今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

県立大野病院事件で無罪判決

2008-08-26 01:20:54 | 時事ネタ
無罪判決自体が当たり前だということは、数多くの医療ブログや各学会の声明で言い尽くされています

あえてふれません


私が危惧した点は二つ

1. 民事ではなく刑事事件で起訴されたこと自体
2. 遺族感情に便乗して、医師たたきをあおるマスコミ

1点目について

そもそも、このような状況で患者さんや遺族から民事で訴えられるのは、やむを得ないとしても

刑事事件として、起訴されたこと自体が問題です

アメリカでお産をやっている家庭医の指導医に話したところ

「お産で訴えられるのは、アメリカでも多いからねえ~。・・・えっ?民事じゃなくって、刑事?逮捕??」

「Why?」

全く理解できないようでした

家庭医として将来は日本でお産もしたいとの志を持って、渡米しましたが

もし今回の判決が有罪だったとしたら、

そんな国で、しかも産婦人科医でなく家庭医としてお産をしようなどというのは

正気の沙汰ではないかもなあ・・・と思っていたところです


2点目について

これも多くの医療ブログなどで語られてきていることなので、今更なのですが

家族を失った遺族の感情に便乗して

「医療で人間は死なないもの」

不幸な転帰をたどった=医療ミスだ、隠蔽だ

とあおる記事が多く見られます

例えば読売のオンラインニュース
「なぜ事故が」…帝王切開死、専門的議論に遺族置き去り

悲しくなります

単に不勉強なのか、悪意で煽っているのはか分かりませんが

いちいちこんなことで、「読売新聞を取らない」と騒いでいると

とる新聞が無くなってしまいます

メディア報道の偏りについては下記ブログによくまとまっていますので、是非ご覧下さい

日々是よろずER診療
大野病院判決:メディア報道の偏向性を憂う





ミーハー時事

2008-08-13 10:50:24 | 時事ネタ
病棟チームのメンバーとはいつも朝食や昼食をとっているので、ミーハーな話題がよく出ます

コメディアンの話題などが出ると、知らない人ばかりでさっぱりなのですが、今日はオリンピックの話題でした

水泳はこちらでも結構人気があります

シニアレジデントが言いました

マイケル・フェルプスってミシガン大の出身よ。」

「卒業したばかりだから、最近までアナーバーで練習していたはずよ。8冠狙ってるけど、さすがに疲れるから6冠ぐらいじゃない?」などと盛り上がっていました

北島康介が金メダルとって喜んでいましたが、ちょっとスケールが違います

他にも結構、有名人のOBがいるらしいのですが、私が分かったのはヤンキースのデレク・ジーターとマドンナぐらいです

POEM of the week

2008-07-29 07:19:30 | 時事ネタ
POEMをご存知でしょうか?

ポエム(詩)ではありません

どちらかというと、「ポ~ム」と発音します

Patient-Oriented Evidence that Matters" (POEMs)の略です


「大腸の手術後に、ガムを食べさせると退院が早まるか?」

「風邪の子供が寝る前に蜂蜜をなめさせると、咳がおさまりよく眠れるようになるか?」

「喫煙者に計算した肺年齢を伝えると、喫煙率が上がるか?」

「脳梗塞にミノマイシンを投与すると、機能予後が改善する」

答えは全てYes

これらの疑問をまとめて、定期的に送ってくれるのがInfoRetrieverで、有用なcalulatorなども含めてPDAに載せられるようにしたサービスがInfoPOEM(今はEssential Evidence Plusという名前にかわったようです)

またこれらのPOEMを今週のPOEMとして5-6分のPodcastにまとめたのがPOEM of the weekです

これはなかなかの優れもので、おすすめです

ただでダウンロードができ、運転中や運動中にボーッと5分聞いていれば

様々なPOEMに対するMeta-analysisやRCTを批判的吟味して解説してくれます

そしてこれらの内容が結構使えるのです(というより、本当に臨床に使える内容だけを吟味するのがPOEMなので、使えて当たり前です)

この解説をしてくれているのがミシガン州立大学家庭医療科のMark H. Ebellです

そしてPOEMの概念を考えだして、Mark EbellらとInfoPOEMを作り出したのがAllen F. ShaughnessyDavid C. Slawson

さらにいえば、先日も触れたInformation Masteryというカリキュラムを考えだしたのもこの二人です

そして私が留学先にApplyしていた先の二つがそれぞれAllen F. ShaughnessyDavid C. Slawsonがいたプログラムだったのです

結局、彼らのプログラムには入りませんでしたが、いつかは会ってみたいものです

そんなことを考えつつ「POEM of the week」を聞きながら、蛍の舞う夕暮れの公園を散歩してきました



この視界の範囲であれば瞬間で30匹ぐらいは蛍が見えます

真ん中やや左に光っているのですが(写真にすると分からなくなります)




ど真ん中、向かってわずか左にかすかな点として光った蛍が見えます


やっぱり写真にすると、みにくいようです

あやしいUFO写真のようです

コマーシャルより「野菜が嫌いでも・・・ensure」

2008-07-16 13:29:05 | 時事ネタ
メージャーリーグのオールスターは延長戦まで突入し、夜中の12時を超えてもテレビで放映していました

そのテレビでのコマーシャル

「大人になっても野菜が食べられない人のために」

「朝ご飯をちゃんと食べない人のために」

「ドーナツばかり食べている人のために」

「ensureがあれば大丈夫!!」

ensure・・・エンシュア??




Ensureのホームページを見ると、会社はAbbott




そして日本のエンシュアも製造元はAbbottじゃありませんか!!

日本でエンシュアと言えば、経管栄養に使っていたことと、どうしても食事をできないお年寄りに臨時で処方していたというイメージが強いですが

健康な若い大人が、野菜の代わりにエンシュアを飲むというのはちょっと想像し難いです・・・

「ちゃんと野菜食え!」と言いたいですが・・・

何でもありだな~

アナーバー入り 「最初に出る話題」

2008-06-13 19:06:31 | 時事ネタ
研修開始の4日前に、ようやくアナーバー入りしました

こちらに来てまず驚いたのは異常気象です

6月だというのに西海岸では雪

同じ日に東海岸は熱波が襲い、37度を観測

中西部では洪水と、そのあとに襲った竜巻

中西部と東海岸の間にあるアナーバーでは30度を超える気温と、雷雨です

ところが、こちらの人はこうした異常気象について全く話題にしません

それどころか、知らない人も結構います

車で移動して、一日中建物の中にいるせいか

温暖化などの異常気象にあまり感心が薄いせいか


一方で、話題としてふられるのは、日本での異常現象の話題

異常といっても天気の話ではなく、「日本人の異常行動」について

秋葉原の通り魔事件を筆頭に、この数年日本ではおかしな事件が頻発しているのではないかという感想で

格差社会、ニート、ワーキングプアが根底にあるのではという分析になりました

言われてみればそうなのですが、日本にいる時はそこまで強く意識していなかったので、アメリカでそのようなことをあえて指摘されるとちょっと驚きです


日本在住者が、アメリカの異常気象に着目して

アメリカ在住者が、日本人の異常行動に着目する

「顔にご飯粒ついているよ」と、お互いに指摘し合っているみたいです


熱湯に急につけられたカエルは、驚いて逃げますが

水にカエルを入れて徐々に熱すると、逃げずにそのままボイルされてしまいます

おかしなことが徐々に起きてくると、それに慣れてしまうのでしょうか?

それとも単に、他人のことがよく見えるだけなのでしょうか?

「最期まで自宅」は1割~に思う数字の解釈

2008-06-07 23:20:08 | 時事ネタ
 「最期まで自宅」は1割、国の目標と乖離

「んな(低い)わけ、ないやろ~」
(大木こだま風に)

2004年に厚労省の調査では終末期療養の場所として自宅を望む国民が6割
 
この時も「んな(高い)わけ無いやろ~」と思っていました


今回の発表、よくよく内容をみてみましょう

 「最期まで自宅」は1割、国の目標と乖離

6月6日18時16分配信 医療介護情報CBニュース より引用


~神奈川県保険医協会では、脳血管疾患の終末期医療に関して、県民がどう考え、どのような不安を持っているかなどを把握するため、60歳以上を対象に意識調査を実施。3月からの約1か月間に回収できた143件を集計した。

 脳血管疾患や認知症などで入院中、退院を勧告された場合に希望する療養場所については、「別のリハビリテーション病院」が39.8%、「長期療養できる 医療施設」が14.6%と、医療系の施設が過半数を占めた。これに「介護施設」の12.5%を合わせると、自宅外を望む人が66.9%となった。
 一方、「自宅」と答えた人は21.6%。このうち3分の1以上の人が「現在は(自宅で療養する)条件がない」とした。

 また、自宅で療養中に肺炎などの疾患を併発した場合の療養場所については、「(必要な治療を受けるために)病院に入院を希望する」が58.7%、「介護 施設」が15.3%で、「(医療や介護を受けながら)最期まで自宅を望む」は12.5%にとどまった。この「最期まで自宅」という希望に関連して、実際に 「自宅で看取ってくれる」と答えた人はゼロだった。
 病院に入院することを望む人に、その理由(複数回答)を尋ねたところ、「回復の可能性があるなら、治療を受けたい」が53.5%、「自宅や施設での治療内容が不安」が45.2%に上った。

 さらに、家族による自宅での看取りについては、「無理」が45.9%で、「看取ってくれる」は9%にすぎなかった。
 自宅で最期まで療養する場合の課題(同)については、「家族の負担が大きすぎる」が55.9%、「(容態の)急変時の対応に不安」が49.6%、「家族の高齢化」が43.3%などだった。
「また、自宅で療養中に肺炎などの疾患を併発した場合の療養場所については、「(必要な治療を受けるために)病院に入院を希望する」が 58.7%、「介護施設」が15.3%で、「(医療や介護を受けながら)最期まで自宅を望む」は12.5%にとどまった。この「最期まで自宅」という希望に関連して、実際に「自宅で看取ってくれる」と答えた人はゼロだった。」
 ~
  以上引用終わり


今回の1割というのは、脳血管疾患65歳以上の人に

「自宅療養中に肺炎を起こしました(治ることを想像させる疾患)、どうしますか?」と聞いた時に

「そのまま自宅にいます」という数です

「一時入院して、可逆的に治って帰宅」というシナリオを想定させる質問です

これが、「いよいよあなたは末期がんで死を避けられない状態になりました、自宅で最期を迎えたいですか?」という聞き方であれば当然話は違います

また、答えている理由も
「自分が希望しない」のと
「家族に負担をかけられない」とでは違いますし、
「社会資源の活用を得られるかを知っているか否か」でも答えは変わってきます

このような文脈の違いで回答はどのようにでも変わります

意識調査系のリサーチをする時に大変重要な点ですし、しばしば意図的に悪用して、世論を誘導したりするときに利用されています

大新聞の世論調査や政府の意識調査はあからさまですし、著名なpeer review誌にのるような論文でも、「意図」を感じることは多々あります

有名なところではコクランレビューにも載っている「アルブミンの効果に対するシステマティックレビュー」

相反する結論のものが二つあり

一つは、重症患者にアルブミンを使用すると死亡率が上がる

もう一つは、重症患者にアルブミンを使用すると、死亡率は上がりも下がりもしない(だからアルブミンを使いましょう)

前者はイギリスのNHSが出資者~医療費を抑制したい立場

後者は何とアルブミン協会(アルブミン製剤のメーカーが中心の団体)が出資者~どんな立場かは言うまでもありません

「誰が、どんな意図を持っておこなった調査か」をみて、細かい言い回しや文脈をみていくと、その背景が見えてくると思います

最終的な判断は「原著、さらには生データ参照」となりますので

今回の結果に対して自分が確定的なことを言うのは危険ですが

60%と言っていたのは国民を自宅に返したい厚生労働省ですし、

今回の調査は県の保険医協会です

前者は明らかに大きく数字を見せたいでしょう

後者の保険医協会のスタンスは、ホームページなどからは「医療費削減反対をベース」にしているのでしょうか?

今回の10%という数字を誰が切り取ったかは分かりませんが、少なくとも相反する立場の誰かが、なるべく自分に都合の良い数字を出してきているように思います

三つ葉在宅クリニック診療所で、最近診療させていただいている私個人の実感としては、

「現実は1割と6割の真ん中ぐらいじゃないの?」です

みなさんは、いかが思われますか?

日本のイートン校になれるか?  海陽学園

2008-05-28 21:15:36 | 時事ネタ
以前、教育の特番の中で「日本のエリート養成学校」ができたととりあげていました

開校のうわさがあったころから私の地元でもあり、我が母校のT学園のライバルにもなりうるという事から注目していました

密かにホームページを何度かチェックしています

学生が来るようになってから、かなり更新されたようです

建学の精神の5をみると(前は4だったような。一つふえたのでしょうか?)

  • 日本の伝統・文化を心身の糧とし、国際社会で活躍する実力を養います
  • 世界の多様な価値観を理解し、相互に敬意を払うことのできる幅広い人格を形成します

カリキュラムでも国語、古文を重視しているようです

これですよ、これ

別にエリート養成をうんぬん言うつもりはありませんが

国際人を育てるのに英語の授業を小学校から前倒しにしようという話があります

それはそれで、まあいいかもしれませんが、

無理をして、結果として日本語や日本の文化を学ぶことがおろそかになっては本末転倒です

英語を話すのが国際人ではありません

国際人こそ、自分が日本人であることを大事にする人たちだと思います


残念ながらこの学校は男子校なので、娘しか居ない我が家にはとりあえず関係ないのですが

息子が生まれたら絶対に母校のT学園!

と昔は思っていましたが、海陽学園にも注目です

Steve Jobs Stanford Commencement Speech 2005

2008-03-12 16:39:03 | 時事ネタ
アップル社のSteve Jobsがスタンフォード大学の卒業式で行った有名なスピーチがあります

Steve Jobs Stanford Commencement Speech 2005 (Youtube)

時間は14分33秒と、以前紹介したLast lecture by Randy Pauschよりも短く、スピーチ自体も大変ききとりやすいです

是非実際のスピーチをみてください

英語が苦手な方も、和訳を書いているブログがあります

Steve Jobsのスピーチ、山口訳


このスピーチには3つのテーマがあります

  1. connecting the dots
  2. love and loss
  3. death

初めてこの スピーチをみたのはちょうど1年前

そのときは、3つのテーマのうちの最後 'death'が心に響きました

実はスピーチをみた直後に田坂佳千先生の訃報に接しました

私の中では田坂先生の生き様と、Steveのスピーチとがシンクロせずに入られませんでした

Your Time is limited, so don’t waste it living someone else’s life.

田坂先生がなくなられる直前まで勉強し続けられ、TFCに多大なエネルギーを費やしていた生きざま

亡くなられる間際まで、自分の信ずる道を歩まれました

私の残りの人生、数十年、もしかしたら1ヶ月、1週間、1日、で終わるかもしれませんが、自分がやりたいことを追求し続けていれば後悔をしないはずです

いいトシで今更渡米を考えつつも、つい色々考えてしまう私はとても勇気づけられました


1年経った最近、またそのスピーチをみきました

今度は一番最初のテーマ 'connecting the dots'が響きました

connecting the dotsとは、

「現在の点と点は将来どこかでつながっている。点がやがてつながる と信じることで、自分の心に従う自信が生まれる」

つまり、今やっていることや信ずる所が、端から見ておかしなことであっても、信じて続けることで、将来思わぬ所で実を結ぶかもしれない。ただ何が功を奏するかは、前もって予測することはできない

いろいろなことに興味を持って、ついつい道草や遠回りをしてしまう自分を後押ししてくれるような気がしました

「何事も人生の糧」

そう思ってエンジョイしていれば、思わぬ所で思わぬ実を結ぶかもしれません

第16回日本総合診療医学会学術集会へのお誘い

2008-03-04 02:15:53 | 時事ネタ
告知です

今週末、名古屋で第16回日本総合診療医学会学術集会が開催されます

ケアネットTV・亀井道場・TFC など

プライマリ・ケアの勉強会やワークショップ、レクチャーでおなじみの人気の先生方のセッションが目白押しです

予備校の宣伝みたいですが、こんなに有名講師、人気講師がそろう会はなかなかありません

私、内科学会員でもありますが、

家庭医療学会や総合診療医学会の総会に出るようになってから

久しぶりに内科学会総会に出て愕然としました

理由は・・・

両者に出たことのある人なら分かります

休日をつぶしてまで学会に出席することの意味を実感できます

是非今週末名古屋へおいで下さい!

以下詳細です
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第16回日本総合診療医学会学術集会
テーマ:日本の医学・医療を変革するー発信する総合診療ー
日時:3月8日(土)、3月9日(日)
場所:名古屋市公会堂(鶴舞公園内)、鶴友会館
大会長:伴 信太郎(名古屋大学医学部附属病院総合診療部教授)

主な企画
  • 日野原先生の「基調講演」
  • 「総合診療医学会昇格10周年記念シンポジウム」
  • パネルディスカション「わが国における総合診療の展望:総合科
  • の標榜と専門医制度」
  • 総合討論「後期研修プログラムを考える」
  • 「亀井道場スペシャル」(講師は伊賀先生、池田先生)
  • 学会特別企画「総合診療カンファレンス」、
  • 質的研究・量的研究に関する2つの「臨床リサーチ塾」
  • 「ティーチングパールセッション」
  • 感染症、ER、EBMなどの「指定企画」

私は終日裏方ですが、このブログをみて1人でも参加してくれるとうれしいです

亀田訴訟、国民は怒るべきだ

2008-03-01 00:26:12 | 時事ネタ
亀田訴訟といっても、車をぶつけた亀田ではありません

医療関係者なら知っている、亀田総合病院でのテオフィリン訴訟のことです

以前からおぼろげには聞いており、亀田の院長が

「断固として戦う」と宣言されていたというニュースも見ていましたので興味を持っていました

亀田訴訟、国民は怒るべきだ


詳細はロハス・メディカルブログに詳しく書いてあります

医療関係者ならずとも必見です

福島県立大野病院事件でもそうでしたが、この訴訟でも

結果的に患者さんが不幸な転帰をたどったという結果=訴訟

という構図を感じてしまいます

そしてそれを整備されていない医療裁判でさばかれてしまうという危うさ

こんなことが続いたら、同僚が現場を去っていくことを私も止める気になりません

私もいつ現場を去るか分かりません

こんな現状を国民はどれだけ知っているのでしょうか?

「国民は怒るべきだ」というお題は、まさにその通りなんでしょうが、

その前に「国民は知るべきだ」といいたいです

しないことリスト(プロフェッショナルだけど私生活はダメ人間)

2008-02-14 00:32:21 | 時事ネタ
梅田望夫さんのブログMy Life Between Silicon Valley and Japanの

「しないことリスト」で考えてほしいこと


という記事が興味深かったです

自分も「しないことリスト」を考えてみました
  1. 高齢で認知症の患者さんを「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼ばない(ちゃんと名前で呼ぶということ)
  2. 患者さんを患者様と呼ばない(医師患者関係は対等て充分です)
  3. 患者さんや同僚、後輩医師と接するときに感情的にならない(怒る、怒鳴る等)
  4. 空腹なのに無理して働くこと(緊急でもないのに、食事を後回しにすること)
  5. 診療中の知ったかぶり(相手の不安をあおらない態度は必要ですが)
  6. 診療中の「まあいいか」(なあなあにしないということ)
  7. 就寝2時間以内に食べること
何と、最後の項目以外は仕事関連

プロフェッショナル意識でのこだわりはたくさん思いつきます

逆に、私生活はほとんど浮かびません

6.は幼少時より経験的に学んだことで、どうやら胃食堂逆流(GERD)があるという自己診断です


逆に、「やめたいこと(やめられないこと)リスト」

  1. 家族に対して感情的に接すること(子供を叱るときにカッとしてしまうことなど)
  2. 間食
  3. 腹いっぱいまで食べること
  4. 炭水化物の取り過ぎ(ラーメンばかり食べ過ぎ)
  5. エレベーターの使用
  6. ネットサーフィン
  7. テレビ
  8. 無駄な夜更かし
  9. カルテの象形文字
こちらは逆に、最後を除いてほとんどプライベート

職場ではしっかりしている(自称)のに、私生活はダメ人間

診療中や、後輩を教えるときにできることを、なぜ私生活でできないのでしょう?

自覚するだけでもマシでしょうか

ちなみに、「しないことリスト」の特集がのっている日経ビジネス・アソシエ2月19日号はおもしろそうです

COURAGE Trial 日本の心カテ件数はどうなっているのでしょう?

2008-01-07 03:23:22 | 時事ネタ
たまには家庭医と違う話題も

ニューヨークで内科研修をされている先生のブログ

米国臨床留学への道-Manhattan

2007.9.15の記事を読んでいて、気になる記載に出会いました

「COURAGE Trialを受けてStable Anginaに対するカテが激減した」

COURAGE Trialって何だろう?

気になって、The New England Journal of Medicine (NEJM) に2007年3月に発表された下記論文を読んでみました

Optimal Medical Therapy with or without PCI for Stable Coronary Disease

かいつまんで結果を言うと

冠動脈病変がある症状の安定した人に対して、

ステントを含めた血管内治療薬物治療5年生存率

全く差が出なかったということです

デザインも見てみましたが、ざっとみて大きな穴はあまりなさそうです
(intention to treat, lost to follow upなど)

あえて言えば3000人ぐらいのenrollmentのために3万人以上も候補者がいたこと(絞り込みの率がとても高いので、そのプロセスで恣意的な操作が入ったという疑念が残ります)


これを受けてアメリカでは心カテが激減したとのこと

以前、循環器をやっていたのですが

症状の比較的安定した血管内病変に対して、PCIをしながら

「本当にこれに長期的なメリットがあるのだろうか?」

疑問に思っていました

あまりメリットが無いのではというのは、結構言われていました

循環器はやることが派手なので満足感も高いのですが、EBMを勉強して、PCIの限界を感じたことが記憶に残っています

くしくもその答えとなる論文が出たようです

たった一つの論文ですべてを言い切るのも危険ですが

新しい知見に敏感に反応するのがアメリカ

対して日本はどうなっているのでしょうか?

日本では、欧米でバイパスの適応症例でも積極的に循環器内科がPCIをする傾向にありました

つまり循環器が結構イケイケです

となると、この論文をまともに受け止めた場合、日本の方がカテ減少率が多いはず

なんて勝手に思いましたが

どうなっているのでしょう?

ちなみにCTで冠動脈病変を良好に描出することが可能となり、診断カテが激減したということを、先日ある病院のホームページで知りました。

循環器の世界は変動が激しいので、専門外といえど新しい動きには目を向けておきたいものです

SiCKO

2007-12-28 01:08:34 | 時事ネタ
SiCKOをみました

半分は試験が終わった息抜き、半分はアメリカの医療制度を勉強するため

「地獄の沙汰も金次第」

アメリカの医療制度がひどいというのは、分かりました

ただ、別段新しい認識ではなく、以前からの認識通りでした

お金がなければ、保険に入れない

保険に入っても、保険会社があの手この手で医療を制限する

アメリカの医療は保険会社と製薬会社に搾取されている

アメリカの医者は、いちいち保険会社の許可が無ければ医療を施せない

それをすすめてきたのは共和党だ

と、民主党支持者のマイケル・ムーアが主張しているのは分かりました

そして、そんな国に自分がこれから行くんだということも


それより衝撃だったのは

日本の医療がアメリカ化」していると実感したこと

映画では国民皆保険、すばらしい医療制度の例として

イギリス、カナダ、フランス、キューバをあげていたのですが

「ある日系人がアメリカで保険会社に拒否された検査を、日本に旅行したときに日本で受けられた」

という風に、日本も医療を受ける側として恵まれた国の例として出ていました

でも、そんな状況はどれだけつづくやら


映画の中で、病院が患者さんを路上に捨てたことが問題になっていましたが、

新金岡豊川総合病院が全盲の患者さんを公園に置き去りにしたニュース、そのまんまじゃないですか!!


日本では
ただでさえ高い自己負担率も上がり
混合診療が解禁となり、
病院へのアクセス制限も始まりました

アクセス制限の次に公的負担による診療内容の制限が始まり
その分は個人保険でまかないなさい、という流れになれば

まるっきりアメリカ化です

「ただ違うのは日本の総医療費のGDP比はまだまだ圧倒的に安い

大きな理由が、医療従事者の人件費が極端に安いから

日本の医療従事者(医者を含めた)が安い単価で、たくさんの患者さんを「さばいている」からです

人件費の単価を減らさず(増やして)、医療従事者を増やす主張をもっと私たちはしても良いのでは

そうしないと、良い人材はどんどん海外や他業界に流出します

最近、日経メディカルで読んだ以下の記事とリンクしてそう思いました。

同じく患者さんが苦しむアメリカでも、医者はまだ金銭的にはハッピーですから

「米国で医者として働く」―仕事内容、勤務時間、給料を比べてみた


自らが証明した「バカの壁」 禁煙運動はナチズムか?

2007-09-26 00:17:03 | 時事ネタ
残念です。

大変残念です。

文芸春秋10月号養老孟司氏は

「たばこの害の根拠なし」「禁煙運動はナチズム」

と発言されています。

個人的に養老孟司氏は好きだっただけに、ショックを受けつつも

やはり発言の文脈を確認せねばと、速攻で文芸春秋を買いました。

読みました。

読んでみると・・・

本文のメインは国民は健康にならなければいけないという「健康増進法」に対する警鐘のようです。

健康増進法のトピックのメインとしてメタボリック・シンドロームと喫煙があがっていました。

確かに、「今の医療は過大評価されており」
         ↓
「タバコをすっている人が必然的に肺がんになる訳ではなく」
         ↓
「医学論文なんて恣意的に数字を選んで結論を導きだすものなので」
         ↓
「今の疫学で因果関係を証明しているのは恣意的だ」
         
という理屈のようです。

健康増進法の押し付けがましさには違和感を覚えますし、

上の理屈の3段目までは私もとても共感したのですが、

結論が
「だから疫学は100%信用できない」
となっているところがあまりにも乱暴ですね~

疫学全否定のようです。

まさにここにバカの壁があるとしか思えません。


茂木健一郎氏が朝青龍問題を評して曰く

2007-09-22 23:42:46 | 時事ネタ
「朝青龍の問題は、結局、『規格外』の人をどう扱うかという哲学だ」

私が、医学以外の人間で最近その動向に注目しているのは、脳科学者の茂木健一郎氏と、著書「ウェブ進化論」で有名になったIT企業経営コンサルタントの梅田望夫氏の二人です。

もともとは亀田の岡田先生が主催するHANDSというFaculty Developmentのコースで「ウェブ進化論」が課題図書に指定されてから、梅田氏の著書やブログは常にチェックをしていました。

それとは別にNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で知った茂木氏にも注目をしていたのですが、その二人の対談本である「フューチャリスト宣言」で一気にその二人が私の中でホットになりました。

「フューチャリスト宣言」についてはそのうちコメントを書きたいと思いますが、今日は茂木氏のブログ「クオリア日記」の記載がとてもよかったのでコメントします。

朝青龍問題について茂木氏曰く

----------------------------
朝青龍の問題は、結局、
「規格外」の人をどう扱うかという哲学
だと思う。
・・・
ボクの理解する「横綱の品格」とは、
まさに、枠をはみ出そうとする
とてつもないエネルギーを御した
ところにこそ生まれるのだと思う。
最初から「いい子」だったら、品格うんぬんを
そもそも問題にする必要がない。

容易に御すことのできない荒々しさを
みがいてこそ、ほれぼれするような
風合いが生まれるのではないか。
---------------------------------

そう!朝青龍問題でいつも感じていた、協会が使う「品格」という言葉に対する違和感はこれだったのです!

最初は、「朝青龍なんか辞めさせろ」と私も思ったのですが、

「やんちゃ」な朝青龍を追い出すのではなく、その「やんちゃ」をつぶさない範囲内で横綱として熟成させるのが相撲協会の度量だと思います。

そんなこと分かってるよ、といわれればそれまでです。

思えば、朝青龍が日本で心の底から尊敬している人物はいるのでしょうか?少なくとも一目置くような・・・

「そんなの関係ねえ!」とでも言っちゃうぐらいが規格外なのかもしれません