深キ眠リニ現ヲミル

放浪の凡人、中庸の雑記です。
SSなど綴る事アリ。

ひなたの日常⑥(後)

2006年08月10日 | 小説/SS
八月十日晴。

 今日は、この夏始まって以来の猛暑になった。僕はいつものように、朝飯をまだ涼しいうちにほおばり、まだ日が浅いのに、げんき一杯のおひさまは、すでに恐ろしくらいの直射日光を放っていた。
 そのはた迷惑な光から逃げるようにして、影伝いで僕は東光寺に急いだ。
 まだ、誰も来ていなかった。お陰でゆっくり昼寝が出来る……

 おっと、そうだった。昨日の話の続きをするのだったか。ひかるの話は、前後不覚だった。いろいろ整理してみたが、やっぱりわからないことが多い。

 はじまりはこうだ。

「海に行かないか」
 例のテスト勉強会の時にコウスケがキョウコに言った。丁度、キョウコの差し入れのシュークリィムを平らげた後だ。
「え?」
 キョウコはほどほどに熱い紅茶を飲みかけて動きを止めた。
 結構な長い事時間が止まったらしい。ツクツク法師が一フレーズ鳴き終わるくらいの間だろうか。紅茶が冷めてしまうくらい長い事ではなかった筈だ。
「海?」
 キョウコは普段滅多に見せないような表情をして聞き返した。まぁ、それがどんなもんか僕にはわからない。ひかるによれば珍しいものだったらしい。僕は日本足の連中に興味なんてないので、その表情を説明されても分かったかどうかはわからない。
「ああ」
 コウスケはややあって、頷いた。キョウコの反応を変に思ったのだろう。
 キョウコは色んなことが頭にあったのかもしれない、というのはひかるの言葉だ。それがどんな事なのかは、詳しくわからない。
「あ、んーそんな時期だね」
「そうそう、テスト明けだしさっぱり泳ぎたいじゃん」
 コウスケはクリームがついた口の端っこを拭きながら、テストのことなんて忘れて、太陽の光で一杯の海岸を想像してたような顔つきをしてた、……ってよくわかるよなぁ。
「ふーん」
「トオルにマサシ、それにカオリも行くってさ」
「ま、コウスケがちゃんとテストを乗り切れたらの事だけど。補習でもあったら、そんな暇ないでしょ」
 キョウコは立ち上がって、カップを片付けに勉強部屋の裏手にある台所に向かった。
「大丈夫だって、その為に優秀な家庭教師もいるし」
「それなら、それなりの時給をちょうだい」
 キョウコはさあ続きをはじめよう、といわんばかりに戻ってくるなり、参考書を手に取った。
「だから、その代わりにってことでさ」
 コウスケもキョウコに促されるようにして、カップを片付けに行った。
「なんにせよ、期待は禁物な気がする。なにせ前期は赤手前だったコウスケのことだし」
 そう答えたキョウコは、視線を下に落とし、聞こえないくらいの小さな溜息を漏らした。この日は、そんな風にして、結局その話は立ち消えになった。

 その後、丁度テストの終わった頃の話だ。僕は、避暑地めぐりで、放蕩を続けていたし、もともとコウスケの行動の十分の一も知らない程度の付き合いなので、その話も全てひかるに聞いたものだ。
 その頃、改めてコウスケはキョウコを海に誘う事を考えていたらしい。その日、昼を過ぎた頃にやってきた。
「なんとか赤点は免れたよ」
 コウスケはキョウコに会うなり挨拶代わりに、自慢げにそういった。自慢にならない気もするが。
「優秀な家庭教師のお陰でね」
「そうそう、だからそのお礼も兼ねて海水浴&BBQ大会なんてどうかな」
 コウスケは長く暖めてきた卵から生まれたひよこでも、見せるような嬉しそうな声だった。
「メンバーはこの前の連中とかな。費用は俺が持つ事になったんだよ」
 コウスケは相変わらず嬉しそうに喋り続けた。
「ふうーん」
 キョウコの声は変らなかった。コウスケも少しするとその様子に気づいて、自分の期待していた反応を見せないキョウコを不思議に思った風に首を捻った。
「なんか興味なさそー」
「ん、いや、そんなことないよ」
 キョウコはいつもの明るい表情で返した。でも、それはどこか不自然だった、とひかるは言う。
「そっか。じゃあ……」
 それでも、キョウコは曖昧に返した。コウスケはどうも納得がいかなかった。
「あ、ひょっとして都合がわるかったか」
「ごめん」
 キョウコは短く答えた。このとき既にキョウコは夏風邪だった。僕は知っていた。コウスケは知らなかった。ひかるが主張するには二足の連中のオスも、我々のオスも自分ばかりしか見ていないということだ。なんのことか分からない。たまにひかるの言う事は意図をつかめない。誰か丁寧に解説して欲しい。

 ここまでの話は、単なる日常ありうることなのだが、僕を不安にさせるにはまだまだだ。そうなると、ここから先が一番「不安」にさせるもので、僕にとって一番不明な点が多い話の流れになる。
 予定では海に行く事になっていた日のことだ。この日は昼から雨になり、キョウコは相変わらず風邪だった。
 その朝はキョウコはまだだいぶ体調が悪く、くしゃみを繰り返したり、鼻を気にしたりしていた。かと思えば、ベッドに寝転がって、お腹が痛いのか、何度も繰り返しさすっていた。そのたびに小さく溜息をついていた。
 ひかるは気の毒に思って、キョウコのお腹の上に乗って暖めてやった。
 僕から言わせれば、そっちのがよっぽど気の毒だろうな。
 二足歩行類はどういうわけか、嘘が嫌いらしい。それが必要なものであろうと、どうしようもないものだろうと嫌いらしい。僕らにはその点は、賛同しない。結局、僕たちはどうあっても誰かと騙しあいをして、生き抜いていかなきゃならない。その為には騙す事も正しい。だけれども、彼らは彼らだ。でも、薬と毒の区別くらいはもうちょっとした方がよいと思う。
 キョウコはその日、一人きりだった。昼に料理する気力も起きず、冷蔵庫にも何もなかったため、コンビニに行った。それが、まずかった。いや体調が悪くなったとかではなく、気持ちが。
 コンビニの帰り道でキョウコは、コウスケに出くわした。
 キョウコは薄ピンク色のカーデ重風のカットソーに深い色のジーンズといった格好だった。髪の毛も普段と変らず、おしゃれに梳かしてあった。
 それが、逆に災いした。
「キョウコ?」
 コウスケの声は強張っていた。
 振り向いたキョウコはとっさに反応できなかった。
「今日って」
 キョウコは答えを持っていなかった。生まれつき正直だったから。
「あ、今日はね」
 そのまま、何も言えずに目を泳がせていた。
「……」
 今度はコウスケの方が黙ってしまった。一体どうしたのだ。
「ごめん」
 キョウコは溜めていたものを、吐き出すみたいに言った。
「どうして」
 コウスケは真っ直ぐにキョウコを見た。ひかるは目を細めてそれを見ていた。そのひかるにも痛いほど真っ直ぐな目だった。
「ごめん」
 キョウコはやはり短く言った。キョウコの中にどういうものがあったかは、僕にはまるで想像できないが、その場から逃げ出したいと思っていたと思う。
「やっぱさ」
 とコウスケ。今度はコウスケの方も目を背けていた。キョウコを真っ直ぐ見ることは出来なかった。
「俺、嫌われてんのかぁ」
 コウスケはあっけらかんと言った。でも、これはコウスケらしくないな、と僕は思う。
「そうじゃない」
 キョウコは、強く否定した。
「いいよ。別に」
 コウスケはいつもは無条件で受け入れるキョウコの言葉を、遠ざけた。なるほど、二足歩行類は厄介だ。本当にそう思う。
「コウスケ……」
 キョウコはそれ以上何も言わなかった。
 コウスケもキョウコに何も聞こうとはしなかった。
「俺、帰るよ」
 コウスケは足早に去った。ひかるはやはり細い目で、見送った。

 僕がひかるの家にいったのが、次の日だ。コウスケが、妙な嘘をついた日で、僕が初めて「不安」を尻尾に感じた日だった。
 僕はこの話を聞いて、ほとんどが不明のことだけど、「不安」がどういうものかは薄っすらと感じた。
 何れにしてもあまり気持ちのいいものではない。

 ここまで整理したら、あの日の「不安」は大体説明がついたように思う。けれど、その後は、どうなったのか。ひかるはその事は喋らなかった。お陰で、一時忘れていた「不安」が俄かに僕の喉に引っかかって気持ち悪い。

「ひなた、お前は気楽だな」
 コウスケは嘘をつく前の晩にそんな風にいいながら、僕の毛並みを手でなでた。はっきりいって余計なお世話だ。どうしてそんなことを言われなきゃならないんだ。いくらコウスケが命の恩人だとしても、僕をまるでその辺の白猫のやつと一緒にされるのはなんだか、嫌だ。
「あーあ。なにやってんだ俺」
 知るか。
「お前もキョウコの猫も仲いいよな。全くいいよな」
 ひかるという名だ。それに仲がいいというのは、お前の目は節穴か?
 ああ、確かにひかるがいっていたように、二足の連中のオスはどうやら自分の事しか見えていないらしいな。
「にゃー」
 僕はとりあえず鳴いてやった。これが二足の大半が僕に求める答えである。それ以上は何も求めない。僕も答えるつもりはない。
「気楽なやつめ」
 僕は目いっぱいコウスケの胸板に殴りかかる。さほど利いていない。くすぐったがっている程度だろうか。
 しばらく、コウスケは僕と徹底的に遊んだ。何も言わずにひたすらに。
「なぁ、ひなた」
 なんだよ。
「キョウコのシュークリームまた食べたいよな」
 コウスケは一言一言ゆっくりと言った。
「にゃー」
 どんな問いだろうと僕はこう答える。それが、僕に求められている答えだから。
 この言葉には、嘘も本当もない。肯定でも否定でもない。
 もちろん、僕はシュークリームは食べたいわけだが。
 コウスケはわずかに笑った。
 おい、ハクに似たか?だいぶ気障にみえるぞ、やめとけ、似合わない。
「そうか」
 何を納得したか知らないが、とりあえずシュークリームがもらえればいい。
 今思えば、このやりとりも今回聞いた一件のなかで、何か一つの部分なのかもしれない。今更僕は思い出した。あのときは別に気にならなかったが、今になるとなんとなく分かる。
 コウスケは答えを見つけたんだ。

 その後どうなったかは、まだ判明しないがそろそろ東光寺も暗くなってきた。夕飯を食べに帰ろう。
 僕は砂利の坂道を下っていった。いい香りがした。動物の肉の香だ。僕の大好物である。特にあの皮のついた棒状のやつはなかなかいける。
 匂いに誘われて垣根の隙間を抜けていくと、いつの間にかひかるの家にたどり着いた。僕はお構いもなく、家にお邪魔した。たまにはここでご馳走になってもいいだろう。
 板張りの廊下を曲がって、奥の土間に降りると、声が聞こえた。
「……ああ……も変ら……これじゃ……」
 声が反響して聞き取りづらい。近づいてみる。
「はぁ、あと500グラム落ちないかなぁ……ふぅ」
 なんの話だ?隙間から覗いてみる。キョウコだ。四角い板状のものに乗っている。確か、体の重量をはかるものだったか。
 キョウコは、近くの棚においてある何かを手に取った。
 貝殻だ。きれいに白だけの貝殻だ。ギザギザも規則的できれいだ。
 キョウコはそれをじっと眺めている。
「コウスケ」
 どうして、そこであいつの名前が?
「あーあ。なに意地張ってんだろ私」
 なんのことかさっぱりわからない。
「にゃー」
 ちなみにこれは僕の声ではない。
 ひかるがのっそりと背後から現れた。
「あれは、コウスケが持ってきた貝殻よ」
 とひかるはキョウコの近くに進み出ながら言った。
「コウスケが?」
「よっぽど仲直りしたかったんのね」
「……」
「コウスケがもっとキョウコをちゃんと見ていれば、こんないざこざもなかったのに、つくづくオスってば……」
 おいおい、それは僕も含まれているような気がするのは、僕の考えすぎなのだろうか。
「キョウコもキョウコね。なんでも意地を張ったりするから……体重なんて気にしないが一番いいわ」
 ひかるは悟り切ったような顔つきだ。……というかひかるは気にした方がいいだろ。というのはあまりに僕にとって不利益になる言葉なので腹の中に収めておこう。
 それはともかく、正直に言おう。僕にはこの一件はどうにもさっぱりだ。これが二足歩行類の複雑なところなのか。嬉しがったり、不安だったり、恥ずかしがったり、誇らしかったり、信じたり、疑ったり、全く忙しいことこの上ない。

ひなたの日常⑥(前)

2006年08月09日 | 小説/SS
八月九日雨。

 コウスケが戻ってきたのは、学校に行くという意味不明の嘘をついてから三日たった日だった。
 それから今の間までどういうことがあったかは知らないが、僕の尻尾に届いていた不穏な気配ももうなくなっていて、どうやらもう、その嫌な感じは過ぎ去ったのかもしれない。
 僕はそんなことお構いなしに、いつものように、一家の一員として、飯にありつき、散歩ばかりして日々を過ごしていた。その間僕の尻尾が感知した、不安というのはすっかり飛んでいた。それが彼ら二足類と僕らとの知恵の違いじゃないだろうか。
 それに、どんな事があろうと僕は決して、僕のスタイルは変えないことにしている。ただ一つ食料の確保という問題以外は僕らは、「気まま」というスタイルを保つ。よくわからない不安に付き合う程、僕も暇じゃあない。
 あくまでも気ままに生きるんだ。

 僕はふとしたことから、例の不安の元を聞くことになった。
 僕は夏本番になってからというもの、毎日のように東光寺に出向いていた。確かに、ヒカルとハクの、テレビのなんたらという芝居みたいな、大袈裟で繊細な会話を聞いているのは、苦痛でなかったことはなかった。けれども、そこには、この町の他のどこでも得られないくらいの、素晴らしい涼しさがある。差し引きして、なんとか会話の苦痛に耐える方がましだった。そのくらい、暑い毎日だ。
 だから、その苦痛な会話が、僕が前に気に掛かっていた出来事を解決するものだと知ったとき、東光寺は夏一番の一日へと変った。
 そう、それこそまさに今日なのだ。

「あなた本当に何にも知らないんだわね」
 ヒカルはいつもの嫌味っぽさを、上手く笑顔のオブラートに包んで僕に投げかけた。それでも、全然いつもと変わりなく感じたのは僕だけだろうか。
「キョウコが苦しかったのは夏風邪だけじゃないわ」
 ヒカルはハクに目で何か語りかけ、そんな風に切り出した。
 ハクは気障な仕草で、とことこと寺の奥の方へ行ってしまった。ふん。

 今日は眠いのでこれくらいにしよう。ヒカルがハクに対しての外面を捨てて喋った事は、少しばかり整理する時間が必要だ。あいつの話はバラバラだから、今ここにそのまま話すには幾らか僕が配慮に欠いたように思われてしまうだろう。
 そういうことで、続きは明日。

今週の借本

2006年08月07日 | 日記
 中央図書館に行く。二週間に一度行くのは、なかなか愉快である。目当てのものはそんなになかったから、今回は読んだ事のない系統に挑戦するとうことで、チョイスしました。

・ヘミングウェイ『誰がために鐘はなる』(下)
・E・クイーン『三角形の第四辺』
・吉田直『トリニティ・ブラッド』~嘆きの星
・吉田直『トリニティ・ブラッド』~サイレント・ノイズ

 とりあえず、今週はいつになく時間がなさそうだ。そんなに読めないかもな。

花火

2006年08月05日 | 日記
 花火を久しぶり……ほぼ一年ぶりにした。やっぱりロケットは楽しいな。あの軌跡が素晴らしい
 去年は確か調子に乗りすぎてTシャツを一枚穴あきにしてしまった
しかし、そんなことなぞ忘れて楽しんだなぁ。
 ああ、そうそういつだかは飲み会の途中で花火を始めた時にある人と調子に乗りすぎて、手持ちロケットなどを繰り返していたら、他の人がいつの間にかいなくなっていた思い出がある。

 ロケットのやりすぎは、人の心も地上に置いて行ってしまうね(ここ笑うとこ

 閑話休題。自爆台詞は放っておいて。
 花火にはもう一つ思い出があります。それは私が去年かいた脚本にありまして、最終的には「少年時代」というタイトルにしたのですが、仮タイトルで「花火」と銘うったので、花火と聞くとそのことを思い出します
 ちなみに当初のタイトルは「仮想異世界における……(以下略)」というやたらと長いタイトルでした
 この作品を詳しく知りたい方はご面倒ながら、ブックマークの「虹のゆくえ(仮)」の<ユメモノ>[脚本]にお入り下さい。「はりこのとらの穴」にもございます。
 この作品は演劇として、去年の大学祭で上演されました。他にも二回ほど上演依頼があったのですが、残念ながら観にいけなかった……
 
 はっきりって私は演劇に関してはまだまだ素人で、声を大にして「好きだ」とさけべるほど大好きなものではない。ただ、私は仲間と何かを作ろうというものに参加したいというだけだった。だから、脚本は書いても演出しようとは思わなかった。
 そして、この「少年時代」(旧題「花火」)もそうだった。私は演出につかなかった。私の満足は自分の世界を完璧に表現することじゃない。たとえ、それをしたところで、所詮ちっぽけな凡人中庸の世界。ただの一人よがり。
 今思えば、自分を完璧に仕上げることではなく、人の力を借りて、自分を補完、超越して成長したいというのが、私の根底にあったのだと思う。
 だからか、私は毎度脚本を書いて、それが上演されると、それはそれは嬉しかった。
 そこには私一人の力ではなく、役者やら演出のちからがあって、作品は私の思惑を超えて成長する。それが楽しかった。
 私は自分は完璧には程遠い人間だと自認するところだが(モチ完璧な人間などいようはずもないがね)、自分の足りないものを沢山もっていう人が大勢いること知った。
 ひとつを挙げれば衣装であったり。また、役者の具体的な動きやポーズであったりとか、自分の至らないところが結構カバーされたりしていたのだった。
 脚本はそれ自体が完成品ではない。それが実行されて形になるものだ。音響だって、役者だって、照明だってそれだけでは未完成なのだ。
 その日、その場所で、その人たちが、というのが演劇であるのだ。付け加えるなら、そのお客様たちも、ということだ。
 これが、他の媒体にはない舞台ならではという、味である。
 それも私はこの三年半の間で様々な形で教えられた。
 
 そんなことをふと思った

以上
 

近頃

2006年08月04日 | 日記

 近頃の私の悩みと言えば、猫を見かけると歩調が緩まり……やがて止まってしまうこと。
 どうしてだろう、最近急速に猫が好きになっていく
 
 お、そこのあなたいい質問ですね

「君は猫じゃなくて猫耳少女がすきなんじゃないのかい?」

 そうきましたか……

 しかーし

BUT!!
However


 私はあくまでも、猫がすきなのですよ。

 そこんとこは勘違いされると心外です。(辛亥革命です)

「猫耳少女? なんですかそれは……」
 という程のピュアさはないが、猫耳少女よりも猫が好きなのは揺るがない。
 なんと言われようが、世間に糾弾されようがテレアサで徹底討論されようが、私は猫が好きなのだ。

 もう一度声を大にして言おう


 猫が好き!!!

 ま、そんなわけで最近どうにも猫をみると遊びたくなるんですよね。彼らからしたら迷惑な話かもしれませんがね。

そんなわけで、今日も一日お疲れ様でした

皆様深キ眠リにようこそ・・・・・・・・・・・・


レコード

2006年08月03日 | 今日の一曲
 この曲を本日挙げたのには、意味があります。
二日連続のこのコーナーか
ま、そのことは後半に書くことにして、取りあえず詳細からいきたいと思います。

 Something ELseのアルバム『502』に収められている一曲であります。
私がこの一曲を気に入っている理由と言えば、一度だけ行ったことのあるライヴでこの曲に引き込まれたからでした。私は初めてで戸惑っていましたが、他のお客さんはノリノリでした。


    帰りたい もしできるなら

    面影が またよぎってる

    ぐるぐると 止まらないレコードのように


 何事もそういうものですが、二度と戻らないものってありますよね。ことわざにも「覆水盆にかえらず」なんていいますもんね。たいていのことが不可逆ですからね

   
    君は僕だけのものだったと

    信じれば信じるほど 嘘だと知った


 なんだか、ドラマで出てくる主人公の敵役にあたるヒロインの婚約者の苦悩みたいな感じですよ……。せつな過ぎます。
 そしてずっと繰り返されるレコード、残酷に何度も何度も繰り返す。それが一層この曲における「僕」の苦悩を象徴しています。
 この曲で彼はまだ「答えもな」い状態で「二度目の夏」に「同じ場所」を訪れています。こうして、彼は答えを見つけることはかなうのでしょうか。
 この曲ではそれは分かりません。そこにあるのは、ただ今確かに存在している、自身のうちにある苦悩を受け止めているのです。


 さて、さきほど述べましたが、今日この曲をあげたのには意味があると言いましたね。
 本日先程ニュースを見ていましたら、実はSomething ELseが……十月下旬のライブを最後に解散するということが書かれていました。
……………………
 そうそれを思ってこの記事を書きました。なんの曲にしようか迷いましたが、これにしました。ビデオテープもよかったな。
 一番いいのは感謝のうたでしたけれど、どうにもそういうのがあったかな……てな具合でして、結局コレをご紹介しました。


 ちょうど十周年ですね彼らは。時期的にはそういう頃なのかもしれません、それぞれの道を歩む時期。
 それがどうなるかは、分からないが、私は陰ながら見守っていきたいと思っています
 それでは最後に……

 またいつか会おう
 
 世界果てで……

 深き夢路の果てで……

 遠い国の虹のふもとで……

 
 決まった

 てねーよ

ハチミツ

2006年08月02日 | 今日の一曲
 
 ということで
 本日からは曲に対するなんらかのコメントをしていきたいと思います。


 一応紹介からしておくと、歌い手はスピッツ。収録されているのは確か同名のアルバム『ハチミツ』だったよね。
 最近話題の「ハチミツとクローバー」のCMを見ていたら、なんとなく歌いたくなって最近専らこればっか歌ってる。てか、映画みたいな~。
 確かアニメ一作目のしょっぱなに流れてた気がする。作者はスピッツ好きなのだろうか、そんなことを思いました。
 僕がこの曲を知ったのは中学生くらいのときかな。当時僕は殆ど音楽に関心がなくて、たまたま姉に貸してもらったのが、アルバム『ハチミツ』だったのです
 一応その前にアルバム『空の飛び方』は持っていたけれど、『ハチミツ』は衝撃だったなと思う。まず、このハチミツは聴いた瞬間引き込まれてしまって、アルバムでは専らこれとルナルナを聞いてたなぁ

 

     すてきな恋人ハチミツとかしてゆく

     こごえる子犬をあたためて

     なつかしい遊びがよみがえるのは

     あかりの場所まで綱渡りしたから


 当時の僕には歌詞はさっぱりだったような気がするけど、それが何だかピンときたんだなぁ、これがまた


     おかしな恋人ハチミツとかしてゆく

     ちょうちょ結びをほどくように

     珍しい宝石が拾えないなら

     ふたりのかけらで間に合わせてしまえ


 この二番のサビが一番好き
 厨房ながらにすごい
 すごいよ○サルさんとか思ったからね

 ルナルナに関してはそのうち書きましょうかね。前にあげた曲も、新たに触れたいと思います。
 では、また




冬×株式会社×指輪

2006年08月01日 | 小説/SS
 社長をよろしくね。

 それが彼女の最期の言葉だった。私にとってその言葉が、ずっと全てを支えていたような気がする。
 うむ。そうだ。それがなければ、私はとうに、このなれたこげ茶色のミズナラでできた机の前からいなくなっていただろう。
 彼女は純粋無垢な笑顔でそう言ったのだ。私が彼女の言葉を受け入れぬ事など不可能だった。昔からそうだった。大学時代、講義の終わった午後の頃から何にも変っていない。憮然とする四郎と、その傍で小鳥のような可愛らしい声で彼をからかう彼女、そして私……。
「栄治くんは本当に優しいものね」
 何をした時だか忘れたが、彼女はそう言った。
 でも、これは私への賞賛ではなく、四郎に対する当て付けだった。私はそうだとわかっていても、嬉しかった。また二人の為に何かしたいと思った。
 そうだ。ずっと私は彼女の言葉には弱かったのだ。

 私は久しぶりに自室に戻って、全面ガラス張りの窓から外を眺めた。街行く人の足はいつになく早い。空は曇天で、風が冬の尖兵として、街の人々の熱気を吸い込んでいった。
 部屋には暖房が効いていて、とても暖かい。上着を着ていると暑くさえ感じる。でもどうしてか、落ち着けず私は上着を羽織ったままつい手を温めるように、手に暖かい息を吐いた。
 私たちは20年前にこの会社を創立した。主にファーストフードのチェーンを手掛けている。それも私たち三人だからこそできたのだった。彼女のいつもの料理がヒントになり、彼の閃きを私が具体的に検討していった。その結果がこの都心にそびえたつ本社ビルであり、銀色の専務のプレートである。
 後悔はしていない。私たちはずっと前をみて走ってきたのだから、後ろなど見なかった。今からすれば懐かしい日々だった。
 今はこうして立ち止まって前にも進まずに、ただ迷っている。
 私を支えたのはただ一つ彼女の言葉だった。
 
 私はついに念願の指輪を買った。学生時代に入った宝石店で、彼女が不意に足を止めたディスプレイの中にある、小さなダイヤの埋め込まれたシンプルなリング。私はついに手にしていた。彼女は、あの頃さんざん指のサイズを言って、僕らを困らせていたな、と思ってつい微笑が零れた。
 私は彼女を愛していた。運命とはこのことだろうと、不信心な私も信じたのは彼女の存在だった。そして、その私と同じように運命を信じたのが四郎だった。私たちは互いに競って、彼女を愛した。彼にはそういう自覚はなかったかもしれない。でも、確かに彼は舞台に上がっていた。私と同じように彼女を求めていた。
 指輪を渡す時、私はついにこのときが来たのだと思った。長年追い求めていた時がついに来たのだと思った。
 
 結婚します。

 そういった内容の葉書が届いたのは彼女の誕生日の前日だった。
 気づいていた。私は知っていた。いつかこうして、私は選ばれないことを。しかし、認めたくはなかった。認めたら私はもう、いられなかったから。
 分かっていたのだ。彼女が彼をずっと見つめているのを。

 会社が軋みだしたのは、彼女が亡くなってから三年の後だった。経営が停滞し、外因によって私たちの会社は、砂の城のようにあっという間に崩れ去った。
 もうこの景色も見納めか。そう思うと色々な出来事が頭を占有する。三人で駆け抜けた素晴らしい日々が。振り返る事も迷う事もなく進んだ純粋な日々。私たちはいつからかなくしていたのかもしれない。後ばかりを振り返り、過去にしがみつき、昔思い描いていた明日はすっかり色あせていた。
 
 社長室をノックする。返事はない。ゆっっくりとその扉を開く。背中を向けて立っている四郎をみると白髪がだいぶ増えている印象があった。
 私も彼の方に歩いていく。外は夕暮れ。風はまだ止まない。
 私たちはお互いに目を交わさずに外を見続けた。
 彼はゆっくりと指輪を外し、ポケットに入れた。
 
 私たちに残された時間はまだある。