映画と音楽そして旅

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(シネマ落書帖)(45)映画「シェルブールの雨傘」

2005-11-27 09:30:38 | 映画音楽
 この映画の音楽をラジオで始めて聴いたのは、1970年代になってからで公開されてから、すでに十年以上も立っていました。それは「懐かしの映画音楽」という番組でしたが、この時同時に初めて聞いたのが「白い恋人たち」でした。
 この二曲はなにか印象に残り、いつかこの映画も見たいな‥と、思いながらそれから三十年程がたってしまい、DVDで実際に観たのはつい先日のことです。
 戦争という人類最大の愚行が愛し合う二人‥傘屋の娘ジュヌヴイエーヴ(カトリーヌ・ドヌーブ)と、恋人ギー(ニーノ・カステルヌオーヴォ)に、悲しい運命を与えてしまいます。
 このあたりは「ひまわり」とよく似ていますが、「ひまわり」では妻が待つロシアに帰ったアントニオが、果たしてあの北の大地に根付くことができるのだろうか‥と,前にはブログで余分な心配をしました。
 やりきれない思いのまま終わった「ひまわり」に比べて、「シェルブールの雨傘」の場合は偶然に再会した二人の別れのシーンでは、深い悲しみと寂しさの中でも、なにか心休まるものを感じました。
 音もなくしんしんと降りしきる雪の中で、黙って見つめあう二人の脳裏に,今はもう遠くなった愛の日々の記憶が,駆けめぐったことでしょう。
 給油中の車の座席には彼の子供が‥もし彼が感情のまま子供を抱きしめていたら‥また変わったストリーになったことでしょう。去っていく彼女を彼が見送った後で、妻が子供を連れて帰ってきて、何事もなかったように平穏なクリスマスを迎えます。
 幸せとは‥結局平凡な生活の積み重ねなんですね。
 セリフのすべてにメロディをつけて出演者全員が、オペラみたいに歌いながら物語を進めていくという大胆な発想は、最初は戸惑いましたが、しばらくするとだんだん慣れてきたのか、耳に快く響くようになりました。
 歌声はすべてプロの歌手による吹き替えだったそうですが、だからといってそれがこの作品の価値を下げる訳でもありません。
 シェルブールという町は十七世紀以来、幾度も戦火に遭った悲しい町だそうですが、あえてこの町を舞台に選んでこの名作を作り上げました。
 それに当時は21歳だったカトリーヌ・ドヌーブというスターも、非常に強いインパクトを与えたようで、世代を超えて愛されていたスターではないだろうかと感じました。