新・桜部屋

主に伝統芸能観劇記。
その他鑑賞日記

歌舞伎座こけら落とし公演5月 1,2部(2013年5月25日(土)観劇)

2013-05-29 23:48:58 | 歌舞伎鑑賞雑記
1部:
鶴亀の舞:新開場の祝宴は続きます。前髪立ちの翫雀は装束がみごとにはまっており,片足だちで一気にくるぅりと回るからださばきの見事さ。
やはり歌舞伎役者は顔が大きくなければいけません。

菅原伝授・寺子屋:幸四郎の松王丸,演技かどうか分からないくらいに体調がすぐれなさそうである。源蔵には三津五郎,妻に福助。福助の戸浪は田舎の寺子屋の女房にしては色気がただよいすぎ,少しやつれたのか面差しが精悍。三津五郎の「すまじきものはみやづかえ」につながる地味な渋い演技がよい。役者のニンというものか。(使い方,合ってます?)じっとこらえてこらえて,ついに魁春の千代に斬りかかる刃が小四郎の血にぬれているさまが見えるようであった。千代が文箱から取り出した南無阿弥陀仏の幡が表裏だったのはご愛敬。いろは送りから野辺の送りは省かれていた印象。花道の引っ込みもなし。

三人吉三:お嬢吉三に菊五郎,お坊吉三に仁左衛門,和尚吉三に吉右衛門。
たったの30分あまりの大川端,月も朧に~の名調子から三人吉三のそろい踏みまでどこからどう切っても完璧な舞台。和尚吉三が「それならわっちに百両~」というくだりでは,勘三郎の時はずるくて笑いがとまらなかったもの,吉右衛門ではこの先にまだ何かがある?と予感させる台詞まわしでした。

2部
伽羅先代萩:女形の総力を集結した派手な舞台。政岡に藤十郎,とにかく立派。少し足が悪いようで,所作がいつもの先代萩と違う。こけら短縮バージョンのためか?
楽しみにしていた“ままたき”は全て割愛。千松は空腹のまま毒をあおって刺殺されてしまいました。悲惨すぎます。悪い側に梅玉と秀太郎。味方側が時蔵と扇雀,これはもう舞台の上にぎっしりとご馳走のお膳がのった状態です。
床下の段は男之助に吉右衛門,仁木弾正に幸四郎。悪の魅力と雲の上を歩む心地で花道をさがっていくひんやりとした触感。

廓文章・吉田屋:仁左衛門と玉三郎での吉田屋。どちらも出のじらしが非常に長くて長くて,待っている身にもなってほしいです。
仁左衛門の藤屋伊左衛門,顔の表情は目尻が下がろうが口元が緩もうが総身が金の色男。
吉田屋主人に弥十郎,女房に秀太郎。安定した屋台の上に,千之助の太鼓持ち。
伊左衛門の独断場から夕霧が出てきて,思い思われる仲で通じ合わない気持ちが切なくなったあたりで太鼓持ちの登場。じいじの手をとって夕霧さんと仲直り,幕切れでは「じいじ,あっつい,あっつい」と扇子で扇ぐ器量よし。
観るたびに変化する仁左衛門の吉田屋,歌舞伎座新開場に,もひとつ新しいお座敷ができたようでした。

最新の画像もっと見る