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燃料電池 VS 太陽電池

2009-03-01 | エネルギー
今年は燃料電池展を見に行けなかった。昨年から同時開催となった太陽電池展のほうが、燃料電池展よりも出展社も多く来場者も多くて活気が有ったらしい。こういう情報を聞くとこのまま燃料電池展は縮小されてしまうのでは、という感じもしてしまいます。

一時の開発ブームが収まって実用化・普及の時期に来ているので、展示会への出店が減ったとも考えられますが、太陽電池展の盛況と比較すると燃料電池という技術が一つの節目を迎えているとも考えられます。
2002年当時は首相官邸に燃料電池自動車が納入されたり、2007年には5万台の燃料電池自動車を普及させるという役所の目標が有りました。今から思えば、大嘘ということになりますね。理由は簡単で燃料電池の技術的壁が予想以上に高かったということです。更に言えば、燃料となる水素をどうやって作るのか(CO2排出を抑制しながら)、作った水素をどういうインフラで配送・供給するのか、といった課題を同時に解決しなければいけないからでしょう。

一方、太陽電池は欧米でCO2抑制の大きな柱として認知され、補助金などに後押しされて大きく伸びてきました。気がつけばトップを走っていた日本のPVメーカーがその順位を大きく落としていた、という現状です。日本政府も負けじと2005年に止めた太陽光発電に対する補助金を復活させて、再びPV導入を加速しようとしています。

燃料電池のうちでも家庭用1kW級(級と表すのはメーカーによっては800W程度の発電能力のシステムもあるため)システムは、これまでに補助金を受けながら3000台ほど設置され実証試験が行われてきました。今年になってついに一般への販売が始まりました。もちろん、補助金はあります。これまでメーカーによっていろいろな呼び名がありましたが、エネファームという名称で統一されています。

ところで、燃料電池と太陽電池はどちらがお得なのでしょうか。言い方を変えればどちらがCO2抑制あるいは省エネ効果が高いのでしょうか?一口に結論を出すのは難しいですが、簡単に比較して見ます。

燃料電池システムは価格320万ですが補助金が140万ありますので、実質価格は180万です。これで年間5-6万円の節約が出来るそうです。つまりその分だけの電力使用量が減るということです。6万円×30年の価値と今の180万の価値は同じではありませんが、単純計算だともとをとるのに30年かかります。燃料電池システムが30年持つかどうか、その間のメンテナンスコストなども考えると元を取るというよりも省エネに貢献するために設置するということですね。

太陽電池はシステム価格が70万/kWだそうで、一般家庭ならば3kWシステム(最近は買電を考えて4kW-5kWシステムもあるそうです)で足りるので210万。補助金は7万/kWなので21万ですから、実質価格は190万です。この価格は燃料電池とほぼ同じですね。年間の発電量は地域によっても違いますがおおむね1000kWh/年・kWですから、3kWしすてむで3000kWhの発電が出来ます。電力価格を25円とすれば7.5万円分発電するわけで、この分だけ節約が出来ることになります。そうすると元を取るのに25年かかる計算になり、燃料電池よりもちょっとお得といえるかもしれません。しかしどちらもずいぶんと長いので正確に比較は出来ないというところでしょうか。(最近電力買取価格を50円にするという策も出されたようなので、この計算はもう少し短くなるのでしょう。)

燃料電池システムでは必要なだけ発電して足りない分はもともとの電灯線から使うことになり、電力が余るということはありません。一方、太陽電池はお天気任せで発電するので足りない時は電灯線からの分も合わせて使い、逆にあまったら電灯線を通して電力会社に売ることが出来ます。この電力会社が買い取ってくれる分だけ太陽電池のほうが有利なのです。

ところで太陽電池がいくらお得かをネットで調べてみると必ずオール電化住宅に設置した場合という試算になっています。つまり電力会社が太陽電池を応援しているわけです。電気を買い取りますからその代わり、オール電化住宅にしてねということです。オール電化住宅にはガス管を設置しませんから、オール電化住宅が普及するとガス会社は困ります。

そこでガス会社、石油会社はスクラムを組んで燃料電池システムを普及させてオール電化住宅の攻勢に対抗しようというわけです。どちらがいいということはないんでしょうね。例えば、オール電化+太陽電池のほうがお得だったとして、日本国中の住宅をオール電化にすることが可能でしょうか、その時にも深夜電力は安く買えるのでしょうか。
エネルギーというのはある程度分散している、分散させておくとこが必要ですから、太陽電池も燃料電池もその特長を生かして利用していくことになるのでしょう。

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