「白秋」に想ふ―辞世へ向けて

人生の第三ステージ「白秋」のなかで、最終ステージ「玄冬」へ向けての想いを、本やメディアに託して綴る。人生、これ逍遥なり。

数学と「京大理学部」の魔力にはまってみたら―『数字であそぼ。(1巻~10巻)』

2024年01月28日 | Science
☆『数字であそぼ。(1巻~10巻)』(絹田村子・著、小学館、2018年~2023年)☆

  久々にアマゾンでコミックを購入。それも大人買い。『数字であそぼ。』の1~10巻、税込5500円也。ちなみに『数字であそぼ。』であって『数学であそぼ。』ではない。前々から気になっていたので、思い切って現在出ている全10巻をまとめて買った。数学ネタをメインにした数学マンガのように見えるが、数学などまったくわからなくてもおもしろい。むしろ、数学の奥深い魅力あるいは魔力に取り憑かれた学生たちの生態が、ユーモアたっぷりに描かれていて興味深い。
  主人公は抜群の記憶力の持ち主。その能力を活かして、ノーベル賞受賞者を多数輩出している憧れの吉田大学理学部に現役合格で入学した学生。吉田大学理学部は言うまでもなく京都大学理学部がモデル。ところが、大学の数学の講義がまったく理解できず挫折感を味わい2留(2年留年)。何とか思い直して数学と向き合う日々を過ごし、数学専攻へ進学、さらに大学院へと物語は展開していく。
  主人公と関わる友人たちも「変人」揃いで、いかにも「吉田大学理学部」(つまりは京都大学理学部)らしさを醸し出している。巷間よく言われることだが、教師も学生も東の東大は「常識人」の集まりなのに対して、西の京大は「変人」の集まりである。そこに憧れて京大を目指す学生も少なくないとか。
  個人的には高校時代、漠然と湯川秀樹や朝永振一郎に憧れていたので京大理学部進学を夢見たこともあったが、もちろん学校の成績と見合うはずもなく受験したことはない。それでも、いまだに京大理学部には不思議な魅力を感じてしまう。「京大理学部」という言葉も一種の魔力を持っているのかもしれない。京大理学部に憧れている受験生ならば、このコミックを読んで、ますます恋い焦がれるようになる、かもしれない。
  扱われている数学ネタは、誰でも知っていそうなものから、初めて聞くものまで多種多様。一見簡単そうだが、その奥深さに驚かされることも多い。きちんと理解しようとすれば数学科へ進学しないと無理かもしれない。だからといって数学に拘泥する必要はない。ストーリー展開はユーモラスだし、「変人あるある」「京大あるある」「京都あるある」も満載。
  そんな読者はいないと思うが、このコミックを読んで、不得意だった数学が得意になることはない(と思う)。でも、ひょっとしたら、数学の魅力(魔力)に開眼する読者はいるかもしれない。著者の村田村子さんも文系出身で数学が苦手だったとのこと。しかし、数学ネタを書くことに決めてからは、数学科出身の人たちに取材して、数学のイメージが「何かとても固いもの」から「実はとてもやわらかいもの」に変わったという。同様の体験をする読者はいるかもしれない。
  それともう一つ、個人的な体験と重なるところがある。中年になって物理学を学ぼうと大学に再入学したとき、大学の「微分積分学」の授業がまったく理解できなかった。1年から2年へ進級するための関門科目だったので、これを落とせば確実に留年。いまは知らないが、わが学部は2年に進級できないと専門科目が履修できず、関門科目の再履修だけでさらに1年間過ごすことになりかねない。何とかごまかしてギリギリの成績で通過したが、まさしく薄氷を踏む思いだった。そんな懐かしくも苦い思い出を味あわせてくれるコミックだ。
  なお、本書は実在の京大理学部ともコラボしていて、その広報誌がウェブでも公開されている。
  ちょうど切りのよい10巻でまとめ買いしたが、これで連載が終わったわけではないようなので、11巻以降も出版されれば買うことになりそうだ。

  



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