生きている人達へのケアを！

　二度目の被災地入り。
今回の一番の目的は叔父叔母いとこ達の安否確認の為。
実家の片づけに目処がだった訳ではないが、だけどチクチクと喉に刺さった肴の骨のように
いつまでも放置できるものではない。汚泥の撤去は一日目だけにして
翌日、避難所から母を連れ出し隣町に向かった。

　国道沿いにある従妹の家は南側の門や離れが跡形もなく母屋の壁は剥ぎ取られ
台所、茶の間が向きだしになっていたが、柱はきっちり全部残っていた。
「流石、叔父ちゃんが拘って建てただけあるね～」と発した後
この場で言うべき事ではなかったと反省した。
従弟と次男はガレキの片づけに余念がない。今年中学生になる次男は目の前の中学校をみながら
「あそこも痛んじゃって危ないんだって！」
防風林もなぎ倒され体育館はバスケットコートから下の部分がえぐり取られ
校庭は泥でまだぬかるんでいた。ゴールポストはどこへ流されたのか見あたらない。
「でも、兄ちゃんと連絡取れたから・・・・よかったよ」
京都で仏像彫刻の修行をしている長男と連絡取れたことがこの家族の何よりの朗報となっている。
「おばちゃ～ん　良かった～　やっと会えたね」
従妹は避難所生活をしつつ　そこでボランティアをしている。

　２階まで津波に飲み込まれ、２階の押入で水が退くまでの４日間を過ごした叔父夫婦が
国道から１００ｍ程中に入った所の娘家族の家に身を寄せていると聞いた。
行けども行けども同じ様にガレキに囲まれた家がどこまでも続いている。
この辺りは新興住宅地で同じ様な家が建ち並び、なかなか探し出せない。
見つけられないまま車を走らせていると、避難所となっている小学校へたどり着いた。
支援物資が配られる日らしく、人と車でごった返していた。
校庭には物資の段ポールが堆く積まれ、その脇にはガレキも堆く積まれていた。

　母の実家は夏になると海水浴場となる海岸のほど近くにある。
祖父が別荘として作った所を仙台の家が空襲で失い疎開したままここに住み着いている。
防波堤は巾１０ｍに渡ってえぐり取られ、防風林はなぎ倒され、信号機はもう１回揺れると
地面に届きそうなほど傾き、電柱はへし折られ電線はぐちゃぐちゃに絡まり
家々は跡形もなく流されガレキすら残っていない。
みんな押し黙ったまま時間だけが過ぎていった。
キョロキョリ辺りを見回して暫く実家の家を探していた母が
「どこも同じ風景だから　もう帰ろう」の声に皆我に返った。
ネットの情報によると　デイサービスに行っていた叔母は助かったようだけど
叔父従弟家族の消息は掴めていない。無事でいることを祈るばかりだ。

　満身創痍、心身共に疲労困憊で帰途につく。
瞼は腫れ上がり、喉はガラガラ、顔の皮膚はガサガサ、ヒリヒリ。
これからガレキ除去に行く時は防護服が必要かも？
断水が続いている被災地では手洗いもままならない。人々は給水場に群がる。
赤ちゃんと２リットルのペットボトル１本を抱えた若いお母さんを
３歳くらいの男の子が５００ccのペットボトルを大事そうに抱えて追いかける。
全て流されてしまった此処では空ペットボトルも貴重品。
ベビーカーも自転車も流されてしまったので此処まで来るのも時間掛かるし
こどもが歩ける限界だと言う。

　義捐金の一時的な使い方が決まった様だが本末転倒している。
頑張って生きていこうとしている人達より、壊れた家や亡くなった人々が優先されている。
支援を受ける時も自分の不運な境遇を大声で主張できる厚顔な大人達が優先され
現実何が起きたのかも把握できないで、瞳を涙で一杯にして、口を真一文字に結んで
黙って耐えている子供達のことは蔑ろにされている。
　日本の政府はこれまでに国民を必死に守ってくれたことがあっただろうか。
北朝鮮の拉致事件以来ずーと「どうせ・・」と思っている。
政治家は選挙民の方しか見てないことも知っている。
利権がないところで政治家が動くはずもない。
今回だけ、お願いします。なんて言わない。世界中の人達の思いやりにすがって
国民だけで復興していくだろう。何にもしなくて良いですから
復興の足を引っ張ることだけは辞めてもらいたい。
遠く離れたところからシラーとした涼しい顔で「がんばって～」って手を振ってくれていればいい。
世界中から寄せられた善意の義捐金の全てを頑張っている人々の為だけに使って欲しい。
何とか会の理事の給与に充てたりするような馬鹿な事は決してしないで欲しい。
　今朝のＴＶで財源は年金から捻出するかも知れないと軽ーく言っていた政治家がいたけど
不要な特殊法人への税金投入をたった一年間辞めるだけでも１０兆円が捻出できるはずでは？？

日本人としての良心をみせてほしい！


ｂｙ　Ｇ／Ｔ