江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

「対馬夜話」の怪奇な話  その1

2022-04-28 19:41:38 | 対馬夜話

「対馬夜話」の怪奇な話   楽郊記聞  中川延良

                        2022.4

対馬の幕末の藩士である中川延良の書いた随筆集。 「対馬夜話」(「楽郊記聞」)は、当時の、対馬の事を、活写している。

その内に、ごくわずかだが、怪しいことを書いた部分がある(志怪)。

この「対馬夜話」は、「楽郊記聞」という表題で、平凡社の「東洋文庫」にある。

 

「対馬夜話」の怪奇な話  その1

人魂が、ちぎれた話 若年の頃、8月12、3日の夜、2、3人と一緒に、一ッ橋の東の河端を下りたことがあった。

会所の少し下に行った頃、昌元の浦の方から人魂が飛んできて、大橋の方に向かって行った。

往来の人々が、アレーと見ているうちに、川向こうの荒木という紺屋のもがり竹の垣根の梢に、尻にひいているものが、掛かって先に進めなくなってしまった。

いかにも、先に行きたい様子であったが、離れられなかった。

人々が、東西の川端に立って、あれあれ、と言っている声に、いよいよ先に行こうとしていたが、まとわりついてなかなか離れなかった。

しかし、ついに、人魂の途中から引き切れて、頭の方は、山下の方を指して飛んで行った。

竹に引っかかっていたのは、なおも離れようとの勢いであった。

しばらくして、ようやく、コレも竹からはなれて、頭の方の後を追って、山下の方に向かって行った。

その時は、頭の方は、もう見えなくなっていた。

これは、私の父(対馬夜話の著者である中川延良の父親のこと)の語ったことである。



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