「白秋」に想ふ―辞世へ向けて

人生の第三ステージ「白秋」のなかで、最終ステージ「玄冬」へ向けての想いを、本やメディアに託して綴る。人生、これ逍遥なり。

『ルバイヤート』

2008年06月26日 | Arts
『ルバイヤート』(オマル・ハイヤーム・作、小川亮作・訳、岩波文庫)
  11世紀ペルシャの詩人にして科学者・哲学者であったオマル・ハイヤームが歌った四行詩(ルバイヤート)143編が収められている。昨年、霊長類学の松沢哲郎さんが朝日新聞の書評で取り上げているのを見て買った。たしかにこれはなかなかいい。松沢さんは心がなごんだそうだが、その気持ちがわかるような気がする。いまパラパラとページをめくってみて目にとまったルバイヤートをいくつか書き抜いてみる。明日になればまた別のルバイヤートに目がいくかもしれないので、いま選んだルバイヤートには今日の自分の気持ちが表れているともいえるだろう。

  4
魂よ、謎を解くことはお前には出来ない。
さかしい知者の立場になることは出来ない。
せめて酒と盃でこの世に楽土をひらこう。
あの世でお前が楽土に行けるときまったはいない。

  41
一滴の水だったものは海に注ぐ。
一握の塵だったものは土にかえる。
この世に来てまた立ち去るお前の姿は
一匹の蠅―風とともに来て風とともに去る。

  45
時はお前のため花の装いをこらしているのに、
道学者の言うことなどに耳を傾けるものではない。
この野辺を人はかぎりなく通って行く、
摘むべき花は早く摘むがよい、身を摘まれぬうちに。

  49
幾山川を越えて来たこの旅路であった、
どこの地平のはてまでもめぐりめぐった。
だが、向こうから誰一人来るのに会わず、
道はただ行く道、帰る旅人を見なかった。

  87
恋する者と酒のみは地獄に行くと言う、
根も葉もない戯言にしかすぎぬ。
恋する者や酒のみが地獄に落ちたら、
天国は人影もなくさびれよう!

  108
迷いの門から正信まではただの一瞬、
懐疑の中から悟りに入るまでもただの一瞬。
かくも尊い一瞬をたのしくしよう、
命の実効はわずかにこの一瞬。

  141
もうわずらわしい学問はすてよう、
白髪の身のなぐさめに酒をのもう。
つみ重ねて来た七十の齢の盃を
今この瞬間でなくいつの日にたのしみ得よう?

そして、最後の一編。

  143

いつまで一生をうぬぼれておれよう、
有る無しの議論になどふけっておれよう?
酒をのめ、こう悲しみの多い人生は
眠るか酔うかしてすごしたがよかろう!


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