今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

ミシガン大学訪問中

2007-10-10 17:56:33 | 臨床留学
研修先の候補としてミシガン大学の家庭医療レジデントプログラムがあります。

今そのミシガン大学のあるAnn Arborを訪れています。

正確にはミシガン大学家庭医療科の中の、日本家庭健康プログラム(Japanese Family Health Program and Family Medicine at Domino's Farms)でお世話になっています。

ここは、家庭医療を志す日本人なら皆が知っているところで,古くから日本の家庭医療を支援してきました。


今は,親日家で日本語ペラペラのマイク・フェターズ先生を筆頭に2名の日本人医師(神保先生、藤岡先生)ともう一人の日本語ペラペラ米国人医師のルー先生の4人が常勤です。パートタイムとして、老年科フェローの吉岡先生も働いています。

以前は、East Ann Arbor Centerを本拠地としていましたが、現在はそこから道路を挟んだDomino's Farmsという広大な建物の一角に移転しました。

「ドミノって、ピザみたいだな~」と思ったあなた

鋭いです!

何を隠そうDomino's Farmsとはあの、ドミノピザの建物なんです。その建物の一部を間借りしているそうです。

診療所へ至る入り口にはいきなりクラシックカーが飾られています。(デトロイト近郊に来たんだと改めて思います)



そして、和風な診療所の入り口



ここはデトロイトをはじめとする近郊の日本人に対して、それこそ「ゆりかごから墓場まで」の診療を提供しています。

診療のパターンとして多いのは
 海外赴任の若き家族の為の健診、出産、子供のケア
 こちらに定着している日本人のケア

前者では出産が結構多いようです。
お産自体は大学の病棟で、家庭医療科もしくは産婦人科の担当医が診療しますので、妊婦健診と産後のケアが中心です。

昨日も,破水した妊婦さんが駆け込みで来院していました。

ここでお産の面倒を見てもらうメリットとして、

ケアが全て日本語で提供できる事、
日本との行き来のやり取りがとてもスムーズ(日本の事情を知っているので)、
産後のケアと、小児健診が同時並行で提供されている事

などがあげられます。

そして、後者の「こちらに定着している日本人のケア」

興味深いのは、異国の地で孤独にがんばっている人たちの精神的ケアです。

親類、友人のサポートが多い日本と違い、話し相手が少ないという異国の事情がありますので、結構大変そうです。

あまり具体的にはかけませんが,実際にそのような例を目の当たりにすると,家庭医の守備範囲の広さに改めて驚かされます。もちろん広いだけでなくちゃんと深いです。理論に乗っ取って精神的ケアをしています。

やはり精神科医や臨床心理士が単独でケアをするより、家庭医がそれらの専門家と協力しながら、バランスよく舵取りをしているこの形の方が,ケアを受ける人にとってはメリットがとても大きいように感じます。

また改めて、興味深かった例を紹介したいと思います。


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2 コメント

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「ニーズ主義に対応するための反省的実践家」 (げんげん)
2007-10-10 19:25:44
反省的実践家は、別にジェネラリストでなくても日々精進するのでこれはユニークな点とは言えないと思う。

ニーズ主義は初めて聞きました。
が、断らないということを決めた段階でさけられないという道理ですね。


専門家は、自分の科かどうか言うのが目標になりますね。(ポジティブレセクション:自分の科以外は見ないことに決めること。あとは野となれ山となれスタンスになると問題がでるが、次の専門家を見つけるところまで請け負えば許してもらえますね。だから私の科ではないと自慢げに言い切って喜んでいる人をたまに見かけますね。でもある意味狭義の専門家の役割は果たしているのですねえ。今気が付きました。)

どの科にも属さない人を一番よく見ることができるという能力であれば、それは専門だともいえますね。
(ネガティブセレクション、残ったものはすべて自分のもの)


必要な時専門家にコンサルトするわけですから、
① 割り振りを主とする
② 割り振れなかったら自分の専門とみなす(周囲のニーズに応じて機能を変える)

病気に対する興味よりも、人間全体に対する興味が上回った時、専門家という言葉に負けないマインドを得ることができるような気がしました。
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Re:「ニーズ主義に対応するための反省的実践家」 (familymed758)
2007-10-11 09:32:09
げんげんさん

コメントありがとうございます。

「反省的実践家は専門家にも当てはまるので、ジェネラリストにユニークな点ではない」というのは鋭い指摘ですね。確かにそうかもしれません。

ただ、ジェネラリストは新しい問題と向き合う機会が,臓器を限定した専門医よりも多いため、「反省的実践家」であることを自ら意識する必要性が相対的に高いとは思います。

>必要な時専門家にコンサルトするわけですから、
> 割り振りを主とする

ここは,少し訂正させてください。ジェネラリストは割り振りもします。ただ,遭遇する健康問題の90%以上は自分たちで解決しています。地域でもそうですし、私がデータを取った大学の総合診療部でも、初診患者の90%は自分たちで問題を解決していました。

「主とする」という言葉じりをとらえたような話ですみません。大学でもよく「振り分けだけしている」と言われ、自分たちの診療に対する評価が低く見られていることがありましたので、あえて話題にさせていただきました。

>病気に対する興味よりも、人間全体に対する興味
>が上回った時、専門家という言葉に負けない
>マインドを得ることができるような気がしました。

良い表現ですね!!ありがとうございます。
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