浦発理財のある社員はもともと2万元(約39万円)あった給与が6260元にまで減給されたとSNSで訴えていた。この銀行の普通行員はおよそ50%の減給、主任級以上は40%減給が通達され、一部行員はこれに抵抗してストライキを行っているという。
こうした中国金融界の苦境は、米中分断や習近平の金融粛清と無縁ではない。経済の中枢を支える金融マンたちはすでにエリートではなくなっている。
浦発銀行クレジットセンターは経営には無駄が多いのではないか、という株主からの疑問もかねてからあった。
ちなみに浦発銀行クレジットカードセンター社員・職員のうちおよそ1万人が人材派遣会社と契約した非正規雇用で、非正規雇用の契約社員の月給は1~2万元(約20万~39万円)だったという。
契約社員たちは新たな請負企業との再契約に際し、それまで所属していた人材派遣会社に対して勤続年数×月給分の退職金を支払うように要求したが、会社側はこれを拒否。また新たな請負企業が提示した給与は新人のもらう給与のように低かったという。
ある契約社員は月1万元あった月給が4000~5000元に下げられたという。
近年の銀行市場は相対的に飽和状態で、銀行間競争の圧力は大きくなっている。北京はまだましだが、急激に厳しくなっているのは上海で、クレジットカードや理財商品の銀行員の販売ノルマは重く、かつてほど銀行員は花形職業には思われていない。
習近平「三つのレッドライン」の 不動産政策の失敗は、消費者の不動産市場への信頼を根こそぎ奪い、銀行は消費者の住宅ローン返済拒否問題とデベロッパーに対する投融資のエクスポージャー拡大の両方の圧力、リスクの板挟みという厳しい状況に陥っている。
さらに習近平の今年の政策の目玉は、金融機構改革で、腐敗撲滅を建前に金融機関に対する監督統制を強化することだ。また、習近平の掲げる共同富裕論にもとづき、銀行員の給与が高すぎるという世論も起きていた。
こうした中国の経済、社会環境の縮図が浦発銀行問題に表れたと言える。
銀行員だけでなく、証券マン、地方政府公務員、中央企業管理職などこれまで安定職業、高給取りのエリート、花形とよばれていた職業は今、新規採用が激減し、給与カットが繰り返され、リストラが進んでいる。
そして高額給与のエリートたちに対して「給与をもらいすぎだ」と批判する庶民の恨みが、習近平の「共同富裕」政策の錯誤を修正させるどころか、後押しする状況で、中国経済が悪化していく中で、金融エリートたち、安定花形職業は消滅していくしかない状況なのだ。