映画と音楽そして旅

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(シネマ落書帖) (43)デボラ・カーの「めぐり逢い」再見

2005-11-21 00:04:49 | 映画
 この映画はずいぶん昔に観たはずなのにストリーは殆ど忘れていて、記憶にあるのは「エンパイア・ステート・ビル=天国に近いところ」とか言う会話の断片ぐらいで、そのまま忘却の彼方へ消えていきました。
 今年の初秋に他界した作家、フランソワーズ・サガン原作「悲しみよこんにちは」のブログを書いてから、この映画でアンヌ役だったデボラ・カーが主演した「めぐり逢い」という映画が、その後なぜか急に気になって来ていました。
 先日ビデオの返却に行った店でちょうど見つけたので、懲りずにもう一度観ましたが、内容は殆ど忘れていたのが幸いして、まるで初めて観るような新鮮な気分で見れました。
 ニューヨークに向う豪華客船で知り合った、プレイ・ボーイのニッキー(ケーリー・グラント)と、歌手のテリー(デボラ・カー)はお互いに好意を寄せあい、半年後に再会をを約束しますがその約束の日には…と、このすれ違い映画は展開していきます。 
 私が最も心を打たれたのはニッキーの祖母とテリーとの出会いと別れの場面です。船旅の途中で寄港したヴィル・フランシュという町…初耳なので調べて見ましたが<南フランスの坂と海に囲まれた町」だそうですが、その通り彼の祖母は緑に囲まれた、見晴らしの良い高台に住んでいました。肉親の愛情、家庭の温かみに触れたテリーは、元ピアニストだったという祖母のピアノに合わせてしみじみと歌います。いい場面でしたね。
 ちょっと美文調なのが気になりますが、例によってまた歌詞をメモして見ました。
   <この美しき愛 永遠に変らず  甘き思い出にならん 
    熱き約束二人を永遠に結ばん  この愛 日ごと豊かに 
    時の流れに色褪せることなく その喜び胸に還る>
 悪いことと知りつつ、とうとう終わりまで写しちゃいました。見逃して下さいね。
 この歌は初めて聴く歌なので「映画音楽大全集CDアルバム」…でなく、このアルバムの詳しい内容が紹介されたカタログ…を広げました。
 そこには映画「めぐり逢い」主題歌として「過ぎし日の恋」歌はヴィック・デモンとしてCDの案内がありました。
 それにしてもデボラ・カーという女優、歌が歌えたのかな?彼女の歌は初耳だけど…なんて余計な思いがチラと脳裏をかすめましたが、あまり面倒なこと云わんといてんか…というもう一人の私の声もあり、黙って彼女の歌に聴き入りました。
 地中海を望む素敵な風光の中での、年老いた彼の祖母との初めての出会い…二人の女性の心が通じ合った時、芽ばえつつあった彼への愛は、更に大きく確かなものへと増幅されていきます。
 実は私はこの出会いと別れの場面を、何度か繰り返して観ました。
そして前に観たときには意識しなかった感動が、広がっていくことに気づきました。あれから今までの間に私が重ねた、年輪の数がそうさせるのでしょうか。
 夜の甲板で思わず涙をぬぐう彼女は彼に言います「きっと手紙を書くわ」と…
 このあたりから、やや哀愁ムードが漂いはじめ…と思いきや…入港後にはまたまたユーモラスな珍場面が繰りひろげられます。
 ラストではなにかほのぼのとした、心暖まるものを感じてほっとしました。
この映画はストリーを追うよりも、二人の洒落た会話や雰囲気を楽しむ映画だな…と今まで見た映画とはまた、違ったもののように思ったのは私だけでしょうか。ケーリー・グラントは私は初めてですが、イングリッド・バーグマンと共演した作品が、手元にありますのでいずれまた…と思います。 
 この作品は1957年の製作ですが、もう一昔前の作品あるいはキャサリン・ヘップバーンが主演した作品などもあり、何度もリメイクされているそうですが、それだけの価値のある作品だったのでしょう。