イマカガミ

こころにうつりゆくよしなしごとを・・・

小田光雄「ブックオフと出版業界」

2009-05-13 16:05:35 | 
を読む。(リンクは張りません)
図らずも、旬ですな。

この本には繰り返しが多いので、短くまとめると、
「出版業界は今苦境に立たされている。
なぜなら、
1. 再販制度の元で庇護されてきたため
(出版社と取次ぎ、書店は企業努力を怠り、小売業としての競争力がない)、
2. 読者の格式が下がり、本を"愛でる"から、"消費"へと大衆化し、
本が売れなくなってきたから。
その結果、毎年大量の新刊本が発行される一方で、返本率は40%に達している。

ところでブックオフは怪しからん。
なぜなら
a. 創業者が既存の出版業界を理解していない
b. 本の価値をわかっていない
c. 弱っている出版業界につけこみ、新刊本の市場を侵食している
から。」
良く解釈すると、ブックオフの業績が伸びても著者には何のメリットも無く、
それどころかもしかすると新しい書き手の発掘を妨げているかもしれないため
ひいては将来の出版業界、コンテンツ業界が衰退してしまう、ということか。
(いや、そんないいことは言っていないな。)


前半の苦戦する出版業界に対する提案は別に書かれていない。
後半の部分もほとんど言いがかりだ。
結局、執筆時点でブックオフに対する情報があまり無かったので
怪しい根拠付けや推測に基づいて議論が展開されている。

個人的に気になった箇所は2点ある。
1点目は、書きぶり。
全編対話形式で書かれており、インタビュアーが感情的にブックオフを非難し、
出版業界を擁護するトーンである一方、
著者は幾分冷静にそれに答える、根拠を示すという役割分担なのだが、
あとがきにもあるようにこれは著者の一人二役であるため、
インタビュアーという第三者を通じて
著者の感情を語らせるという手法が胡散臭い。

2点目は消費者視点が欠けていることだ。
著者は「出版業に携わって」いたそうで、経歴がよくわからないのだが、
いわゆるサプライヤー・ロジックに満ちており、その点で典型的だな、と思う。

基本的にぼやきの本だが、出版業界の思いを理解するのには役立つかもしれない。

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