化学系エンジニアの独り言

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石炭の価格

2005-11-08 | 石炭
世界経済の足かせになるかもしれないとFRBのG議長も言っている原油高だが、ここにきてピークの$70/bblから$59.47/bblへと下がってきている。

ハリケーンの影響や依然として強い中国等の需要を背景にあがってゆくと思ったら、足元は米国の温暖な気候見通しが伝わり、暖房用燃料の需要が経るとの見通しとハリケーンの影響で操業停止していたGulf coastの石油関連施設が操業再開が進んだためらしい。3ヶ月ぶりの安値である。

そもそもハリケーンの影響は限定的とも言われていたし、考えてみればハリケーン前の状況に戻っただけなので、原油高の基調は変わらないというところ。しかし安値といっても2004年初めの頃を思えば、十分に高い。

中国エネルギー局は2006年から2010年の間で石炭の国内生産量を3億トン増加させる計画である。いまどきもっともCO2排出係数の大きい石炭を使うのかい、との声もありそうだが、エネルギー需要旺盛な中国にあってはそんなこと言ってはいられない。

2002年の統計で見ると世界の石炭(褐炭を含む)生産量は47億トンで、中国13.2億トン、アメリカ9.2億トン、インド3.6億トン、豪州3.4億トンとなっている。石油と違って埋蔵地域が分散していることがわかるのだが、それでも中国とアメリカで50%以上になっている。偏在とは言わないまでも均等に分布しているわけでもない。日本では太平洋炭鉱で少し採炭しているに過ぎない。中国はこれにさらに3億トンの上乗せを計画している。

70年代のオイルショックの時、脱石油資源が叫ばれ石炭の液化技術開発が国内外で盛んに行われた。しかし、その後の長期原油価格低迷を背景に技術開発は完成し、終了したことになっている。今現在、国内で石炭液化の研究など誰もやっていない。要するに技術はできた、後は経済性の問題だが、原油が$45/bblを超えたら経済的にも成り立つといわれていた。

とすれば今の原油価格ならば石炭液化プラントは十分成り立つのだろうか。
原油価格上昇->石炭・石油価格差拡大->液化プラント なので石炭価格を見てみた。

例えば豪州炭(FOB)は2004年1月には$28/トンであったが12月には$45/トンまで上昇している。この間の原油(WTI)はおよそ$30/bblから$50/bblへの上昇であった。石炭1トンを液化して1bblの液体になるわけではないが、石炭と原油の値差は2ドルから5ドルに開いただけである。原油が$45/bblということは値差が17ドルということだから、このように石油価格につられて石炭価格が上がってしまっている今の状況では液化プラントは成立しそうにない。

加えて、液化のために余計なエネルギー(CO2も排出する)を必要とすることなどから、石炭の液化というものが成立する状況はなかなか難しそうである。