「白秋」に想ふ―辞世へ向けて

人生の第三ステージ「白秋」のなかで、最終ステージ「玄冬」へ向けての想いを、本やメディアに託して綴る。人生、これ逍遥なり。

星月夜に照らされた山々の風貌―『山の星月夜』

2022年11月07日 | Arts
☆『山の星月夜』(菊池哲男・著、小学館、2008年)☆

※この記事は、2019年11月17日付けで「ブクログ」に掲載してあった記事を本ブログに移行した上で若干修正加筆し、新規投稿しました。

  北アルプスの山々と雲海、月、星、街の灯り(さらには雷光まで)が織りなす見事な写真の数々。星空に的を絞った、いわゆる「星景写真」とはまたちがった感動を覚える。残念ながら身体障害の事情で登山の経験はまったくないが、山々から見上げる星空やパノラマのような風景(とくに夜景)に憧れてきた。この写真集はその想いに応えてくれる希有な宝物となりそうだ。たまたまアマゾンで知り、マーケットプレイスで定価の約1/4(送料込み)という廉価で購入したが、新品で買っても後悔はしなかっただろう。
  著者の菊池哲男さんは立教大学で物理学を専攻した異色の経歴を持つ山岳写真家。子どもの頃にゴッホの「星月夜」を見て星に興味を持ち、それから天体観測に没頭してきたとのこと。そして星のきれいなところへ行きたいという思いが登山につながったという。菊池さんの思いは評者の想いでもある。
  あとがきで「日本には3000m級の山の直下に街があり、人々の暮らしがある。日本人の繊細な自然観を培ってきたのは、山と街の近さゆえと私は思っている」と菊池さんは書いている。他の「星景写真」とは一線を画し、ひと味ちがった感動を与えてくれた所以も、暮らしと自然の近さにあるのかもしれない。

  


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