http://digital.asahi.com/articles/ASH8T5VXCH8TPLZU005.html
2020年東京五輪のエンブレムがベルギーの劇場ロゴに似ていると指摘されている問題で、アートディレクター佐野研二郎さんの案を選んだ審査委員の代表、永井一正さん(86)が、現在公表されているものは応募案を一部修正したものだと明かした。騒動後、永井さんが取材に応じるのは初めてで、「ベルギーの劇場ロゴとは似ていなかった」と述べた。
永井さんは日本を代表するグラフィックデザイナーの一人で札幌冬季五輪のシンボルマークを手がけた。
審査委員は、ほかにグラフィックデザイナーの浅葉克己さんら7人。永井さんによると、応募104案は作者名を伏せた状態で番号だけで審査し、3案に絞った後、議論の結果、佐野さんの案が選ばれた。他の2案は原研哉さんと葛西薫さんによるものだった。
審査では「五輪とパラリンピックのエンブレムが互いに関連しつつ区別がつくかどうかや、メディアやグッズ、会場で使われる際の展開可能性も検討された」という。
その後、大会組織委員会が佐野さんの案を商標登録するために、世界中の商標を確認。永井さんは「(原案と)似たようなものがほかにあったようだ。そのため佐野さんの案は、元のイメージを崩さない範囲でパーツを一部動かすなど、組織委の依頼で何度か微修正された」とした上で、「最初の案は(類似性が指摘されている)ベルギーの劇場ロゴとは似ていなかった。盗作ではない」と話した。
組織委によると、ベルギーの劇場ロゴは商標登録されていなかった。修正されたものを各審査委員も確認し、発表されたという。
永井さんは「個人的には、ほかの応募案や審査の過程も公表した方がいいと思う。これまで組織委からはコメントしないように言われていたが、これ以上勘ぐられるのはよくないということで、『もう話してもらっていい』と言われていた。このエンブレムがCMなど色々な形で使われてゆけば、よさが伝わると思う」と語った。
■永井一正さん「シンプルな形、似やすい」
2020年東京五輪のエンブレム問題で、審査委員代表を務めたグラフィックデザイナーの永井一正さん(86)が、アートディレクター、佐野研二郎さんのエンブレムは一部修正したもので、応募段階の当初作はベルギーの劇場ロゴマークと似ていなかったことを明かした。永井さんとの一問一答は次の通り。
――審査はどのように行われたのか。
大変力のこもった案が集まった中から、名前を伏せた番号だけの状態で投票と議論を重ね、3点が残った。その段階でも佐野研二郎さんや原研哉さんの作品だとは分からなかった。
佐野さんの案は、五輪とパラリンピックのエンブレムが兄弟の関係のように重なり、グッズやデジタルメディア、会場での展開可能性も含めて選ばれた。最初の案は少し違っていた。
――最初の案が違っていたとは?
佐野さんの案に決まった後、商標を調べたところ、ほかに似たようなものがあったようだ。そのため、最初のイメージを崩さない範囲でパーツの位置を一部変えるなどの微修正を、大会組織委員会の依頼で何度か施した。審査委員に修正過程は伝わっていないが、皆さん最終案を承認したはずだ。だから最初の案はベルギーの劇場ロゴとは似ていなかった。盗作ではない。
――今のエンブレムとベルギーの劇場ロゴは似ていないか。
三角や四角といった幾何学的な形や、活字を中心にしたシンプルなデザインの場合、似たものや見覚えのあるものが存在しやすい。一方でマークの場合、シンプルでないと強さがない。そのことは審査でも議論になった。
ただ、TとLを組み合わせたベルギーのロゴと、五輪への道を示すような黒い柱を軸に、二つのエンブレムの関係も考えた現在の案では考え方も成り立ちも異なり、違うものといえる。
――佐野さんがデザイン監修をしたサントリービールの景品の一部で、第三者のデザインを写したことが発覚している。
あれは盗作だと思う。スタッフの仕事の過程を把握できていなかったのだろうが、佐野研二郎の仕事として世に出す以上、全責任がある。もっと慎重になるべきだった。ただ、エンブレムは全く別の仕事で区別すべきだ。エンブレムは正当なものだと思う。
――このエンブレムは今後、国民から愛着を持ってもらえるだろうか。
佐野さん個人が作ったものだが、もはや世に出て公のものになっている。CMなどの形でどんどん使われれば、その良さが分かってもらえるだろう。個人的には、応募されたほかの案や審査の過程も公表した方がいいと思う。
■選考と微修正の経緯、説明を
選ばれた案に微修正を加えることについては、驚きと違和感を覚える向きもあるだろう。一方で、グラフィックデザイナーの松永真さんは、「考案者と依頼者双方が新しい知恵を加えていくのはよくあること」と話す。同様の見方をするデザイン関係者は多い。
1964年東京五輪の際に故・亀倉雄策氏が手がけたような、明快な形が目に飛び込んでくるデザインを求める人もいるはずだ。
「今回も含め、形の求心力より、展開という遠心力を求めるのが、近年のデザインの傾向だ」と指摘するのは、藤崎圭一郎・東京芸術大准教授だ。紙媒体中心だった前回の東京五輪の時代と異なり、グッズや映像、空間での展開も踏まえてデザインが選択されやすい、という意味だ。
他方、今回のような「似ているのではないか」という問題になると、多くの人の意識は、形に集中しやすい。今回、見る側とデザイン界の潮流のギャップが現れた、というのが藤崎さんの見立てだ。
であるならば、永井さんも求めるように、大会組織委員会はほかの案や審査の過程を明らかにすべきだろう。その際、ただ「似ていない」と示すだけでなく、どのような考え、筋道で佐野さんの案を選び、どのような理由で微修正を加えたのか、現代のデザインのあり方も分かるように説明することが望ましい。そうした過程も含め、デザインを公募した意味といえる。(編集委員・大西若人)
感想;
「佐野さんの案に決まった後、商標を調べたところ、ほかに似たようなものがあったようだ。」
「(原案と)似たようなものがほかにあったようだ。そのため佐野さんの案は、元のイメージを崩さない範囲でパーツを一部動かすなど、組織委の依頼で何度か微修正された」
ぜひ、当初案を開示して欲しいと思います。佐野氏も問題ないと言われるなら、開示して説明されたらよいと思います。
このインタビュー記事を読むと、「最初の案も他に似ていたので修正した」とのことで、最初の案が他のデザインをヒントにされたのでは?との疑問がでてきました。それも修正が必要なほど似ていたとのことです。
次に最初の案はベルギーの劇場のデザインと似ていなかったが、修正を加えたら似てしまったとのことなら、修正の段階でベルギーの劇場のデザインからヒントを得たのではなないかとの疑問も生じました。
他で盗作や真似した方が、いくらあれは盗作でも真似でもないと言っても、人の感情はなかなかそう思えないです。
既に一部のCMでデザインが使われていますが、出るたびに盗作疑惑が頭に浮かんでしまいます。せっかくの東京オリンピックが盗作疑惑で始まるような印象です。とても残念です。
2020年東京五輪のエンブレムがベルギーの劇場ロゴに似ていると指摘されている問題で、アートディレクター佐野研二郎さんの案を選んだ審査委員の代表、永井一正さん(86)が、現在公表されているものは応募案を一部修正したものだと明かした。騒動後、永井さんが取材に応じるのは初めてで、「ベルギーの劇場ロゴとは似ていなかった」と述べた。
永井さんは日本を代表するグラフィックデザイナーの一人で札幌冬季五輪のシンボルマークを手がけた。
審査委員は、ほかにグラフィックデザイナーの浅葉克己さんら7人。永井さんによると、応募104案は作者名を伏せた状態で番号だけで審査し、3案に絞った後、議論の結果、佐野さんの案が選ばれた。他の2案は原研哉さんと葛西薫さんによるものだった。
審査では「五輪とパラリンピックのエンブレムが互いに関連しつつ区別がつくかどうかや、メディアやグッズ、会場で使われる際の展開可能性も検討された」という。
その後、大会組織委員会が佐野さんの案を商標登録するために、世界中の商標を確認。永井さんは「(原案と)似たようなものがほかにあったようだ。そのため佐野さんの案は、元のイメージを崩さない範囲でパーツを一部動かすなど、組織委の依頼で何度か微修正された」とした上で、「最初の案は(類似性が指摘されている)ベルギーの劇場ロゴとは似ていなかった。盗作ではない」と話した。
組織委によると、ベルギーの劇場ロゴは商標登録されていなかった。修正されたものを各審査委員も確認し、発表されたという。
永井さんは「個人的には、ほかの応募案や審査の過程も公表した方がいいと思う。これまで組織委からはコメントしないように言われていたが、これ以上勘ぐられるのはよくないということで、『もう話してもらっていい』と言われていた。このエンブレムがCMなど色々な形で使われてゆけば、よさが伝わると思う」と語った。
■永井一正さん「シンプルな形、似やすい」
2020年東京五輪のエンブレム問題で、審査委員代表を務めたグラフィックデザイナーの永井一正さん(86)が、アートディレクター、佐野研二郎さんのエンブレムは一部修正したもので、応募段階の当初作はベルギーの劇場ロゴマークと似ていなかったことを明かした。永井さんとの一問一答は次の通り。
――審査はどのように行われたのか。
大変力のこもった案が集まった中から、名前を伏せた番号だけの状態で投票と議論を重ね、3点が残った。その段階でも佐野研二郎さんや原研哉さんの作品だとは分からなかった。
佐野さんの案は、五輪とパラリンピックのエンブレムが兄弟の関係のように重なり、グッズやデジタルメディア、会場での展開可能性も含めて選ばれた。最初の案は少し違っていた。
――最初の案が違っていたとは?
佐野さんの案に決まった後、商標を調べたところ、ほかに似たようなものがあったようだ。そのため、最初のイメージを崩さない範囲でパーツの位置を一部変えるなどの微修正を、大会組織委員会の依頼で何度か施した。審査委員に修正過程は伝わっていないが、皆さん最終案を承認したはずだ。だから最初の案はベルギーの劇場ロゴとは似ていなかった。盗作ではない。
――今のエンブレムとベルギーの劇場ロゴは似ていないか。
三角や四角といった幾何学的な形や、活字を中心にしたシンプルなデザインの場合、似たものや見覚えのあるものが存在しやすい。一方でマークの場合、シンプルでないと強さがない。そのことは審査でも議論になった。
ただ、TとLを組み合わせたベルギーのロゴと、五輪への道を示すような黒い柱を軸に、二つのエンブレムの関係も考えた現在の案では考え方も成り立ちも異なり、違うものといえる。
――佐野さんがデザイン監修をしたサントリービールの景品の一部で、第三者のデザインを写したことが発覚している。
あれは盗作だと思う。スタッフの仕事の過程を把握できていなかったのだろうが、佐野研二郎の仕事として世に出す以上、全責任がある。もっと慎重になるべきだった。ただ、エンブレムは全く別の仕事で区別すべきだ。エンブレムは正当なものだと思う。
――このエンブレムは今後、国民から愛着を持ってもらえるだろうか。
佐野さん個人が作ったものだが、もはや世に出て公のものになっている。CMなどの形でどんどん使われれば、その良さが分かってもらえるだろう。個人的には、応募されたほかの案や審査の過程も公表した方がいいと思う。
■選考と微修正の経緯、説明を
選ばれた案に微修正を加えることについては、驚きと違和感を覚える向きもあるだろう。一方で、グラフィックデザイナーの松永真さんは、「考案者と依頼者双方が新しい知恵を加えていくのはよくあること」と話す。同様の見方をするデザイン関係者は多い。
1964年東京五輪の際に故・亀倉雄策氏が手がけたような、明快な形が目に飛び込んでくるデザインを求める人もいるはずだ。
「今回も含め、形の求心力より、展開という遠心力を求めるのが、近年のデザインの傾向だ」と指摘するのは、藤崎圭一郎・東京芸術大准教授だ。紙媒体中心だった前回の東京五輪の時代と異なり、グッズや映像、空間での展開も踏まえてデザインが選択されやすい、という意味だ。
他方、今回のような「似ているのではないか」という問題になると、多くの人の意識は、形に集中しやすい。今回、見る側とデザイン界の潮流のギャップが現れた、というのが藤崎さんの見立てだ。
であるならば、永井さんも求めるように、大会組織委員会はほかの案や審査の過程を明らかにすべきだろう。その際、ただ「似ていない」と示すだけでなく、どのような考え、筋道で佐野さんの案を選び、どのような理由で微修正を加えたのか、現代のデザインのあり方も分かるように説明することが望ましい。そうした過程も含め、デザインを公募した意味といえる。(編集委員・大西若人)
感想;
「佐野さんの案に決まった後、商標を調べたところ、ほかに似たようなものがあったようだ。」
「(原案と)似たようなものがほかにあったようだ。そのため佐野さんの案は、元のイメージを崩さない範囲でパーツを一部動かすなど、組織委の依頼で何度か微修正された」
ぜひ、当初案を開示して欲しいと思います。佐野氏も問題ないと言われるなら、開示して説明されたらよいと思います。
このインタビュー記事を読むと、「最初の案も他に似ていたので修正した」とのことで、最初の案が他のデザインをヒントにされたのでは?との疑問がでてきました。それも修正が必要なほど似ていたとのことです。
次に最初の案はベルギーの劇場のデザインと似ていなかったが、修正を加えたら似てしまったとのことなら、修正の段階でベルギーの劇場のデザインからヒントを得たのではなないかとの疑問も生じました。
他で盗作や真似した方が、いくらあれは盗作でも真似でもないと言っても、人の感情はなかなかそう思えないです。
既に一部のCMでデザインが使われていますが、出るたびに盗作疑惑が頭に浮かんでしまいます。せっかくの東京オリンピックが盗作疑惑で始まるような印象です。とても残念です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます