落武者の行方

09.02.02>>>迷走中?(since 04.09.13)

櫻井美幸「盲亀の浮木」

2006-02-25 | art
GALLERY HONJOH、Gallery KAKU | Miyuki SAKURAI"blind turtle and floating wood"

ギャラリー本城とギャラリー覚の合同企画として、本日2月25日まで開催されている、櫻井美幸"盲亀の浮木"です。


油絵の素養が無いという事実を補って余りあるセンス。
そうしたものを久々にダイレクトに感じた展示。

一見してヨーロッパの若手アーティストのようなタッチの作品は、決して投げかけられることの無い視線や冷めた風采・突き放すその表情、それは他者のみならず自己に対しても向けられているのかもしれないが、そうしたものに溢れており、意味深長なタイトルも手伝って作家である櫻井さんがどれだけの抑圧や葛藤の中にいるのかを想像せずにはいられないものとなっています。
個人的にそうした内省的であったり自己表現として真っ向勝負しているものもイヤではないですし、なにより単純にその物質的なクオリティ(それは技巧云々ではなくて)の高さに魅かれていたのでそれでよしとするところでした。

ところがスタッフのお話によると、苦悶に満ちたようなキャンバスの中の人々の表情に特に意味は無く、タイトルもあまり関係無いつかず離れずのものをつけている。ましてそれが自己の内面の表出ということは無い、と言い切っているのだそうです。ご本人。
そうなってくるとまた観方も違ってきて、そのシーンの設定や色使いなどのセンスが改めて際立ったものに感じられてきます。こうした一歩二歩ひいたスタンスをとる作家さんは最近多いですよね。
ただ、そうは言っても人間が描いている以上何かしら内面を投影しているのは当然の話。どうやら作品にあるような具体的な感情というよりも「素養が無いことによる自信の無さと、その代わり確固たる自分を持っているという自信」というような極端なまでに相反する二極で激しく振れる感情がかたちになっているようです。
なるほど。


以前本城で開かれた個展を見逃した身としては作品数も多く嬉しい機会となりました。
先に本城、その後覚に伺ったのですが、覚を出るときスタッフに「とてもよかったです。単純にビジュアルとして…」というようなことをお伝えしたら此方が驚くようなガッツポーズで喜んでくださって(笑)、作家本人としてもビジュアル勝負というところがあるためか「そういう評価は作家もとても喜ぶと思います。」と仰ってました。
彼女が自分の武器をこれからさらにどのようにして磨いていくのか。楽しみにしています。
(青年の表情はピカイチです。たまりません、個人的に。DMの"地上から少しだけ浮いたところ"だとか…)