雨が降っていた。
花蓮空港に着陸する前に、上空から花蓮の様子が見えたのだが、雨雲に覆われていて、道路は濡れて黒かった。
ざあざあ振りではないが、レインウエアを着ないと辛い。
空港のロータリーをぐるっと回って、国道9号へ向かうと、最初のT字路交差点があり、そこで赤信号待ちをした。
いよいよ台湾の道路を走るのだが、路面は大丈夫だろうかとか自動車の走りに危険はないだろうかとかいろいろと考えてしまった。
はじめての地域の道路を走るときは、どうしても気持ちが用心深くなる。
ゆっくりとした赤信号が青に変わるのを待って、最初の交差点を右折し、国道を走りだす。
台湾の国道を走るのは初めてだ。
片側が3車線ある。
真ん中寄りの車線を大きなトラックやバスが勢いよく走っている。
自分は、いちばん右側を走る。
走りやすい。恐怖感もない。
なぜかというと、車線がはっきりと分かれているからだ。
自動車と自転車バイク用の車線ははっきりと区別されている。
2車線は自動車用で、右側の歩道寄りの車線が自転車とバイク専用車線だ。
自転車バイク用車線は、けっこう幅が広い。およそ1m50cmはあるだろうか。
バイクも自転車と同じ車線を走るのだが、それほど多くの台数は走っていない。
自転車も私以外に走っていない。
この自転車用の車線は、十分な幅があるから、大型トラックやトレーラーが横を走っていっても少しも怖くない。
これはいい。
すべての台湾の道路がこのようになっているのかはわからないが、少なくとも花蓮空港からの国道9号線は走りやすかった。
舗装も荒れていない、穴が開いていることはなかった。
国道9号線を北上する。
国道9号線はほぼ海と平行している路線で、ほぼフラットだし、道路はまっすぐで見通しがきき、信号もそれほど多くない。
そのため、時速20キロ以上で快適に走ることができた。
9号線沿いは、小さな店などが点在している。
土産物屋や食堂やビンロウ売りの店がポツポツと道路沿いに並んでいるが、台北のように高層建築物はなく、ほぼ平屋のみである。
道路から少し離れると、畑が広がっている。
どんな作物を作っているのかはわからないが、畑が耕されている。
ところどころに野菜の直売所的なものもあった。
道路の右側は畑だが、おそらく数百メートルもしないうちに海岸となり、太平洋の波が打ち寄せている。
花蓮は、太平洋に面しており、海で作られた雲が台湾という島にぶつかるところだ。
雨量は多くはないもののそれなり雨天の日が多いらしい。
道の左側には山がある。
けっこうな高さの山が太平洋にすとんと落ちるような格好になっている。
おそらく台湾という島はプレートとプレートがぶつかりあって盛り上がってできた島なのだろう。
関東平野になれている自分としては、なだらかな山から平地になり海へと連なるというイメージを抱いていたが、花蓮では、大きな山がいずれも平地なしで海へストンと落ち込んでいる。
左側に見える山々は、すべて雨雲がかかっていて上が見えない。
雲の高さが200~300mとしても、左側が山深いところであることがうかがえる。
20分ほど走ったら、レインウエアを着ているためか体がほてって喉が渇いてきた。
何か飲もうと探しているとちょうどセブンイレブンがあった。
台湾は、日本と同じにあちらこちらにコンビニがある。
しかも、コンビニの商品もかなり日本と似ているので、サイクリングで走っていて困ることはない。
スポーツドリンクを1本購入して、一口、二口と飲んだ。
喉が渇いているので、体にしみる。うまい。
ちょっとだけ休んで、ふたたび走り出す。
快調だ。
何の障害もない。
目的地はタロコ渓谷の天祥だ。
天祥へは、新城というころで分岐する。
交通案内の表示もわかりやすい。
分岐点を左に、中部横貫公路の8号線を走る。
台湾の島は、プレートがぶつかりあって盛り上がってできたので、真ん中が山岳地帯であり、それらは結構な標高がある。
その山岳地帯を突っ切るように横断しているのが中部横貫公路である。
東西へ道路を結べば、交通、輸送が楽になるということで作られた道路だ。
なんちゅうところに道路を作ったのだろうと驚嘆するばかりだ。
当時ほぼ人力でV字に切り立った断崖の岩に何千人もの労働者が挑み、みごとに道路を作った。これはまさに血と汗の結晶である。
厳しい場所であったため犠牲者が多数出たという。そのための慰霊碑もある。
今回は、その道路を折りたたみ自転車で上り、あわよくば台湾道路の最高標高地点の武嶺に立って、記念写真を撮ってこようというのが目的なのだ。
分岐点から少し走り、タロコ渓谷の入口に到着。
入口には黄色の屋根瓦に柱が赤い山門があり、赤い門の奥には、岩肌をくりぬいた短いトンネルが口を開けていた。
ここは記念写真スポットらしく、観光客が次々に記念写真を撮影している。
台湾人の男性が女性を立たせて写真撮影をしていたので、日本語で「写真撮りましょうか」と言ってみた。
相手は日本語で話しかけられたので理解しているとは思えないが写真を撮ってあげようということは理解したらしく、中国語でたぶん想像だが「ありがとう、おねがいします」と言って、私にデジカメを渡し、ここを押すようにと指さした。
写真撮影の合図をどうするかと考えたが、面倒くさいので、3,2,1と英語でカウントダウンをしたらそれで通じたようだ。
そのカップルとは、お互いにシェシェと言ってさよならした。
入口の門をくぐると、いよいよタロコ渓谷が始まる。
両側がそそりたつような山で、谷を川が流れている。
河原の石は大理石のためか白っぽい色で、川の水は澄んでいた。
天祥への道は谷を流れる川沿いに川の流れに合わせるように蛇行しながら、ゆっくりと標高を上げていく。
天祥への道は、さきほど述べたとおり岩山を削って建設されている。
そのため、場所によっては屋根のように道路の上に岩が突き出したり、岩肌むき出しのトンネルなどがある。
地震でもあれば崩壊してもおかしくはない。
道路も狭くて片側交互通行のところもある。
道路の上に突き出したように見える岩も、トンネルもよく見ると大型観光バスの屋根より少し上まで、ほんの少ししか余裕がない。
おそらく手作業で岩を削ったので、自動車の屋根に接触するかどうかぎりぎりのところまでしか工事をしなかったのだろうか。
おそらく、日本なら、岩を削ったトンネルもかなり大きく穴を開けていくにちがいない。
いいや、そうではないかもしれない。
この光景を目にすれば、観光客は誰しも、ものすごいところへ来てしまったのだと衝撃を受け、中部横貫公路の工事のすごさを体感する。
タロコ渓谷の道路を作った工事従事者への想いを残すために当時のままにしているのかもしれない。
岩肌は、滑らかではなく、ごつごつと削り取られたままで、これも当時の道路工事を想像させる。
タロコ渓谷への観光客は、ほとんどがバス、次にタクシー、たまにレンタルバイクを利用する。
その日、雨の中、タロコ渓谷を折りたたみ自転車でハアハア言いながら上っていったのは私だけであった。
タロコ渓谷は世界的な観光地であり、タロコヒルクライムレースも行われているくらいだから、何人かサイクリストがいても良さそうなのだが走っているサイクリストは見かけなかった。
自転車のよいところは、自然を五感で直接感じることができることである。
自動車は便利だが、どうしても箱の中に囲まれているためか、視覚さえも制限されてしまう。
自動車だと走行中ガードレール沿いに谷底の川を覗くことはできない。
自転車ならゆっくりと走りながら谷底を眺めたり、両側にV字に落ち込む谷の上部を仰ぎ見たりすることができる。視界が圧倒的に広い。
この日はスピードを競う必要は無い。ただ、夕刻までに天祥まで着けばよいので、ゆっくりと走れた。
景色の良さそうなところで、自転車を止めては景色を眺め、おお~すごい~と声をあげては写真を撮る。
なんとも贅沢なポタリングだ。
渓谷沿いの道を、ある程度、上ると、観光客に落石から頭を守るためのヘルメットを貸してくれる場所があった。
タクシーや観光バスなどはそこで停止して、観光客用にヘルメットを借りる。
私は、自転車用のヘルメットをしているので借りる必要が無かった。
どのようなヘルメットを貸しているかというと、工事現場で使うヘルメットである。
次々に観光客がやってきては使い回ししているので、臭いなどを気にする人は使いたくないだろうと思った。
そこを通り過ぎると、川の両脇の山がぐっと壁のように接近してきて、まるで両側から押しつぶされそうなくらいに狭まる。
もっとも狭いところでは幅は5,6メートルしかないのでは。谷がほぼ垂直のように切り立っている場所がある。
閉所恐怖症の人では耐えられくらいに圧迫感がある。
そのような場所なのに、下を流れる渓流を眺めることができるようにと、川をはさむ絶壁の岩壁をくりぬいてある。
ところどころが川を覗けるように川に面した部分があいているが、基本はトンネルなので薄暗くて前が見えない。
自転車でトンネルの中をのろのろ走っていたのだが、平衡感覚がおかしくなり、こけそうだったので、おりて歩くことにした。
ときどき、上から川をのぞき込む。川は真下に流れている。上半身を乗り出すようにしてほぼ真下を流れる川をのぞき込んでは、落ちそうな気持ちになり、急いで身を引っ込める。
タロコ渓谷はまさに絶景である。
その風景は、あまりに大きすぎて写真に納まりきらない。
おおっ、すごい。ああっとか、まともに言葉にならない感嘆の声をあげるのみである。
このような感嘆の声を何度もあげながら、次第に高度を上げていく。
途中、路面で気になったのは、真新しい小さな落石があったことだ。
大きなものはこぶし大、小さなものでは1cmくらい。
それが少しではあるが、落ちていた。
落石だ。
この写真はピンボケだが、小石が見える。
道路標識を見ると、「立ち止まるな、落石に注意」とある。
このくらいの落石は日常茶飯事なのだろう。
こぶし大のものが頭を直撃したら相当な怪我をする。
ここでは、ヘルメットはやはり必要なのだ。
そんな落石がちらほら道路にある。
これらは自動車の走行には支障が無い。自動車の人間にはあまり気にならない。
かなりの石が落ちてきても、自動車の屋根が受け止めてくれる。
しかし、生身にあたったら怪我は必至である。
怪我するほどの大きさではなくとも、小さな石の破片も鋭い。
忍者がばらまくトゲトゲのようなものに見えてくる。
これは、パンクにつながりかねない。
うっかり踏みつけないようにと配慮しながら進むことにした。
タロコ渓谷で観光スポットとして有名な場所をいくつか通り過ぎると、天祥に着いた。
標高は480mなので、空港の標高1mとしておよそ480mを上ったことになる。
花蓮空港に着陸する前に、上空から花蓮の様子が見えたのだが、雨雲に覆われていて、道路は濡れて黒かった。
ざあざあ振りではないが、レインウエアを着ないと辛い。
空港のロータリーをぐるっと回って、国道9号へ向かうと、最初のT字路交差点があり、そこで赤信号待ちをした。
いよいよ台湾の道路を走るのだが、路面は大丈夫だろうかとか自動車の走りに危険はないだろうかとかいろいろと考えてしまった。
はじめての地域の道路を走るときは、どうしても気持ちが用心深くなる。
ゆっくりとした赤信号が青に変わるのを待って、最初の交差点を右折し、国道を走りだす。
台湾の国道を走るのは初めてだ。
片側が3車線ある。
真ん中寄りの車線を大きなトラックやバスが勢いよく走っている。
自分は、いちばん右側を走る。
走りやすい。恐怖感もない。
なぜかというと、車線がはっきりと分かれているからだ。
自動車と自転車バイク用の車線ははっきりと区別されている。
2車線は自動車用で、右側の歩道寄りの車線が自転車とバイク専用車線だ。
自転車バイク用車線は、けっこう幅が広い。およそ1m50cmはあるだろうか。
バイクも自転車と同じ車線を走るのだが、それほど多くの台数は走っていない。
自転車も私以外に走っていない。
この自転車用の車線は、十分な幅があるから、大型トラックやトレーラーが横を走っていっても少しも怖くない。
これはいい。
すべての台湾の道路がこのようになっているのかはわからないが、少なくとも花蓮空港からの国道9号線は走りやすかった。
舗装も荒れていない、穴が開いていることはなかった。
国道9号線を北上する。
国道9号線はほぼ海と平行している路線で、ほぼフラットだし、道路はまっすぐで見通しがきき、信号もそれほど多くない。
そのため、時速20キロ以上で快適に走ることができた。
9号線沿いは、小さな店などが点在している。
土産物屋や食堂やビンロウ売りの店がポツポツと道路沿いに並んでいるが、台北のように高層建築物はなく、ほぼ平屋のみである。
道路から少し離れると、畑が広がっている。
どんな作物を作っているのかはわからないが、畑が耕されている。
ところどころに野菜の直売所的なものもあった。
道路の右側は畑だが、おそらく数百メートルもしないうちに海岸となり、太平洋の波が打ち寄せている。
花蓮は、太平洋に面しており、海で作られた雲が台湾という島にぶつかるところだ。
雨量は多くはないもののそれなり雨天の日が多いらしい。
道の左側には山がある。
けっこうな高さの山が太平洋にすとんと落ちるような格好になっている。
おそらく台湾という島はプレートとプレートがぶつかりあって盛り上がってできた島なのだろう。
関東平野になれている自分としては、なだらかな山から平地になり海へと連なるというイメージを抱いていたが、花蓮では、大きな山がいずれも平地なしで海へストンと落ち込んでいる。
左側に見える山々は、すべて雨雲がかかっていて上が見えない。
雲の高さが200~300mとしても、左側が山深いところであることがうかがえる。
20分ほど走ったら、レインウエアを着ているためか体がほてって喉が渇いてきた。
何か飲もうと探しているとちょうどセブンイレブンがあった。
台湾は、日本と同じにあちらこちらにコンビニがある。
しかも、コンビニの商品もかなり日本と似ているので、サイクリングで走っていて困ることはない。
スポーツドリンクを1本購入して、一口、二口と飲んだ。
喉が渇いているので、体にしみる。うまい。
ちょっとだけ休んで、ふたたび走り出す。
快調だ。
何の障害もない。
目的地はタロコ渓谷の天祥だ。
天祥へは、新城というころで分岐する。
交通案内の表示もわかりやすい。
分岐点を左に、中部横貫公路の8号線を走る。
台湾の島は、プレートがぶつかりあって盛り上がってできたので、真ん中が山岳地帯であり、それらは結構な標高がある。
その山岳地帯を突っ切るように横断しているのが中部横貫公路である。
東西へ道路を結べば、交通、輸送が楽になるということで作られた道路だ。
なんちゅうところに道路を作ったのだろうと驚嘆するばかりだ。
当時ほぼ人力でV字に切り立った断崖の岩に何千人もの労働者が挑み、みごとに道路を作った。これはまさに血と汗の結晶である。
厳しい場所であったため犠牲者が多数出たという。そのための慰霊碑もある。
今回は、その道路を折りたたみ自転車で上り、あわよくば台湾道路の最高標高地点の武嶺に立って、記念写真を撮ってこようというのが目的なのだ。
分岐点から少し走り、タロコ渓谷の入口に到着。
入口には黄色の屋根瓦に柱が赤い山門があり、赤い門の奥には、岩肌をくりぬいた短いトンネルが口を開けていた。
ここは記念写真スポットらしく、観光客が次々に記念写真を撮影している。
台湾人の男性が女性を立たせて写真撮影をしていたので、日本語で「写真撮りましょうか」と言ってみた。
相手は日本語で話しかけられたので理解しているとは思えないが写真を撮ってあげようということは理解したらしく、中国語でたぶん想像だが「ありがとう、おねがいします」と言って、私にデジカメを渡し、ここを押すようにと指さした。
写真撮影の合図をどうするかと考えたが、面倒くさいので、3,2,1と英語でカウントダウンをしたらそれで通じたようだ。
そのカップルとは、お互いにシェシェと言ってさよならした。
入口の門をくぐると、いよいよタロコ渓谷が始まる。
両側がそそりたつような山で、谷を川が流れている。
河原の石は大理石のためか白っぽい色で、川の水は澄んでいた。
天祥への道は谷を流れる川沿いに川の流れに合わせるように蛇行しながら、ゆっくりと標高を上げていく。
天祥への道は、さきほど述べたとおり岩山を削って建設されている。
そのため、場所によっては屋根のように道路の上に岩が突き出したり、岩肌むき出しのトンネルなどがある。
地震でもあれば崩壊してもおかしくはない。
道路も狭くて片側交互通行のところもある。
道路の上に突き出したように見える岩も、トンネルもよく見ると大型観光バスの屋根より少し上まで、ほんの少ししか余裕がない。
おそらく手作業で岩を削ったので、自動車の屋根に接触するかどうかぎりぎりのところまでしか工事をしなかったのだろうか。
おそらく、日本なら、岩を削ったトンネルもかなり大きく穴を開けていくにちがいない。
いいや、そうではないかもしれない。
この光景を目にすれば、観光客は誰しも、ものすごいところへ来てしまったのだと衝撃を受け、中部横貫公路の工事のすごさを体感する。
タロコ渓谷の道路を作った工事従事者への想いを残すために当時のままにしているのかもしれない。
岩肌は、滑らかではなく、ごつごつと削り取られたままで、これも当時の道路工事を想像させる。
タロコ渓谷への観光客は、ほとんどがバス、次にタクシー、たまにレンタルバイクを利用する。
その日、雨の中、タロコ渓谷を折りたたみ自転車でハアハア言いながら上っていったのは私だけであった。
タロコ渓谷は世界的な観光地であり、タロコヒルクライムレースも行われているくらいだから、何人かサイクリストがいても良さそうなのだが走っているサイクリストは見かけなかった。
自転車のよいところは、自然を五感で直接感じることができることである。
自動車は便利だが、どうしても箱の中に囲まれているためか、視覚さえも制限されてしまう。
自動車だと走行中ガードレール沿いに谷底の川を覗くことはできない。
自転車ならゆっくりと走りながら谷底を眺めたり、両側にV字に落ち込む谷の上部を仰ぎ見たりすることができる。視界が圧倒的に広い。
この日はスピードを競う必要は無い。ただ、夕刻までに天祥まで着けばよいので、ゆっくりと走れた。
景色の良さそうなところで、自転車を止めては景色を眺め、おお~すごい~と声をあげては写真を撮る。
なんとも贅沢なポタリングだ。
渓谷沿いの道を、ある程度、上ると、観光客に落石から頭を守るためのヘルメットを貸してくれる場所があった。
タクシーや観光バスなどはそこで停止して、観光客用にヘルメットを借りる。
私は、自転車用のヘルメットをしているので借りる必要が無かった。
どのようなヘルメットを貸しているかというと、工事現場で使うヘルメットである。
次々に観光客がやってきては使い回ししているので、臭いなどを気にする人は使いたくないだろうと思った。
そこを通り過ぎると、川の両脇の山がぐっと壁のように接近してきて、まるで両側から押しつぶされそうなくらいに狭まる。
もっとも狭いところでは幅は5,6メートルしかないのでは。谷がほぼ垂直のように切り立っている場所がある。
閉所恐怖症の人では耐えられくらいに圧迫感がある。
そのような場所なのに、下を流れる渓流を眺めることができるようにと、川をはさむ絶壁の岩壁をくりぬいてある。
ところどころが川を覗けるように川に面した部分があいているが、基本はトンネルなので薄暗くて前が見えない。
自転車でトンネルの中をのろのろ走っていたのだが、平衡感覚がおかしくなり、こけそうだったので、おりて歩くことにした。
ときどき、上から川をのぞき込む。川は真下に流れている。上半身を乗り出すようにしてほぼ真下を流れる川をのぞき込んでは、落ちそうな気持ちになり、急いで身を引っ込める。
タロコ渓谷はまさに絶景である。
その風景は、あまりに大きすぎて写真に納まりきらない。
おおっ、すごい。ああっとか、まともに言葉にならない感嘆の声をあげるのみである。
このような感嘆の声を何度もあげながら、次第に高度を上げていく。
途中、路面で気になったのは、真新しい小さな落石があったことだ。
大きなものはこぶし大、小さなものでは1cmくらい。
それが少しではあるが、落ちていた。
落石だ。
この写真はピンボケだが、小石が見える。
道路標識を見ると、「立ち止まるな、落石に注意」とある。
このくらいの落石は日常茶飯事なのだろう。
こぶし大のものが頭を直撃したら相当な怪我をする。
ここでは、ヘルメットはやはり必要なのだ。
そんな落石がちらほら道路にある。
これらは自動車の走行には支障が無い。自動車の人間にはあまり気にならない。
かなりの石が落ちてきても、自動車の屋根が受け止めてくれる。
しかし、生身にあたったら怪我は必至である。
怪我するほどの大きさではなくとも、小さな石の破片も鋭い。
忍者がばらまくトゲトゲのようなものに見えてくる。
これは、パンクにつながりかねない。
うっかり踏みつけないようにと配慮しながら進むことにした。
タロコ渓谷で観光スポットとして有名な場所をいくつか通り過ぎると、天祥に着いた。
標高は480mなので、空港の標高1mとしておよそ480mを上ったことになる。
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