岡崎直司の岡目八目

歩キ目デス・ウォッチャー岡崎が、足の向くまま気の向くまま、日々のつれづれをつづります。

写真で読む「僕の見た大日本帝国」

2008-02-09 23:42:57 | 良書紹介


面白い本を読んでいる。
外から眺めてみて初めて分かる“日本”というものがある。

この「僕の見た大日本帝国」は、かつて日本の領土だったエリアを丹念に周った著者の目が、豊富な写真を使って、ナニゴトかを伝えようとしている。

今の平和な日本の国内に住む日常感覚からは、多分ゼッタイに考え付かない感覚に違いないが、あるべきハズの無い場所に突然現れる鳥居や日本の家屋など、そうした想定外な事柄を眺めていると、歴史の臨場感とはこういうものかとも思わされる。

“い~よぐるっと88”

2008-01-13 21:45:57 | 良書紹介


昨年末、伊予市のガイド本「い~よぐるっと88」が刊行された。

これは、旧伊予市の“伊予市八景”に基づいて、旧双海町と旧中山町との合併を契機に、言わば“新伊予市八景”を策定しようとの委員会が結成され、その発想が形となったもの。
どうせなら、指定文化財のみならず、新伊予市の隠れた地域資源を一般の方々にも楽しんで読まれるものを、ということでビジュアルな編集となった。

A5版160ページ、一冊500円。県内主要書店で扱っている。

平成の大合併による地域アイデンティティの減退傾向が指摘されているが、こうした新たな取り組みは歓迎したい。
愛媛県は70市町村が20市町となり、13の村が消えた。
西予(せいよ)市では、明浜町・宇和町・野村町・城川町・三瓶町の五町が合併したのだが、文化財冊子を例に取ると、まだ旧町単位のものがそれぞれあるに過ぎない。それで、市文化財審議委員会が中心となり、西予市の文化財冊子として一冊にまとめる編集作業をしている。
他の合併市町ではどうなんだろう。

「失われた昭和」

2007-08-05 12:34:37 | 良書紹介


宮本常一の写真に読む「失われた昭和」
      佐野眞一・著  平凡社 定価1600円

今回は、周防大島文化交流センターでこの本を購入。
表紙の子どもたちの写真のみならず、精神的には現代より余程豊かだった時代のそのままが、何事か我々に失ったものの正体を気付かせてくれる。

えひめ地域づくり研究会議20周年記念誌。

2007-06-05 10:12:09 | 良書紹介


これが、その記念誌。

表紙は、内子座のポスターなどでお馴染みの山田清昭氏製作の版画。内子町御祓(みそぎ)地区の棚田をモチーフにしている。

「えひめ地域づくり研究会議」は1987年(昭和62)に発足した民間団体で、当時、県の外郭団体として設立スタートした(財)えひめまちづくり総合センターと両輪の役割を持ちつつ活動推移。

久万町(当時)の地元材の杉を活用したまちづくりの初期段階や、小田川の環境保全運動など、県内における現在のまちづくりにつながる主要な事柄や人が随所に散りばめられた一冊。500円で販売中。

これを3000部作ったので、何とか販売して活動費を捻出しないと、さぁこれからが大変だぁ!

連絡先は、(財)えひめ地域政策研究センター ☎089-932-7750(松本さん)まで

『世間遺産放浪記』

2007-05-31 09:48:10 | 良書紹介


またまた面白い本が刊行された。

著者は藤田洋三氏、別府在住のプロカメラマン。
氏の放浪記シリーズ「鏝絵放浪記」「藁塚放浪記」に続く三冊目。

まずは意表をつくタイトルが面白い。考えてみれば、“世間(せけん)”などと言う言葉自体も、若者的には今頃使うのかなぁ、という馴染み具合の現代。TVでワタオニ、つまり「渡る世間は鬼ばかり」という長寿番組があるから、何とか命脈を保っている言葉なのかも知れない。
ともかく、ブームと言っても過言ではない昨今の“世界遺産”に対する強烈なアンチテーゼを醸しているのは間違いない。岡目八目流に捉えれば、世界遺産は文化財のブランド志向、優劣順位がイメージされる傾向がある。
この本では、そうした分野には絶対入らないであろう、しかしとても気になる、無名の民が作り上げたモノが確かに周りに存在することを気付かせてくれる。

愛媛事例も多く取り上げられていて、石風社・刊の2300円。(247葉のカラー写真で構成されていてお買い得!?)

モーガン邸の本。【8】

2007-05-15 12:10:08 | 良書紹介


「湘南の名建築・旧モーガン邸はこうして残った」

今年2月に、「モーガン邸を守る会」によってやっと発刊された活動記録の本。
万人に読まれるよう、写真や図面なども豊富で読みやすく、工夫された本になっている。
募金運動を軌道に乗せ、さぁこれからという矢先の出来事。

建物は残念ながら不審火という不慮の事態によって焼失したが、守る会の活動ポリシーや多くの市民の尊い気持ちまでが消滅した訳ではない。
こうしたこれまでの地道な取り組みの軌跡を通して、また次なる展開方式に向けて頑張り時かも知れない。

中世から続いたドイツの町のように、第二次世界大戦で壊滅したにも関わらず、市民の努力で見事に復元復興した例もある。
人は時として、全く立ち直れそうに無い試練をママ受けることがある。このモーガン邸焼失の事件などはまさにそれで、「えっ、なんで?」の世界。
だからこそ、運動の更なる発展を祈るばかり。
一冊1200円のこの労作に、多くの人が共感して頂く事を願う。

ご要望の向きは、nokazaki@dokidoki.ne.jp (岡崎)までご連絡を。


「抜粋のつづり」 【7】

2006-03-28 08:50:17 | 良書紹介


先日、久しぶりにこの本を入手した。「抜粋のつづり・その六十五」。
津島町岩松商工会(宇和島市)にあるものを頂戴した。

これは知る人ぞ知るもの凄い本である。片手に納まるハンディタイプの冊子であるが、私にはこの本にちょっと思い入れがある。
かつて、「あけぼの」という地元建設会社の広報担当だった頃、私はこの冊子と出会いとても驚き感銘を受けた。発行元は株式会社熊平製作所。広島の宇品に本社のある金庫の会社である。今はどうか、確か以前は熊倉和雄?(人形劇「ひょっこりひょうたん島」の声優)を起用したCMがテレビで流れていたような。

ともかく、これは質実な金庫のメーカーから年一回発行されている冊子であり、つまり「その六十五」ということは、昭和6年からの発行(戦中戦後の混乱期を除く)で、今も続けられていてその歴史は75年に及ぶ。これは小・中学校や図書館を中心に全国8万ヶ所に無料配布されており、その部数ナンと45万部。
内容は、その年の新聞各紙や雑誌などから、人々の為になると思われる文章の抜粋で構成されている。この号では、新井満氏の「千の風と千の花」(読売新聞より)から田辺聖子氏の「お酒と口別嬪」(日本経済新聞より)まで新玉のエッセーが33編。

前述の「あけぼの」は、営業マンが地域へ無料配布するという形式を取っていたので、その編集にあたっては企業メセナやフィランソロフィーなどといった、企業の地域貢献について、それは仕事柄とても大切な関心事だった。20年ほど前にこの「抜粋のつづり」の存在を知った私は、戦前から既にそんなことをしていた企業があったことに驚愕した。しかもクマヒラの金庫。
私事にはなるが、本社のある広島の宇品には、学校を卒業して就職したジャスコ時代に住んでいたので(在住当時は知らなかった)、早速私は愛媛から連絡を取って熊平製作所を訪問した。そうすると、やはりと言うべきか、比較的地味な佇まいの工場から地味な感じで年配の方が出てこられ、応対していただいた。
聞けば、たった一人で編集し、全国に送り続ける作業をされているとのこと。信用第一の金庫製作会社で、連綿と続く企業メセナの真髄を見た瞬間だった。

因みにこの会社、今年で創業108年を迎えるという。ライプドアではないが、時代という厳しい経済変動の中で企業が生き残り、長きにわたって存続することの難しさを思うと、その長さは国内でも希少な企業の一つである。
「抜粋のつづり」は、その創業記念日(1月29日)を期して全国に配送される。

巻頭にある創業者の「創刊のことば」を記してみる。

『日頃の御好意に対して感謝の意を致したいと存じてをりますので、その一端として、このパンフレットを発行したしました。
 積極的消費論と学校教育の普及と改善、又宗教に現世の浄土化思想の必要は私の持説とする所で御座いますが、私の陳弁よりも、近頃読みましたものの内で、こうした方面における諸名士の御意見を紹介してみたいと存じまして編纂いたしました。 昭和六年霜月  熊平源蔵』


まちづくり冊子「舞たうん」【6】

2006-02-25 01:59:36 | 良書紹介


(財)えひめ地域政策研究センターという愛媛県の外郭団体が松山市にある。昔は(財)えひめまちづくり総合センターと言っていた。

そこの機関誌が写真の「舞たうん」。愛媛県内で頑張っている人やまちづくり情報をネットワーキングするために発行されている。年四回で、次回は第87号、4月1日発行である。
うっかりして原稿締め切り日が過ぎていたので、あわてて出したところだが、当方の担当枠は「歩キ目デス&足ラテス」VOL.35。県内ウォッチングの情報提供コーナーである。次回予告をすると、「目玉の散歩コース」として伊予市下吾川界隈を取り上げる。

「えひめ地域づくり研究会議」に入会されている方には自動的に配布されるが、それ以外の方には、県下20市町の自治体に配置しているので、そちらでご覧になることが出来る。また、キョービのことで言えば、研究センターのホームページからアクセスすることも可能である。昨年からカラー冊子となり見やすくなった。
ただし、行政が関与する定期刊行物の中には、その存在があまり知られずに地域の人に浸透していない場合もママあり、捨てられる場合も無しとは言えない。「舞たうん」をどこかで見かけたら、愛しく手に取っていただきたい、切に。

お問い合わせは、上記センターまで。(TEL 089-932-7750)

本の紹介【5】

2006-02-14 10:23:47 | 良書紹介


「日暮れ町風土記」永井愛・著、而立書房(¥1500)2002年1月発行

人生には、時々不思議なコトの起きる場面がある。
この本もそうした見えざる縁(えにし)により誕生した。
本の帯封には『「夢と現実」との乖離に関する演劇的「ジレンマ」の考察』と、何やらコムツカシイ書き方だが、中身は小説「坊ちゃん」よりもまだ柔らかい。

話は数年前にさかのぼる。ある時、脚本作家の永井さんという方が私の住む宇和へ訊ねて来られた。ひょんなことで、私がいつか書いた「魅惑の町・保内(エキゾティックストリート)」の文章をどこかで見られて、愛媛を題材にした芝居の構想として脚本取材するとのことだった。今思えば相手に失礼だが、半信半疑で対応したことを覚えている。芝居にはトンと門外漢な私は、永井さんがどれ程の方か、全く知らなかったのである。
そんなことも忘れかけてた半年、いや3、4ヶ月後くらいか、この本が完成し、芝居の上演も松山でされるというので、チケットとその案内状が送られてきた。その時の主催は松山市民劇場。またそれは、永井さんの主宰する二兎社の20周年記念公演として、全国縦断公演のひとコマでもあった。

芝居の方、それはそれは面白かった。主演は渡辺美佐子、他の役者さんのキャスティングの妙、飛び交う大げさな伊予弁、大黒屋(あたらしや)の舞台設定、解体か保存かの選択が迫られる中での旧家で起きるドタバタ劇。ほぉーっ!正直何も知らなかったワタシは驚いた。プロの手になると、町並み保存もこうなるのか、と。冒頭の帯封の文句ではないが、町並み保存というと、重いテーマに取られがち。そこを笑いとペーソスで見事な庶民劇として仕立てられていた。しかも日暮町のモデルは(八幡浜合併で今は亡き)保内町。やがてその本は、賞も受け(永井さんの書くものは殆ど何かの受賞をすることもその時知った)、以後アチコチの劇団で上演されてゆく。

今度も、東京吉祥寺の前進座で3月18日、劇団前進座付属養成所25期生修了公演として催される。(PM2:00~、PM6:00~、全席自由¥2000)
出演される女優の卵Sさんという熱心な方から、役作りとして元を知りたいとのアプローチがあり、私もその上演を知ることに。
いやはや、50年と少しのまだまだの人生の中で、愉快な不思議さという点で最右翼の彩りであるような。今もいくつかの保存に関わる自身を思うと、面映ゆくもこそばいエピソード紹介。

本の紹介【4】

2006-02-06 22:21:25 | 良書紹介


「国家の品格」藤原正彦 著  新潮新書 ¥680

久々に読んでスッキリ、の本。これまた読む人によって受け止め方も違うのかも知れないが、武士道を縦糸に、数学者らしい論理的展開をしつつ、その帰結が論理ではない所がイイ。右左の思想的心情ではなく、フツーに国を愛する心を持つ一人の著者の気持ちが切ない。
私は何度もソーダそーだ、とうなづきながら読んだのでした。
新田次郎と藤原ていの次男、という興味もありましたが。

いやぁ、「惻隠の情」なんて言葉もしばらく振りに目にしたナァ。いい日本語があるよ、日本には。