品詞という概念についてです。以下、見ましょう。
(1)走る、飛ぶ、寝る、生きる、立つ
(1)にあるような日本語の語群は、ある共通性をもっていると言えます。それは、例えば、「トムは ~」という表現に続けることが可能である、ということです。「トムは走る」、「トムは飛ぶ」、などといったようにです。そして、(1)の語群を、文法の世界では、「動詞」と呼んでいます。
(2)忙しい、すばらしい、醜い、賢い、ひどい
今度は、(2)にあるような日本語の語群ですが、これらも、(1)の語群と同じ共通性をもっていると言えます。やはり、「トムは ~」という表現に続けることが可能で、「トムは忙しい」、「トムはすばらしい」、などといったようにです。では、(2)の語群も、「動詞」と呼べるかというと、そうではありません。(2)の語群は、文法の世界では、「形容詞」と呼ばれています。
(1)と(2)の語群は、どちらも、「トムは ~」という表現に続けることが可能であるにもかかわらず、「動詞」と「形容詞」というように、別々の分類を受けているわけです。じゃ、(1)と(2)は、それぞれ、どこに、独立した共通点があるのか、ということになりますが、それは、語尾の部分にある、と言えそうですね。
(1)の「走る」は、「走るー」と語尾を伸ばして発音すると、その語尾の音が、「う」になります。同様に、「飛ぶー」、「寝るー」、「生きるー」、「立つー」など、他の語も、語尾を伸ばして発音すると、その語尾の音が、「う」になります。しかし、一方、(2)の語群は、語尾を伸ばして発音しても、「う」の音にはなりません。
そのかわり、(2)の語群は、語尾が全部、「い」で終わっている、という共通点があります。これで、(1)の語群と(2)の語群では、それぞれに独立した共通点があるのが発見されました。そんなわけで、日本語の場合、動詞と形容詞の違いは、語尾の「音」にあると結論付けることになってしまいましたが、この識別方法が、英語にストレートに当てはまるのか、ということになります。
(3)run (走る)、fly (飛ぶ)、sleep (寝る)、live (生きる)、stand (立つ)
(4)busy (忙しい)、wonderful (すばらしい)、ugly (醜い)、smart (賢い)、terrible (ひどい)
(3)の語群は、それぞれ、(1)の日本語の語群 (動詞) に対応した英語が並んでいます。そして同様に、(4)の語群は、それぞれ、(2)の日本語の語群 (形容詞) に対応した英語が並んでいます。もちろん、一目瞭然ですが、「ランー」、などと伸ばして発音しようが、「フライー」などと伸ばして発音しようが、どうにも、語尾になど、共通点なんてありそうもないのがわかります。
つまり、英語(3)と英語(4)の語群を分ける、それぞれの独立した共通点を、語尾の「音」になど求めることは不可能なんですね。じゃ、そもそも、英語では、品詞なんて概念が存在するのか、という話になってしまいますし、さらに、(3)と(4)の場合って、分類できるのか、ということになるんですが、これが、辞書などで調べると、ちゃんと、(3)は全部、動詞で、一方、(4)は全部、形容詞というように、品詞によって、きれいに分かれているんです。
(5)Tom runs. (トムは走る。)
(6)Tom is busy. (トムは忙しい。)
そこで、今度は、(3)と(4)の語群の単語の前に、それぞれ、‘Tom’という表現を置いてみましたが、(5)の動詞‘run’の場合は、別の単語を介することなく、前に‘Tom’を置けますが、一方、(6)の形容詞‘busy’の場合は、そうではなく、‘is’を介さなければ、‘Tom’を前に置けません。もちろん、(3)の単語に関しては、全て、‘Tom’を直接、前に置けます。そして、一方、(4)の単語は全て、‘is’を介さなければ、‘Tom’を前に置けません。
この‘is’は、文法的には、「‘be’動詞」という名前がついていて、ここから、‘is’は動詞の1つとして扱われていることがわかります。つまり、日本語とは違って、英語の場合、形容詞は、動詞とセットで使わなければ、文にすることができないわけですね。
こういったことを考えると、日本語の動詞や形容詞は、個々の単語がもつ共通の特徴 (語尾の音) から、即座にどちらであるかを分類できるのに対して、一方、英語の動詞や形容詞は、個々の単語自体がもつ共通の特徴がなく、どちらであるかを、即座に分類できない、ということになります。
この品詞分類のしやすさという点では、ハッキリ言ってしまえば、日本語の方が優れたコトバであり、英語は、動詞と形容詞の違いを、辞書などで確かめてから、逐一暗記するということしなければなりません。
しかし、全くもって暗記オンリーでしか対応できないものなのかというと、そうでもありません。大ざっぱには、(4)に示されているとおり、日本語と英語の動詞、形容詞には、「意味」の上での対応が見られるからです。つまり、意味的な側面からは、大方、日本語と英語は、同じ品詞で対応しているんですね。
ですので、日本語の動詞である場合は、英語でも、動詞であることが多く、そして、日本語の形容詞である場合は、英語でも、形容詞である場合が多いわけです。ただ、絶対視することは禁物なんですが。では、以下を見ましょう。
(7)want (欲しい)
(8)different (違う)
(7)の、英語‘want’は、辞書では、動詞として扱われていますが、日本語の「欲しい」は、語尾が「い」ですから、形容詞です。一方、(8)の英語‘different’は、辞書では、形容詞として扱われていますが、日本語の「違う」は、「ちがうー」と伸ばすと、「う」になりますから、動詞です。ですので、(7)や(8)のように、品詞がきれいに対応しているわけではないケースもあります。
今回のポイントは、動詞と形容詞から見た、日本語と英語の品詞の概念の違いです。どちらにも品詞という概念は、とりあえず、存在するものの、その在り方に関しては、お互いに、随分と異なる識別方法が用いられている、ということです。
辞書などなくても、動詞や形容詞が即座に判断できる日本語と、一方、そうはいかない英語、という大きな違いはありますが、初歩的なやり方として、まず辞書などで調べてから、例文といっしょに記憶していくというのが、実用面の能力を高める上でも、大切です。ここは、初心者の方には辛いところですが、踏ん張りどころですね。
■注 :日本語ほどの一般性はありませんが、英語にも、特定のグループに関しては、動詞や形容詞に、共通した語尾がないわけでもありません。‘realize’「悟る」、‘organize’「編成する、構成する」、‘apologize’「謝罪する」、などの‘-ize’という語尾は、動詞であることを示す目印になりますし、一方、‘beautiful’「美しい」、‘wonderful’「すばらしい」、‘shameful’「恥ずかしい」、などの語尾である‘-ful’は、形容詞であることを示す目印になります。
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(1)走る、飛ぶ、寝る、生きる、立つ
(1)にあるような日本語の語群は、ある共通性をもっていると言えます。それは、例えば、「トムは ~」という表現に続けることが可能である、ということです。「トムは走る」、「トムは飛ぶ」、などといったようにです。そして、(1)の語群を、文法の世界では、「動詞」と呼んでいます。
(2)忙しい、すばらしい、醜い、賢い、ひどい
今度は、(2)にあるような日本語の語群ですが、これらも、(1)の語群と同じ共通性をもっていると言えます。やはり、「トムは ~」という表現に続けることが可能で、「トムは忙しい」、「トムはすばらしい」、などといったようにです。では、(2)の語群も、「動詞」と呼べるかというと、そうではありません。(2)の語群は、文法の世界では、「形容詞」と呼ばれています。
(1)と(2)の語群は、どちらも、「トムは ~」という表現に続けることが可能であるにもかかわらず、「動詞」と「形容詞」というように、別々の分類を受けているわけです。じゃ、(1)と(2)は、それぞれ、どこに、独立した共通点があるのか、ということになりますが、それは、語尾の部分にある、と言えそうですね。
(1)の「走る」は、「走るー」と語尾を伸ばして発音すると、その語尾の音が、「う」になります。同様に、「飛ぶー」、「寝るー」、「生きるー」、「立つー」など、他の語も、語尾を伸ばして発音すると、その語尾の音が、「う」になります。しかし、一方、(2)の語群は、語尾を伸ばして発音しても、「う」の音にはなりません。
そのかわり、(2)の語群は、語尾が全部、「い」で終わっている、という共通点があります。これで、(1)の語群と(2)の語群では、それぞれに独立した共通点があるのが発見されました。そんなわけで、日本語の場合、動詞と形容詞の違いは、語尾の「音」にあると結論付けることになってしまいましたが、この識別方法が、英語にストレートに当てはまるのか、ということになります。
(3)run (走る)、fly (飛ぶ)、sleep (寝る)、live (生きる)、stand (立つ)
(4)busy (忙しい)、wonderful (すばらしい)、ugly (醜い)、smart (賢い)、terrible (ひどい)
(3)の語群は、それぞれ、(1)の日本語の語群 (動詞) に対応した英語が並んでいます。そして同様に、(4)の語群は、それぞれ、(2)の日本語の語群 (形容詞) に対応した英語が並んでいます。もちろん、一目瞭然ですが、「ランー」、などと伸ばして発音しようが、「フライー」などと伸ばして発音しようが、どうにも、語尾になど、共通点なんてありそうもないのがわかります。
つまり、英語(3)と英語(4)の語群を分ける、それぞれの独立した共通点を、語尾の「音」になど求めることは不可能なんですね。じゃ、そもそも、英語では、品詞なんて概念が存在するのか、という話になってしまいますし、さらに、(3)と(4)の場合って、分類できるのか、ということになるんですが、これが、辞書などで調べると、ちゃんと、(3)は全部、動詞で、一方、(4)は全部、形容詞というように、品詞によって、きれいに分かれているんです。
(5)Tom runs. (トムは走る。)
(6)Tom is busy. (トムは忙しい。)
そこで、今度は、(3)と(4)の語群の単語の前に、それぞれ、‘Tom’という表現を置いてみましたが、(5)の動詞‘run’の場合は、別の単語を介することなく、前に‘Tom’を置けますが、一方、(6)の形容詞‘busy’の場合は、そうではなく、‘is’を介さなければ、‘Tom’を前に置けません。もちろん、(3)の単語に関しては、全て、‘Tom’を直接、前に置けます。そして、一方、(4)の単語は全て、‘is’を介さなければ、‘Tom’を前に置けません。
この‘is’は、文法的には、「‘be’動詞」という名前がついていて、ここから、‘is’は動詞の1つとして扱われていることがわかります。つまり、日本語とは違って、英語の場合、形容詞は、動詞とセットで使わなければ、文にすることができないわけですね。
こういったことを考えると、日本語の動詞や形容詞は、個々の単語がもつ共通の特徴 (語尾の音) から、即座にどちらであるかを分類できるのに対して、一方、英語の動詞や形容詞は、個々の単語自体がもつ共通の特徴がなく、どちらであるかを、即座に分類できない、ということになります。
この品詞分類のしやすさという点では、ハッキリ言ってしまえば、日本語の方が優れたコトバであり、英語は、動詞と形容詞の違いを、辞書などで確かめてから、逐一暗記するということしなければなりません。
しかし、全くもって暗記オンリーでしか対応できないものなのかというと、そうでもありません。大ざっぱには、(4)に示されているとおり、日本語と英語の動詞、形容詞には、「意味」の上での対応が見られるからです。つまり、意味的な側面からは、大方、日本語と英語は、同じ品詞で対応しているんですね。
ですので、日本語の動詞である場合は、英語でも、動詞であることが多く、そして、日本語の形容詞である場合は、英語でも、形容詞である場合が多いわけです。ただ、絶対視することは禁物なんですが。では、以下を見ましょう。
(7)want (欲しい)
(8)different (違う)
(7)の、英語‘want’は、辞書では、動詞として扱われていますが、日本語の「欲しい」は、語尾が「い」ですから、形容詞です。一方、(8)の英語‘different’は、辞書では、形容詞として扱われていますが、日本語の「違う」は、「ちがうー」と伸ばすと、「う」になりますから、動詞です。ですので、(7)や(8)のように、品詞がきれいに対応しているわけではないケースもあります。
今回のポイントは、動詞と形容詞から見た、日本語と英語の品詞の概念の違いです。どちらにも品詞という概念は、とりあえず、存在するものの、その在り方に関しては、お互いに、随分と異なる識別方法が用いられている、ということです。
辞書などなくても、動詞や形容詞が即座に判断できる日本語と、一方、そうはいかない英語、という大きな違いはありますが、初歩的なやり方として、まず辞書などで調べてから、例文といっしょに記憶していくというのが、実用面の能力を高める上でも、大切です。ここは、初心者の方には辛いところですが、踏ん張りどころですね。
■注 :日本語ほどの一般性はありませんが、英語にも、特定のグループに関しては、動詞や形容詞に、共通した語尾がないわけでもありません。‘realize’「悟る」、‘organize’「編成する、構成する」、‘apologize’「謝罪する」、などの‘-ize’という語尾は、動詞であることを示す目印になりますし、一方、‘beautiful’「美しい」、‘wonderful’「すばらしい」、‘shameful’「恥ずかしい」、などの語尾である‘-ful’は、形容詞であることを示す目印になります。
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