沖縄での一人暮らし

延べ8年間、沖縄で一人暮らしをしました。歴史・自然・文化を伝えます。

Early Autumn

2013-06-05 | 映画・テレビ・本・英語

Robert B. Parkerのスペンサーシリーズ第7作目です。

主人公の私立探偵スペンサーは、ギャングなど犯罪人と闘ってやむなく殺めるのが定番ですが、この作品でスペンサーは人を殺さなければならない場面でも殺すことはない。

「少年に自立、生き方」を教えようとするスペンサー。その深みのあるセリフから、ロバート・パーカーの考えが伝わってきます。

作品の序文に、パーカーが「二人の子供に捧げる」と記しています。

 

15歳になる息子を、元夫から取り戻してほしいという離婚した母親からの依頼。

スペンサーはいとも簡単に元夫と息子の居場所を突き止めるが、母親に引き渡す前に、息子に対し、どちらの親と暮らしたいかを問う。

「どうだっていい。」という無気力な息子の返事、自宅に連れ戻しても喜ばない母親の態度に、子供への愛情や養育ではなく自らの体面保持と相手への嫌がらせのために子供を利用している親の無責任さを感じたスペンサーは、依頼や報酬を無視して、この不幸な子供を、自分で物事を判断し、自分の人生に責任を取ることができるようになるための手助けをしようと決意する。

そして、森の中で、家づくりと体を鍛えるトレーニングの共同生活を始める。Henry Thoreau*のように。

 

タイトルのEarly Autumnは『初秋』(ハヤカワ文庫)と訳されています。15歳なら、青春真っ盛りでSpringと思われますが、原作では、"Spring is gone.It's early autumn for Paul. "「春は過ぎたんだ。ポールにとっては初秋だ。」とあり、少年が自立して大人になりはじめるのが「初秋」という意味のようです。

ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事面に関する条約)に批准するため、国内法の整備を始めている我が国ですが、米国における子供の誘拐事件は元夫婦間同士で奪い合うものが最も多いという事実と、その理由を垣間見た小説でした。

Henry Thoroau*:Henry David Thoroau ヘンリー・デイヴィッド・ソロー。Walden;OR,Life in the Woods  『ウォールデン-森の生活』 の著者のことと思われます。ソローは、奴隷制度や人頭税に反対(非暴力の抵抗運動)して投獄されましたが、その行動は公民権運動のキング牧師や平和行進のガンディに影響を与えたといわれています。

なかなか、読み応えのある作品でした。