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Re:SALOON & VBA

しばらくは、過去BBSの倉庫、および
作成した EXCEL VBA の置き場(公開)として

目をとじる幸せ

2006年01月03日 20時39分10秒 | 詩(塚原将)
なくしたくないひとは やっぱりなくしたくない たとえそのひとの想いが わたしの掌に戻ってきたところで 若すぎる柄のネクタイのように 周章(あわ)ててしまう他はないものであっても 孤りだけの想いは その日のままの姿で戻ってゆけるので わたしは 目をとじて歳月を辿ってゆく幸せを 知りすぎてしまった 塚原将『消せない時間』より . . . Read more

あのひと

2006年01月02日 16時22分17秒 | 詩(塚原将)
あのひとにあげられるものは わたしには残っていなかった 過ぎ去った歳月は 次々にくぐり抜けるのに 手渡さなくてはならなかった ひとつの言葉を 他のひとにあげてしまったので 夜の街のコーヒー店で 砂糖を入れることができない コーヒーを飲んだ なつかしむ言葉のひとつひとつが わたしの心を少年に戻してゆくほど あなたを あのひとと呼び換えた日の冷たさが強まり 愛していたのにという つぶやきを 砂 . . . Read more

手紙

2005年12月31日 01時27分23秒 | 詩(塚原将)
書きおえた手紙を 読み返す勇気もなく 封筒に入れると 小さな痛みが たえまなく降り注いだ あなたの心の動きを考えながら 手紙を書く哀しさは 昨日より降り続いている 雨の冷たさに ほんの少し和らげられているだけで それでも この手紙を出すことが解りきっているだけに 降り注ぐ痛みのなかに 傘をさすことも出来ないのだ 塚原将『消せない時間』より . . . Read more

感傷

2005年12月30日 22時22分48秒 | 詩(塚原将)
夕暮れになると 蒼く透きとおった槍が わたしの胸に突き刺さる あなたの肩の暖かさを 想いだす細い雨の夕暮れには 槍の穂先は 透明度を深くして しまいこんだ涙のまんなかを 正確に突き通すのだ 塚原将『消せない時間』より . . . Read more

いくつもの別れの後に

2005年12月29日 22時03分26秒 | 詩(塚原将)
すれ違う旅人同志の挨拶のように 別れはいつもさっぱりしていた なにひとつ惜しむこともなく 投げ捨てた煙草のように ほんの少し煙ることもあったが それすら目の前に続く路を 歩いていくことに気をとられて 消えてゆく火の哀しさに気づくこともなかった 五月の森を行く汽車のように わたしのまわりはまばゆく揺れて いくつもの別れは 次の出逢いのためにあったのに 永い永い森をくぐり抜けて いつの間にか消え . . . Read more

2005年12月26日 01時27分21秒 | 詩(塚原将)
わたしが安らいで寝る夜に みる夢は ひとりきり 青いセロハンで包まれた夜の路を 歩きつづける夢だ いつも誰かに逢いたいと おもっているわたしが 何故そんな夜に カーニバルの夢をみないのだろう 塚原将『消せない時間』より . . . Read more

なにもない時間

2005年12月24日 08時48分35秒 | 詩(塚原将)
わたしのまわりで 無数のひとが燃えている よく知っているひとびとから 街中ですれ違ったほどのひとびとまでが 心地良い香りで燃えている その真中に坐りこんで もう何も手繰りよせるものはない 燃えているひとびとの 形を残している骨を丹念にもみほぐして 細かな灰になってしまった ひとびとのなかにもぐりこんで 前も後もないからっぽな時間に包まれて ぬくぬくと ぬくぬくと 両手を精一杯頭の上に伸ばして . . . Read more

遠い安らぎ

2005年12月23日 22時52分37秒 | 詩(塚原将)
赤ん坊は 落しものをしないような型に 掌をひらいている 眠りのすぐ前の 遠い目つきのなかに もう夢が流れこんでいる 赤ん坊にとって ごくあたりまえの時間を見つめていると すきとおった痛さが 忘れ果てていた意識まで届いてゆき そむけた目にうつったのは ベッドの下に拡がった 夜深い草原だった 塚原将『消せない時間』より . . . Read more