠藤実自伝」(遠藤実/日本経済新聞社)

2009年01月27日 | Weblog
 昨年12月、日本の歌謡界を牽引してきた作曲家・遠藤実さんが亡くなられました。私はこれまで遠藤さんの名前は知っていましたが、演歌など歌謡曲については詳しくないため、遠藤さんについてはほとんど知らず、テレビの特番で紹介されているエピソードを知り、遠藤さんの人間としての部分に興味を持ちました。
この本は、遠藤さんが2006年に日本経済新聞「私の履歴書」に連載した自伝をまとめたもので、遠藤さんの半生が赤裸々に綴られています。連載当時、遠藤さんはファンから「なにもここまで詳しく書かなくても…」と言われたそうです。でも、遠藤さんは晩年に自分の人生をはじめから見つめ直そうと、自分のためにこの自伝を書きました。
 貧しい日々を生きた少年時代、貧しさに挫けず夢を抱き続けた青年時代……。遠藤さんは若い頃から多くの苦難を味わってきましたが、歌によって救われました。 幼くては父を亡くした少年が、日本を代表する作曲家になるまでに体験した苦労話。「からたち日記」から「北国の春」まで数多くの遠藤メロディーの誕生秘話。亡き両親や妻への思い……など、飾らない遠藤さんの瑞々しい文章にぐいぐいと引き込まれました。