映画と音楽そして旅

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(シネマ落書帖) (41)アメリカ映画「愛と哀しみの果て」

2005-11-12 00:18:21 | 映画
 広大で豊かななアフリカの大自然が、こんなに美しく魅力的なものだ…と云うことに、私はこの映画を見るまでまで気づきませんでした。私が少年時代に読んだ冒険小説に、南洋一郎という作家の書いた「吼える密林」という作品がありました。この作品の舞台はアフリカではなく、当時は日本の統治下にあった南洋諸島だったと思います。赤道直下の暑気と炎熱の地獄、荒れ狂う猛獣の群…などマイナーなイメージが、私の脳裏に定着していたように思います。
 ということは私のアフリカ大陸に対する認識は、子供の頃から全く進化していなかったということになります。勿論、実際のこの大陸の自然や暮らしが、もっと苛酷で厳しいものと思いますが、私にとってこの野性に満ちた世界は強烈なインパクトをもって迫ってくるような気がします。
 この映画は優美な文体と高い物語性で、A・ヘミングウェイの絶賛を浴びたと言われるデンマークの作家カレン・プリクセン(文名アイザック・ゼイーネン)の自伝を映画化したものだそうです。
 
 デンマークの男爵夫人カレン(メリル・ストリーブ)はアフリカの大自然や,この大地に生きる素朴な人々に魅力を感じ、夫と共にケニアでコーヒー栽培に挑戦します。事業にあまり熱意を示さない夫に代わって一人で経営に励みます。
 夫と別れた後は以前からの知人の冒険家…いつも蓄音機とモーツアルトのレコードを持ち歩いているという…デニス(ロバート・レッドフオード)に惹かれ、彼との愛にのめりこんでいくのですが…
 
 ロバート・レッドフオードは「明日に向かって撃て」の主演スターだった…程度の知識で、メリル・ストリーブに至っては映画を見るまで全然知りませんでした。彼女は男勝りの気性で万事テキパキと進める一方、先住民の健康や教育に気を配る心優しい魅力的な女性を見事に演じていましたが、その後「ミュージック・オフ・ハート」と云う1999年の映画で、ヴァイオリンの経験が全くないのにもかかわらず、努力してヴァイオリン教師の役柄を演じて高い評価を得たそうです。
 この映画では野生動物の楽園ケニアのマサイ・マロ国立保護区の草原を疾駆する野性動物の群や、朝焼けに浮ぶ動物達のシルエット、デニスが操縦する飛行機から見た大陸の雄大な風景や水鳥の群…また時代の変遷と共に次々と登場するクラシック・カーや、複葉の飛行機,蒸気機関車など当時の時代背景をリアルに描いています。 
 「自分より物知りは要らない」といい、背丈が一定以上に伸びた子供への教育を拒んできた、先住民の酋長も彼女の熱意にとうとう根負けして、すべての子供に教育を授けることを認めます。
 荒野で道に迷った彼女はデニスから、コンパスを貰って危機から脱出します。このコンパスは二人の愛を象徴していたように思います。しかし二人はコンパスを合わす方向が、それぞれ少し違っていました。
 彼の愛を期待する彼女に彼は「孤独が好きだ、自由でありたい、束縛はされたくない…」この言葉を残して草原の彼方へ飛び去って行きました。
 こうして二人の愛は永遠に結ばれることはありませんでした。
 ラスト・ダンスのときの、もの哀しい調べが妙に私の心に残りました。

 上映時間(DVD)161分  1985年度アカデミー賞 作品賞 監督賞など7部門 
 監督 シドニー・ポラック 音楽 ジョン・バリー