ぐるぐる自転車どこまでも

茨城県を自転車で散歩しながら,水戸藩の歴史について考え,たまにロングライドの大会に出場,旅する中年男の覚書

ツール・ド・のと 400~背中

2012-09-24 22:07:51 | 自転車
ツールドのとは、800人近くが走る。
そのため、しばらくは団子の固まりになって走らざるを得ない。
いや、団子というよりも数珠つなぎの長い~紐というのが適切か。
最初の方のスタートならよいけれども、後からのスタートになると、抜いても抜いても延々と自転車が続いているといった感じがする。
団子になっても同じペースの人なら、それなりに快適に飛ばせてよいのだろうが、まったく違うペースの人が団子となっているからストレスがたまる。
これがしばらく続く。
スタート地点はたいがい市街地にある。
市街地の中は信号などがあるため、しょっちゅう減速、停止を求められる。
適当なグループを組もうとしても、市街地を抜けてばらけないと無理だ。
市街地ではノロノロと走り、しかも、車間距離がなくピッタリとくっついた状態になる。
しばらくは前の人の背中を見ながら走ることになる。
背中というよりも、後輪か。
後ろが何段目に入った。あっ切り替えた。
ブレーキかけたとか。
うかつに景色など見たりすると追突する危険がある。
そこは要注意だ。
車間距離がないので、ハンドサインも間に合わないときがある。
そんなときはブレーキといった声を出して後続に注意喚起したほうがよいだろう。

しばらく背中と走りを後ろから見ながら、この人はどんな人かと想像し、追い抜くときにチラっとその人の顔を拝見することが多い。
ああっ、こんな顔の人だったのかと納得するときもあるし、ええっ想像と違うということも。
背中を見ながら走ることも勉強になります。



ツール・ド・のと 400~ママチャリ

2012-09-24 21:25:49 | 自転車
ツールドのと400には、名物男がいる。

初日の最後の方に円山峠という標高およそ250メートルの峠がある。
その入り口にさしかかったときに、前方に、すくっと背を伸ばした男の姿が目についた。
最初は、クロスバイクかなと思い、少しずつ近づいた。
近づいてみると、ママチャリであった。
ええっ、こんな猛暑の中をママチャリで行くのか、驚きである。
さらに近づき、ほぼ20センチくらい後ろをピッタリと追走してみた。
ママチャリさんは、勾配が少しずつきつくなってきているので、きつそうな感じでこいでいた。
ママチャリさんの後ろ側泥よけには黄色のステッカーらしきものが貼ってあった。
どれどれと読み取ってみる。
そこには「金沢駅前レンタサイクル」とあった。
頭の中で、情報がカタカタと音を立てて、固まりになっていった。
ママチャリさんは、金沢駅前でママチャリをレンタルした。
そこから内灘町のスタート地点までママチャリで移動した。
そして、スタート地点からここまでママチャリをこいできた。
ゼッケンの色を見ると、3日間コースのゼッケンナンバー。
ママチャリさんは、3日間、ママチャリで走りきるのだ。
この焼け付く炎天下のなかを。
ちょっとした感動を覚えた私はママチャリさんと並走して、にこやかに「すごいですねえ~」と精一杯の経緯を込めながら話しかけた。
ママチャリさんは返事をしない。
チラリと一瞥しただけで無反応なのだ。
ちょっとの間、ママチャリさんからの応答を待ったが、ママチャリさんは話をしたくないオーラを丸出しにしていた。
何となく気まずい雰囲気になったので、「じゃ、お先に」と私はスピードアップして先を急ぐことにした。

その夜、ママチャリさんにあった話をすると同宿の人が
「あの人は有名な人で何年も出ているよ、去年はテレビ局のインタビューを受けたけど、ほとんどしゃべらないのでインタビュアーが困っていたらしいよ」と教えてくれた。

2日目の朝、スタート地点に並んでいると、ママチャリさんが目に入った。
ママチャリさんの隣には女性のローディがいた。
女性のローディはママチャリさんに何かを話しかけたようだ。
何を話しかけたかはわからない。
しかし、ママチャリさんがうれしそうに微笑んでいたことは見逃さなかった。
そのとき、中年親父に声をかけられるよりも若い女性の方がいいんだというしごく当然の法則に気づかされた。

2日めの夜、同宿の人とママチャリさんのことが話題になった。
その人は熱中症でリタイヤした人だったが、バスの運転手さんからママチャリさんのことを聞いたらしい。
運転手さんは、ここ数年、リタイヤした人を運ぶバスの運転をしている。
彼の記憶によれば、ママチャリさんがリタイヤしてバスに乗った記憶は全くないという。
ママチャリさんは必ず3日間コースに参加し、リタイヤすることなく制限時間内に完走するらしいのだ。

恐るべし。ママチャリさん。
波の体力ではない。
ロードバイク乗りでもまいってしまうくらいの道をただひたすら背筋を伸ばしてギコギコと。
亀なローディを鬼のように追い抜いていく。
何が彼をそこまで駆り立てるのだろうか。