米国政府債務が31兆4,000億ドルの法定上限に達し、議会で上限の引き上げや適用停止を決めなければ、政府がデフォルト(債務不履行)に陥る「Xデー」が近づいてきた。物価高騰、景気減速リスク、さらに銀行不安に直面している米国金融市場に、さらなる不安定要素が重なってきたのである。返済能力には問題がないテクニカル・デフォルトであるとはいえ、仮に米国政府がひとたびデフォルトに陥れば、世界の金融市場を大きく揺るがす事態となることは必至である。 イエレン財務長官は共和党のマッカーシー下院議長への書簡で、「最近の連邦政府の税収を検証した結果、6月上旬までに政府債務のすべてを履行することは不可能になる見通しが強まった。デフォルトは6月1日にも訪れる可能性がある」と指摘した。 イエレン財務長官は今年1月19日に、マッカーシー議長宛ての書簡で、政府債務が法定上限に到達したことを明らかにした。米議会は2021年12月に、政府の法定債務上限を約31兆4,000億ドルに引き上げたが、それから1年が経過して、政府債務がこの上限にまで達したのである。
「ねじれ議会」が生んだ政治色が強い債務上限問題
債務上限問題が浮上したのは、昨年の中間選挙で野党共和党が下院で過半数の議席を得て、「ねじれ議会」が生じたからだ。そのため、上下両院で債務上限の引き上げや適用の停止を決めるには、民主党と共和党が歩み寄る必要がある。しかし現状では、歩み寄りの兆しはみられていない。 共和党は、大幅な歳出削減を交換条件に、債務上限の引き上げを行うとしているのに対して、バイデン民主党政権は、条件なしで債務上限を引き上げるよう、共和党側に求めている。 今年1月に数日間かけて15回もの投票を行ってようやく下院議長に選出されたマッカーシー氏は、強硬派の共和党議員らに対し、バイデン政権が歳出削減に同意しない限り、同党は債務上限の引き上げに賛成することはないと約束していた。そのため、民主党側に対して容易に譲歩はしないとみられる。