ツールドのと400には、名物男がいる。
初日の最後の方に円山峠という標高およそ250メートルの峠がある。
その入り口にさしかかったときに、前方に、すくっと背を伸ばした男の姿が目についた。
最初は、クロスバイクかなと思い、少しずつ近づいた。
近づいてみると、ママチャリであった。
ええっ、こんな猛暑の中をママチャリで行くのか、驚きである。
さらに近づき、ほぼ20センチくらい後ろをピッタリと追走してみた。
ママチャリさんは、勾配が少しずつきつくなってきているので、きつそうな感じでこいでいた。
ママチャリさんの後ろ側泥よけには黄色のステッカーらしきものが貼ってあった。
どれどれと読み取ってみる。
そこには「金沢駅前レンタサイクル」とあった。
頭の中で、情報がカタカタと音を立てて、固まりになっていった。
ママチャリさんは、金沢駅前でママチャリをレンタルした。
そこから内灘町のスタート地点までママチャリで移動した。
そして、スタート地点からここまでママチャリをこいできた。
ゼッケンの色を見ると、3日間コースのゼッケンナンバー。
ママチャリさんは、3日間、ママチャリで走りきるのだ。
この焼け付く炎天下のなかを。
ちょっとした感動を覚えた私はママチャリさんと並走して、にこやかに「すごいですねえ~」と精一杯の経緯を込めながら話しかけた。
ママチャリさんは返事をしない。
チラリと一瞥しただけで無反応なのだ。
ちょっとの間、ママチャリさんからの応答を待ったが、ママチャリさんは話をしたくないオーラを丸出しにしていた。
何となく気まずい雰囲気になったので、「じゃ、お先に」と私はスピードアップして先を急ぐことにした。
その夜、ママチャリさんにあった話をすると同宿の人が
「あの人は有名な人で何年も出ているよ、去年はテレビ局のインタビューを受けたけど、ほとんどしゃべらないのでインタビュアーが困っていたらしいよ」と教えてくれた。
2日目の朝、スタート地点に並んでいると、ママチャリさんが目に入った。
ママチャリさんの隣には女性のローディがいた。
女性のローディはママチャリさんに何かを話しかけたようだ。
何を話しかけたかはわからない。
しかし、ママチャリさんがうれしそうに微笑んでいたことは見逃さなかった。
そのとき、中年親父に声をかけられるよりも若い女性の方がいいんだというしごく当然の法則に気づかされた。
2日めの夜、同宿の人とママチャリさんのことが話題になった。
その人は熱中症でリタイヤした人だったが、バスの運転手さんからママチャリさんのことを聞いたらしい。
運転手さんは、ここ数年、リタイヤした人を運ぶバスの運転をしている。
彼の記憶によれば、ママチャリさんがリタイヤしてバスに乗った記憶は全くないという。
ママチャリさんは必ず3日間コースに参加し、リタイヤすることなく制限時間内に完走するらしいのだ。
恐るべし。ママチャリさん。
波の体力ではない。
ロードバイク乗りでもまいってしまうくらいの道をただひたすら背筋を伸ばしてギコギコと。
亀なローディを鬼のように追い抜いていく。
何が彼をそこまで駆り立てるのだろうか。
初日の最後の方に円山峠という標高およそ250メートルの峠がある。
その入り口にさしかかったときに、前方に、すくっと背を伸ばした男の姿が目についた。
最初は、クロスバイクかなと思い、少しずつ近づいた。
近づいてみると、ママチャリであった。
ええっ、こんな猛暑の中をママチャリで行くのか、驚きである。
さらに近づき、ほぼ20センチくらい後ろをピッタリと追走してみた。
ママチャリさんは、勾配が少しずつきつくなってきているので、きつそうな感じでこいでいた。
ママチャリさんの後ろ側泥よけには黄色のステッカーらしきものが貼ってあった。
どれどれと読み取ってみる。
そこには「金沢駅前レンタサイクル」とあった。
頭の中で、情報がカタカタと音を立てて、固まりになっていった。
ママチャリさんは、金沢駅前でママチャリをレンタルした。
そこから内灘町のスタート地点までママチャリで移動した。
そして、スタート地点からここまでママチャリをこいできた。
ゼッケンの色を見ると、3日間コースのゼッケンナンバー。
ママチャリさんは、3日間、ママチャリで走りきるのだ。
この焼け付く炎天下のなかを。
ちょっとした感動を覚えた私はママチャリさんと並走して、にこやかに「すごいですねえ~」と精一杯の経緯を込めながら話しかけた。
ママチャリさんは返事をしない。
チラリと一瞥しただけで無反応なのだ。
ちょっとの間、ママチャリさんからの応答を待ったが、ママチャリさんは話をしたくないオーラを丸出しにしていた。
何となく気まずい雰囲気になったので、「じゃ、お先に」と私はスピードアップして先を急ぐことにした。
その夜、ママチャリさんにあった話をすると同宿の人が
「あの人は有名な人で何年も出ているよ、去年はテレビ局のインタビューを受けたけど、ほとんどしゃべらないのでインタビュアーが困っていたらしいよ」と教えてくれた。
2日目の朝、スタート地点に並んでいると、ママチャリさんが目に入った。
ママチャリさんの隣には女性のローディがいた。
女性のローディはママチャリさんに何かを話しかけたようだ。
何を話しかけたかはわからない。
しかし、ママチャリさんがうれしそうに微笑んでいたことは見逃さなかった。
そのとき、中年親父に声をかけられるよりも若い女性の方がいいんだというしごく当然の法則に気づかされた。
2日めの夜、同宿の人とママチャリさんのことが話題になった。
その人は熱中症でリタイヤした人だったが、バスの運転手さんからママチャリさんのことを聞いたらしい。
運転手さんは、ここ数年、リタイヤした人を運ぶバスの運転をしている。
彼の記憶によれば、ママチャリさんがリタイヤしてバスに乗った記憶は全くないという。
ママチャリさんは必ず3日間コースに参加し、リタイヤすることなく制限時間内に完走するらしいのだ。
恐るべし。ママチャリさん。
波の体力ではない。
ロードバイク乗りでもまいってしまうくらいの道をただひたすら背筋を伸ばしてギコギコと。
亀なローディを鬼のように追い抜いていく。
何が彼をそこまで駆り立てるのだろうか。
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