岡崎直司の岡目八目

歩キ目デス・ウォッチャー岡崎が、足の向くまま気の向くまま、日々のつれづれをつづります。

舟板の家。

2006-06-27 11:18:56 | 建見楽学
旧津島町の宇和海に面して、下灘地区に泥目水(とろめず)という不思議な地名の集落がある。

ここには、キョービとても珍しくなってしまった石波止が残っていて、その確認に行ったのだが、フトかたわらを見ると、こういう建物が目に入った。
かつての漁家には、全国どごでもよく見られた「舟板」を使った家である。日本中が(いや世界も)木造船ばかりだった頃から、やがて老朽化し廃船となる際のその行き先として、家の壁面を飾ることとなり、第二の人生を歩むというワケ。
現代のように、FRP製の腐らない船が老朽化し、処分に困るという馬鹿げたことは起きなかった。
中には出世して、数奇屋建築の茶室なんかで用いられる舟板もあったりした。
こうした小さき、風土が生み育てた造形を見ていると、このささやかな存在も、果たしていつまでここにこうしていられるか、誰からも顧みられることなく、やがて朽ち果てるのだろう。
真珠景気に沸いた喧騒が去った後の、こうした集落にあっては、唯一それ以前の村の佇まいを教えてくれる貴重な遺構なのだが。

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