「白秋」に想ふ―辞世へ向けて

人生の第三ステージ「白秋」のなかで、最終ステージ「玄冬」へ向けての想いを、本やメディアに託して綴る。人生、これ逍遥なり。

絵本で生命のリレー―『せいめいのれきし 改訂版』、『深読み! 絵本『せいめいのれきし』』

2018年12月31日 | Science
☆『せいめいのれきし 改訂版』(バージニア・リー・バートン・著、いしいももこ・訳、まなべまこと・監修、岩波書店)、『深読み! 絵本『せいめいのれきし』』(真鍋真・著、岩波書店)☆

  二回り以上も年下の畏友に教えてもらった絵本『せいめいのれきし』。その後、その解説本『深読み! 絵本『せいめいのれきし』』があることも知り、先月アマゾンでまとめて購入。最近何かと多忙で本を読むヒマがなかったが、ようやくこの年末3日間かけて約40億年の「生命の歴史」を読み終えた。
  『せいめいのれきし』は1964年初版(原著は1962年初版)というロングセラーの絵本で、この絵本を読んで恐竜や生命の進化に興味を持ち、専門の科学者になった人も少なくないらしい。刊行から半世紀が経ち、新たな研究成果も増えてきたため、2009年にアメリカで出版された改訂版を元にして、2015年に日本語版も改訂された。内容的には恐竜に関することが最も多いようで、その意味でも監修の真鍋先生は適任だろう。
  その真鍋先生が絵本を微に入り細をうがって解説したのが『深読み!…』である。絵本は芝居に見立てた絵物語の構成になっていて、それだけでも十分に楽しめる。友人の家で初めて見たとき、やはりその構成に興味を持った。しかし、芝居であれ映画であれ、見る側の目が肥えていなければ、何となく楽しかったというだけで漫然と見終えてしまう。各々の場面やシーンのどこに注目するべきか、主役や端役の演技や仕草の見所はどこか、さりげなく置かれた小道具の意味は何か、などを知るか知らないかでは楽しさも大違いだ。芝居のことは役者や芝居に関わりの深い人に聞くのが一番だろう。同様に恐竜のことは「恐竜博士」に聞くのが一番である。(一つだけネタばれを書くが、たぶんよく知られているブロントサウルスという恐竜の名前が改訂版には出てこない。しかし、再度登場する可能性もあるという)
  どこの博物館でも「恐竜展」があると子どもや家族連れが多数押しかける。恐竜ネタは宇宙ネタ以上に、博物館の定番である。自分はというと、宇宙オタク的なところは多少あると思っているが、恐竜オタクではまったくない。それでもこの絵本を見て『深読み!…』を読んでいると、博物館の恐竜関係の展示をあらためて見直してみたくなった。ちなみに『深読み!…』では、絵本の場面に関連して、真鍋先生の職場である国立科学博物館の展示も多数紹介されている。原著者のバートンさんは専門の科学者ではないが、8年間にわたって何度もアメリカ自然史博物館に通って『せいめいのれきし』を作り上げたという。真鍋先生によれば絵本の中でもそんなバートンさんらしい姿が垣間見られる(まさしく深読み!)。
  『せいめいのれきし』は絵本の読者である「あなた」に、いわば生命のバトンを渡すところで終わっている。この絵本を教えてくれた我が畏友は子ども頃にこの絵本を読み、いま彼の小さな子どもに読み聞かせている。この絵本が本当にバトンの役割を果たしている。他にもこのような親子や家族はいるにちがいない。人類や地球の未来は、我々高齢者から友人たちの若い世代の活躍に移り、やがてはいまはまだ小さな子どもたちへと託されていく。その厳粛なリレーを『せいめいのれきし』は教えてくれているように思う。

  

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