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「black Box(ブラックボックス)」伊藤詩織著 ”警察&検察は誰の味方か?/泣き寝入りさせられている女性が多い”

2022-12-31 23:44:55 | 本の紹介
・生きていると、本当にいろいろなことがある。想像もしていなかったこと、小説の中の話、遠い誰かの身に起こった話だと思っていたことが。

・私は、ジャーナリストを志した。アメリカの大学でジャーナリズムと写真を学び、2015年の帰国後は、ロイターのインターンとして働き始めた。そんな矢先、人生を変えられるような出来事があった。

・なぜ、私がレイプされたのか? そこに明確な答えはない。私は何度も自分を責めた。ただ、これは起こったことなのだ。残念ながら、起こったことは誰にも変えることができない。
 しかし、その経験は無駄ではなかったと思いたい。私も、自分の身に起きて初めて、この苦しみを知ったのだ。この想像もしていなかった出来事に対し、どう対処すればいいのか、最初はまったくわからなかった。
 しかし、今なら何が必要なのかわかる。そしてそれを実現するためには、性暴力に関する社会的、法的システムを、同時に変えなければいけない。・・・
 私自身が恥や怒りを持っていたら、何も変えることはできないだろう。だから、この本には素直に、何を考え、何を変えなければならないかを、書き記したいと思う。
 繰り返すが、私が本当に話したいのは、「起こったこと」そのものではない。 
「どう起こらないようにするか」
「起こってしまった場合、どうしたら助けを得ることができるのか」
という未来の話である。それを話すために、あえて、「過去に起こったこと」を話しているだけなのだ。

・二合目を飲み終わる前に、私はトイレに入った。出て来て席に戻り、三合目を飲んだ記憶があるのだが、それを飲んだかどうかは覚えていない。そして突然、何だか調子がおかしいと感じ、二度目のトイレに席を立った。トイレに入るなり突然頭がくらっとして蓋をした便器にそのまま腰かけ。給水タンクに頭をもたせかけた。そこからの記憶はない。

目を覚ましたのは、激しい痛みを感じたためだった。薄いカーテンが引かれた部屋のベッドの上で、何か重いものにのしかかられていた。
 頭はぼうっとしていたが、二日酔いのような重苦しさはまったくなかった。下腹部に感じた裂けるような痛みと、目の前に飛び込んできた光景で、何をされているのかわかった。気づいた時のことは、思い出したくもない。目覚めたばかりの、記憶もなく現状認識もできない一瞬でさえ、ありえない、あってはならない相手だった。・・・
こちらに向けた(PCの)画面の角度から、直観的に「撮られている」と感じた。
 私の意識が戻ったことがわかり、「痛い、痛い」と何度も訴えているのに、彼は行為を止めようとしなかった。・・・ここは山口氏が滞在しているホテルだと気づいた。

・山口氏は、「パンツくらいお土産にさせてよ」と言った。・・・
「今まで出来る女みたいだったのに、今は困った子どもみたいで可愛いね」と山口氏が言った。 
 一刻も早く、部屋の外へ出なければならない。パンツをようやく渡され、服を急いで身にまとった。

・都内に借りていた部屋へ戻ると、真っ先に服を脱いで、山口氏に借りたTシャツはゴミ箱に叩き込んだ。・・・
 シャワーを浴びたが、あざや出血している部分もあり、船はシャワーをあてることもできないほど痛んだ。自分の体を見るのも嫌だった。

・私が甘いのかもしれない。こんな風に蹴られても、耐えるべきなのかもしれない。そのくらいでなければ、この仕事(ジャーナリスト)は続けていけないのかもしれない。魔が差したように、そんな考えが頭をよぎった。
 しかし、そんなことを受け入れていたら、自分を失ってしまっていただろう。

とにかく緊急なので、モーニングアフターピルだけでも処方して下さい、と必死で頼み、何とか診察室に入ることができた。・・・。婦人科にもレイプキット、つまりレイプ事件に必要な検査が受けられる証拠採取の道具一式が用意してあったら、早い段階で対応ができるだろう。

デートレイプドラッグのことを思いついた。ニューヨークでは「飲み物から目を離すな」と言われるが、これは犯罪から身を守る上での常識だった。まさか、安全だと思い込んでいた日本で、そんな目に遭う可能性があるとは想像もしていなかったのだ。
 インターネットでアメリカのサイトを検索してみると、デートレイプドラッグを入れられた場合に起きる記憶障害や吐き気の症状は、自分の身に起きたことと、驚くほど一致していた。

・原宿署に一人で出かけたのは、4月9日だった。事件から5日が経過していた。

・それから二日後、4月11日に、再び原宿署を訪ねた。・・・。A氏の応対は、原宿署の捜査員より、ずっとハードだった。
「一週間経っちゃったの。厳しいね」
いきなりこう言った。そして、
「よくある話だし、事件として捜査するのは難しいですよ」
と続けた。やっとの想い出警察を訪ね、スタートラインに立てたと思っていた私にとって、それはあまりに残酷な言葉だった。・・・
「こういう事件は刑事事件として難しい。直後の精液の採取やDNA検査ができていないので、証拠も揃わなくて、かなり厳しい」
と繰り返すA氏に、
「ホテルがわかっているのだから、防犯カメラだけでも調べて下さい。映像の保存期間が過ぎてしまう前に行っ下さい」
と私は懇願した。

・確認した映像には、タクシーから降りる山口氏の姿が映っていた。しばらく傍に立っていた山口氏は、やがて上半身を後部座席に入れて私を引きずり出した。そして、歩くこともできず抱えられて運ばれる私の姿を、ホテルのベルボーイが立ったまま見ていた。・・・
 この映像を見て、初めてA氏は事件性を認めたようだった。しかし、それでもA氏は言い続けた。
「相手は有名で地位もある人だし、あなたも同じ業界で働いているんでしょう。この先この業界で働けなくなるかもしれないよ。今まで努力してきた君の人生が水の泡になる」

A氏は繰り返し、私の将来について懸念する言葉をかけ、被害届の提出を考え直すように言った。

・初めて弁護士に相談し、いくつかの問題点を整理することができた。ここで教えてもらったのは、
 ・準強姦事件の証明に必要な争点は二点。性交したか。合意の上かどうか。
 ・検察官に相談したところ、いきなり、「証拠がないので逮捕状は請求できない。被害者が被害届を出すのは自由だが、任意で呼び出して相手の言い分を聞き、事件として送検して終わりになる」と言われた。

・山口氏からのメール
「あなたが準強姦の主張しても、あなたが勝つ事はあり得ません。
 私にはたくさんの証人がいます。
 それでも争うなら、私も準備します。」

・「妊娠の可能性がないと以前断言していましたが、なぜですか?」
「私はそういう病気なんです」
「何の病気ですか? 私の健康に関わることなので詳しく教えてください」
「生死の活動が著しく低調だという病気です。」
性行為があったことを山口氏が認めたことになった。

・タクシー運転手の証言
「近くの駅で降ろして下さい」と何度も言っていた。
降りるときには自力では降りられない状態だったこと、降りた後に見たら、私のものと思われる吐しゃ物があったこと。

・「成田空港で逮捕する」
「8日の月曜日にアメリカから帰国します、入国してきたところを空港で逮捕する事になりました」
A氏は、落ち着きを見せながらも、やや興奮気味な声で話した。:::
裁判所から逮捕状請求への許可が出るところまで、証拠や証言が集まったのだから、大変心強いのは事実だった。

・この電話から四日後、逮捕予定の当日に、A氏から連絡が来た。・・・
「伊藤さん、実は、逮捕できませんでした。逮捕の準備はできておりました。私も行く気でした。しかし、その寸前で待ったがかかりました。私の力不足で、本当にごめんなさい。また私はこの担当から外されることになりました。」・・・
「ストップをかけたのは警察のトップです」
(当時の中村刑事部長で、この件が認められ警察庁長官まで出世した。山口氏が安倍元首相と入魂だったためと言われている))・・・
「全然納得がいきません」

A氏は「わたしもです」と言った。・・・
A氏は逮捕がとめられた理由について、何も聞かされていないのだという。

・これは一体、どういうことなのだろう。警察はそこまでして、私に示談させたかったのだろうか。

・二人の弁護士(西廣陽子先生&村田智子先生)は口を揃えて、
「逮捕直前に現場で突然ストップかかったのは、絶対におかしい。他の弁護士や、警察庁に詳しい人に聞いても、皆そんな話は聞いたことがないと言っている。警察庁に話を聞きに行く際は、チームでやったほうがいいから」
と、二人一緒に担当して下さることになった。

・検事は私を慰めるように言った。
「これは前任の検事の対応だが、海外にいる被害者に連絡しますと伝え、帰国してくれと連絡するところまで準備を整えていたのに、実は逮捕しません、もう帰国しなくていいですという対応はあってはいけない。
 そういうことを被害者に伝えたのなら、やるべきだと私は思う。本当にひどい話で、絶対にやってはいけないこと」
そして最後に一言、
「本当に申し訳なかった」と言った。

・「合意の壁」
強姦事件の場合、主な争点となるのは、大きく言って、
①行為があったか
②合意があったか
の二点だ。

・アメリカでは、政府機関がインターネットに「デートレイプドラッグ」についての警告サイトを展開して久しい。

・『殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』清水潔著

・マスコミの冷たい反応
実際に書類送検されても、報道されることはなかった。

・レイプはどの国でも、どんな組織でも起こり得る。組織は権力を持つ犯罪者を守り、「事実」は歪められる。キャリーさんの身に起こったことは、決して珍しいことではない。
今までに一体、何人の人が、心を押しつぶされたまま生きることを強いられたのだろう。
一体何人の人たちが、彼女と同じように命を絶ったのだろう。
事件後、私も同じ選択をしようとしたことが、何度となくあった。自分の内側がすでに殺されてしまったような気がしていた。

・検察審査会への申し立て

・再びタクシー運転手の証言
 ・女性が、「近くの駅まで行ってください」と言った。
  「目黒駅が一番近いです」と答えると、女性は「それでは、目黒駅に行ってください」と語った。
 ・男性は女性の体をドア側に引き寄せようとしたがうまく行かず、いったん降りてカバンを外に置き、女性の脇に肩を入れて引きずり出すように車から降ろした。
 ・女性は、男性に抱きかかえられるような感じでホテルに入って行った。その時はホテルのボーイさんもいて心配そうに見ていた。
 ・高輪署から警視庁捜査一課に事件が回されてから、彼(運転手)は一切事情徴収されていないことになる。

・会見を思い立つ

何よりも一番大きかったのは、「週刊新潮」編集部の取材により、「自分が山口氏を逮捕させなかった」と、当時の(中村格)刑事部長が認めたことだった。

「北村さま、週刊新潮より質問状が来ました。伊藤の件です」
というメッセージが、なぜか「週刊新潮」編集部に届いた。「北村さま」に転送しようとし、誤まってそのまま編集部に返信してしまったのだ。その文面から、かねてから山口氏と北村氏の間で、今回の事案が問題視され、話し合われてきたことがわかる。
北村と聞いて頭によぎるのは、北村滋・内閣情報官を措いて他にない。・・・総理の一番近くにいる人物の一人なのだ。
 当時刑事部長だった中村格氏が自分の判断で逮捕を差し止めたと認めたこと、山口氏が以前から「北村氏」に私のkとおを相談していたこと、この二つの事実がわかったのは、本当に大きな進展だった。
 特に中村氏については、まさか認めるとは思わなかった。というのが率直な感想だ。素晴らしい「週刊新潮」記者の取材であった。
 二年間、同じことを訴え続けて、何も変わらなかったことが、大きく動いた瞬間だった。

・「被害者A」ではなく
やはり、会見を開こう、と決心した。

・沈黙は平穏をもたらさない

・簡単には運ばなかった
 知人のジャーナリストからも連絡があった。
 「政府サイドがメディアに対し、あれは筋の悪いネタだから触れない方がよいなどと、報道自粛を勧めている。・・・でも、会見はやるべきで、ただ、工夫が必要ですね。しかし、なぜ政府サイドがここまで本件に介入する必要があるのか、不可解」

・知らぬ間に支配されていた恐怖

・会見の直後、「私もかつて同じような被害に遭いました」というメールをいくつか頂いた。

・中村格氏に聞きたいこと
 今でも、どうしても知りたいことが二つある。
 一つは、「なぜ逮捕を取りやめたのか」。
 もう一つは、高輪署から警視庁捜査一課にこの事件が移されてから作られたという、捜査報告書のことだ。高輪署が作ったタクシー運転手の調書にはあった、私が何度も「駅で降ろしてください」と言っていたという話が、この報告書からは抜けていた、という情報について、
 検察審査会の結果が出た後、何人かのジャーナリストから、次のような「噂」を聞いた。「防犯ビデオの映像を見たけれど、彼女は普通に歩いていた。タクシー運転手の証言には、彼女が履いたものを自分で片付けていた、とあった。だから、彼女には最後まで意識があったんじゃないか」。そういう声があって不起訴相当の議決がでたのだ、と話している新聞記者がいる、と。
 語られている内容は噂に過ぎないが、そのような噂を流す人物がいることは間違いない。その噂の、そもそもの出所はどこなのか。
 こうした話を聞くにつけ、「警視庁の捜査報告書」を疑いたくなってしまうのだ。

最後に整理しておきたい。
あの日の出来事で、山口氏も事実として認め、また捜査や証言で明らかになっている客観的事実は、次のようなことだ。
 ・TBSワシントン支局長の山口氏とフリーランスのジャーナリストである私は、私がTBSワシントン支局で働くために必要なビザについて話すために会った。
 ・そこに恋愛感情はなかった。
 ・私が「泥酔した」状態だと、山口氏は認識していた。
 ・山口氏は、自身の滞在しているホテルの部屋に私を連れて行った。
 ・性行為があった。
 ・私の下着のDNA検査を行ったところ、そこについたY染色体が山口氏のものと過不足なく一致するという結果が出た。
 ・ホテルの防犯カメラの映像、タクシー運転手の証言などの証拠を集め、警察は逮捕状を請求し、裁判所はその発行を認めた。
 ・逮捕の当日、捜査員が現場の空港で山口氏の到着を受けるさなか、中村格警視庁刑事部長の判断によって、逮捕状の執行が突然止められた。

検察と検察審査会は、これらの事実を知った上で、この事件を「不起訴」と判断した。
あなたは、どう考えるだろうか。

感想
詳細を知るにつけ、警察と検察は誰の味方なんだろう?と思いました。
山口敬之氏は、安倍元首相に躊躇していた安倍氏に自民党総裁、首相への復帰を強く進言したそうです。
安倍元首相にしたら、首相になれたのは山口氏のお蔭との思いがあったようです。
逮捕も起訴もされなかったですが、民事で”準強姦”が認められました。
米国のトンプソン事件を思い出します。
刑事では無罪、民事で有罪になりました。

山口氏は警察から「帰国したら逮捕する」と聞いていたので、安倍首相(当時)に相談されたのでしょう。
本人に「逮捕する」を伝えていなかったら、逮捕停止もなかったかもしれません。
上からの判断で逮捕を停止した中村格刑事部長はその後、警察庁長官まで出世しています。
トップの指示に忠実に従ったので、論功行賞でしょう。
佐川氏と同じです。

法が権力者によって歪められる日本で良いのか?が国民に問われているように思います。
いつ、今度はそれが自分の身に起こるかわかりません。
その時では遅いのですが。

それと、万が一レイプされたら、犯人を逮捕したいなら、警察に行き下記を確認する必要があるようです。
①精液のDNA分析を行ってもらう
②服装とか怪我していれば、その証拠写真と医者の診断書をもらう
警察は男性が当たるので、辛いですが、それがレイプを証明する唯一の方法のように思いました。
③レイプドラッグを使われている可能性があるときは、血液を分析してもらう&冷凍保存しておく

レイプドラッグが使われています。
山口氏も状況証拠からは、使った可能性が高いように思いました。
そのためには、自分の飲み物から目を離さないことです。
トイレに行くなら、空にしてから行く必要があります。
前の会社で睡眠導入剤がレイプドラッグとして使われたとのことで、監麻課から「白色錠に色を付けてください」と依頼され、色を付けました。
飲み物に入れて色が変わるには、タール系色素を入れるしかありませんでした。
青色の色素を入れました。
ブルーハワイのカクテルだとわかりません。
お酒を男性と二人きりで飲むなら、色のついていない飲み物にするのが良いかもしれません。
レイプや準強姦は知っている人からされるのが圧倒的に多いのです。
伊藤詩織さんも、TBSのワシントン支局長に準強姦されるとは夢にも思っていなかったでしょう。

伊藤詩織さんに勇気ある行動は、これからのレイプや準強姦を少しでも減らすことになると信じたいです。

それにしても、合意のないセックスをして楽しいのでしょうか?
情けないです。
山口敬之氏は優秀なジャーナリストなのかもしれませんが、人として論外な人のようです。
かつご自身も頭の理性が下半身の本能に乗っ取られてコントロールされる人だったということでしょう。
下半身を頭がコントロールしたいです。
酒、たばこ、ギャンブル、セックス、ゲームをコントロールして楽しみのは良いのですが、それにコントロールされる人生は問題を起こします。

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