今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

Speak out

2009-07-14 09:11:37 | 臨床留学
ずっと頭では分かっていたことだけれども

渡米1年でようやくその意味を実感していること

それがspeak  out

googleで定義をみると

Speak out: express one's opinion openly and without fear or hesitation

診療の中で、自分で全てを理解していて、正しいことをしていても

speak outをしないと、まるで分かっていないと誤解されることが多いのです

「男は黙って仕事をする」

「背中で物事を語ろうとする」

というのは最悪です

ただし、背中はみられていますから、

「言っていることと、やっていることが違う指導医には誰もついてこない」という逆の真理はあります


これをふまえて、プレゼンの時に意識してやり始めたことを自分なりにまとめてみました


1. 結論を先に言う
2. しゃべり続けて途中で指導医に口を挟ませない
3. 広い鑑別診断をあげつつも、かならず絞り込んだ解説を付ける
4.   必ず断定する
5.   言い訳をする
6.   Good question!


1.は例えば外来のケースプレゼンで言えば

「これはシンプルなケースでpoison ivyだと思うが,治療で一つ質問がある」と最初に言うと話がスムーズで、プレゼンで多少端折ってもOKです

または、複雑な症例の場合は
「かなり複雑な興味深い症例です.どの鑑別もfitしないので、MRIをいきなりやっても良いか迷っています.」

2. に関しては、以前は誤解を恐れたり、プレゼンのオーダーを気にしてpauseを生み出していたのですが

相手によっては、わずかのpauseすらも許容されず、そこで打ち切りにされてしまいます

とにかくこちらの結論に達する前に、相手に質問されら負けです

そういう意味でも、1で結論を言っておくことは助けになります


3. は最近やり始めたことですが

診断が明らかで、他の鑑別をあげないと、「他は何も考えていないのか?」と聞く指導医がいますし、

鑑別をしっかりあげると、「よけいな鑑別を入れるな」と別の指導医に言われます

そこで、鑑別を3-5つあげた上で、「診断はAだと思う。BとCはDの理由で可能性が低いので、除外のための検査も必要ない」と言うことにしています.

これは、患者さんに対して説明するときも有効です.勿論、一般用語を使ってです


4. これは正直最近まで悩まされていたことで

エビデンスを考えると、どちらの薬でもOK、どちらの治療でもOKの場合

「どちらでも違いが無いと思う」と答えがちだったのですが

これは日本で自分が指導する側の人間だった時の癖のようで

「エビデンス的にはどちらでもOKだが、自分はこちらでいこうと思っている」と最低でも主張するふりをしないといけません

5. 1と2をやっていても気の短いattendingは、こちらの結論や要点を待たずに、teaching pointや疑問点をはさんできます

日本では、あえて付け加えていませんでしたが

こちらでは'That was my question' 'That's what I was discussing with the patient'などと必ず言うようにかえました

勿論、本当にそれを考えていた時です

嘘はバレます!


6. どれだけ頑張っても、見落としや聞き漏らしがあります

その際は、相手の指摘をまともに受け止めるのではなく

'That's a good question! I will ask that!' といなすのが一番


いずれにせよ、「男は黙って仕事」は一切通用しない世界です

分かっていることや、自分の思考プロセスをいちいち開示することに

現在は全力を挙げています

写真は夕方の散歩でよく見かけるウサギ
家の前にも出てきます
10分も歩けば、5-6羽に出会います





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