転車台と扇形車庫。
ここでは、ズラリと往年のSLが十数輌並び、実に壮観。しかも、その内の7輌は動態保存だから恐れ入る。
あの腹の底から響き渡る独特の汽笛の音を、何年ぶりに聴いただろう。もの哀しいような、しかし迫力満点の音が、石炭を焚く臭いと共に、ノスタルジーを呼び覚ます圧倒的な臨場感。
小学生の頃、予讃線で八幡浜から宇和へ、SLに乗った時は、そう暑い夏のある日。今のように車輌内に冷房がある訳ではないので、笠置トンネルまでは窓を開けていて、トンネルに入る手前で、皆一斉に窓を閉め(降ろし)、すると直ぐに車輌は蒸し風呂のようになる。しかしこのトンネルは結構長い。スピードも遅く、あえぎながら上る感じ。
それが、やっと明るくなり、トンネルを抜けると、皆どの座席でも窓を開け、その時に車輌内に吹き渡る、宇和盆地のアノ涼しい風の感覚を、岡目八目は忘れることが出来ない。トンネル内の暑さが暑さだったから、事の外涼しい一服の清涼感は、子ども心にも鮮やかなシーンとして今も甦る。
なお、転車台は、愛媛県内では、もう松山駅と宇和島駅の二箇所にしか残っていない。