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◇企業システム◇クラウド型の方が自社運用型に比べ5倍近く早く提供可能との調査結果が出る

2009-05-25 09:16:24 | クラウド・コンピューティング

 【クラウドコンピューティング】米セールスフォース・ドットコムは、調査企業の米ニュークリアス・リサーチが実施した、クラウド環境でのアプリケーション開発と従来の自社運用型(オンプレミス型)環境でのアプリケーション開発に関する調査結果を発表した。これによると17社の調査結果により、JAVAや.NETよりも「Force.comプラットフォーム」の方が4.9倍早くアプリケーションを提供できることが判明した。また、継続的なサポート・コストでも大幅な削減効果(半減)があることが分かったという。 (セールスフォース・ドットコム:09年5月19日発表)

 【コメント】今回調査対象となった企業は次のようなところである。①既存のアプリケーションを「Force.com」へ移行した企業 ②従来の開発環境(JAVAと.NET)と「Force.com」を比較検討した結果、「Force.com」を導入した企業 ③「Force.com」導入企業と協業したシステム・インテグレータ ④従来の開発環境を比較検討した結果、「Force.com」を導入したISV(独立ソフトウェア・ベンダー)。

 これらの企業が何故従来の開発環境よりも「Force.com」環境の方が早いのか、その理由として次のような点を挙げている。①カスタム・オブジェクトを短時間で構築し、様々なプロジェクト間で再利用できる ②開発者がゼロから構築したりテストしたりする必要なしに、管理者用ツールとユーザ・インターフェイス機能を短時間で設定できる ③ワークフロー・エンジン「Force.com」のルール、フォーム、プロセスを迅速に設定し、カスタム・ワークフローをサポートできる ④データベース、データベース接続、アプリケーション・サーバ、セキュリティ・プロトコル、他のアプリケーション要素(ロード・バランスなど)を含め、「Force.com」は、事前定義済み、かつテスト済みの本番環境を提供するので、開発者に依存する技術戦略的判断が少なく済むとともに、短い時間のテストで本番環境へ移行できる 。

 クラウドコンピューティングは、NHKテレビなどでも一般のニュースとして取り上げるほど認知度が上がってきた。これまでは、どちらかというとクラウドコンピューティングの否定的な側面が強調されすぎた面がなきにしもあらずという感じもした。その最大な点はセキュリティであろう。社内の重要な顧客データを外部に出しても大丈夫か、という点である。また、特に中小企業がクラウドコンピューティング提供企業に業務を委ねると、企業経営の理念まで取られ、企業としての自立性が損なわれるのではないか、という点である。

 これらのクラウドコンピューティングが抱える問題点も、徐々に払拭され始めているようだ。例えばクラウドコンピューティングを、プライベートとパブリックに分け、重要なデータは企業内のプライベートなクラウドで処理すればセキュリティについては乗り切れる。また、企業の自立性についても、今徐々にクラウド上でサービスを提供するソフトベンダーが増加してきており、ユーザー企業はこれらの複数のソフトベンダー
から自由に選択できるという状況にかわりつつあり、十分に企業としての自立性は保てる状況になりつつある。もっとも大きいのは、当初米国でクラウドでのデータ漏洩問題が伝えられることもあったがその後あまり同様なことは起こっていないようだ。むしろ、クラウド以外でのセキュリティ問題が多発しており、クラウドに固有の問題ではない、といった意識が高まりつつある。

 日本のセールスフォース・ドットコムによると、2009年1月末日現在、 ユーザーは、 日本郵政グループ、 三菱 UFJフィナンシャル ・ グループ、 みずほフィナンシャルグループ、 損害保険ジャパン、 日立グループ、ジョンソン ・ エンド ・ ジョンソン、 小田急電鉄、 リロケーション ・ ジャパン を含み全世界で5万5,400社に達するという。そして、全世界のISVパートナーが開発したアプリケーションが750以上、ユーザーが開発したカスタムアプリケーションが11万以上に達している。

 現在のクラウドコンピューティングを見ていると、少し前のOSS(オープンソースソフトウエア)によく似ていることに気づく。OSSが登場したときは、全世界の複数の開発者がネットワークを通じて開発したソフトウエアなどは使い物にならないという意見が大勢を占めていた。ところが現在ではOSSを使わないでシステム構築をする方が珍しくなってしまっている。この調子だとクラウドも、導入していないユーザーの方が珍しい時代が近い将来到来するかもしれない。(ESN)