化学系エンジニアの独り言

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原発敗戦

2013-01-13 | エネルギー
人から勧められた本ですが、共感するところが多かった。表題や序章に大日本帝国などの言葉が述べられ少々過激的ですが、要は原子力発電を順次減少させて化石燃料発電と再生可能エネルギーを補完的に使用する社会にするという主張です。

著者はエンジニアリング会社で長年エネルギープラントやや石油化学プラントの設計、建設と運転に従事してきた技術者です。その豊富な経験から原発の設計・建設・運転について技術的矛盾を指摘し、多様な再生可能エネルギー利用技術の導入をその効率とコストの面から縦横無尽に語ってくれています。

現状の原子力発電プラントは安全面の設計矛盾と放射性廃棄物の処理に解決できない課題を抱えており、従ってその新設は困難と見ています。卒原発とか脱原発という情緒的な言葉遊びでなく、技術屋らしく寿命となった炉を廃炉にするシナリオを提唱しています。これを「原発自然死シナリオ」と読んでいます。

地球温暖化への対応を「人為的温暖化説」として、警鐘をならします。温暖化現象は肯定するが、その原因は化石燃料燃焼による二酸化炭素の排出量増加ではなく、天体としての地球の挙動によるものという解釈を支持しています。

そしてこの二酸化炭素犯人説の呪縛から逃れ、化石燃料の効率的利用の促進を主張しています。さらに再生可能エネルギーの低コスト化と利用効率の向上、省エネを進めていきます。最終的には発電変動のある再生可能エネルギーを化石燃料発電で補完するシナリオを進めるというわけです。

元エンジニアリング会社の技術屋らしく、取り上げている技術は広範でその効率とコストの観点からの主張は納得するところが多くありました。例えば、燃料電池は高効率ではあるがコスト低下が期待できないので、主要エネルギー手段にはならないだろうとしています。

巻末の参考文献は100件近くに及びます。エネルギー供給という社会的な課題に技術面とコスト面から考察しているものです。いわゆる原子力村の住民でない技術屋の提言として大いに参考になると思います。


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