伊予市と宇和を行き帰りする間に、気になる石垣がある。R56号を伊予市から南下すると程なく犬寄(いぬよせ)峠に差し掛かり、やがて中山町(今は伊予市)となるのだが、左手に私好みの石垣がある。
いつも、車窓からそこにあることに満足しながら眺めて通り過ぎるのだが、フト写真に撮っておこうと立ち寄る。以前にも写しはしたが、デジカメでは初めて。緑泥片岩独特の袈裟懸け状の積み方である。特にここのは足元の立石使いが面白い。とある農家の屋敷地の造成石垣である。
是非ともいつ頃の石垣か、石工職人はどういう人物か、知りたいものだが、まだ聞き取りが出来ていない。この日も家人は留守であった。
東西に走る中央構造線が、旧双海町あたりで伊予灘にすべり込むが、ここはその南縁部にあたると思われる。例の別子銅山から佐田岬へと続く青石ベルト地帯である。地域観察をする上で、地層は重要なキーポイント。地域の風景・景観は、結構そうした地域素材で成り立っているものである。
石は重い、フツーに重い。従って、昔は特に遠くまで運ぶのは至難であった。その場にある石を積み上げ、屋敷地として生活の場が営まれた。段畑も棚田も、そうやって先人が一つ一つ築いてきた賜物である。こうした光景に宿る、先人の想いや費やされたエネルギーを想像すると、石垣とはまさに意志の積み重ねそのもの、スナワチ「意志積み」だと思うほかはない。