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財務省のホームページに厚生労働省が反論 しかし...

2009年11月29日 10時11分03秒 | 予算・事業仕分け
事業仕分けで診療報酬の配分を見直すようにと評価されたことを受けて、財務省が「医師の給与が高止まりしている」などと引き下げの主張を整理したホームページを公開した。このブログでも21日に紹介し、「厚生労働省も自らの主張をホームページなどを使って展開すべきだろう」と書いた。
その1週間後の27日(金)に、厚生労働省が反論をまとめてホームページで公開した(見落としていたが)。

厚生労働省
「平成22年度予算編成上の主な個別論点(医療分野)」に対する見解について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000002shz.html

財務省のアピールをみて政務三役が「正しい情報を伝えないといけない」と反論をまとめるように指示したとのこと。残念ながら、マスコミに大きく取り上げられることもなく、厚生労働省のトップページからのリンクが見当たらないためにアピールするに至っていない。「本日の新着情報」のリストから探さなければならないようでは、本当に反論する気があるのだろうかと思ってしまう(過去の新着情報一覧に移されてしまったら、誰も見なくなるだろう)。
また、報道発表の内容そのままと思われるページデザインも地味である。「伝える」と「伝わる」の違いは大きい。これでは、国民に何を伝えたいのか、何をアピールしたいのかわからない。残念ながら、伝わっていない。

例えば、財務省のホームページには、「医師の所得が右肩上がりで、この不況下にも関わらず、高止まりしている」。ゆえに、「診療報酬の引き下げといっても、医師にとっては大したことはない。会社員の冬のボーナスが大幅に減ると報道されているぐらいなのだから、2%の引き下げなんて甘いものでしょう?」といった国民への明確なメッセージがある。
それに対して、厚生労働省のホームページでは、「診療報酬=医師の報酬ではありません」、「医師の給与は総費用のうち一割」としか言っていない。これでは「だから何なのか」と問いたくなる。この先は、書かなくてもわかってもらえると思ったら、大きな間違いである(国民は、それほど親切ではない)。「看護師の所得が500万円少々、医師の所得が1500~2500万円だから、医師の給与を2/3にしても大丈夫。それで3%の引き下げ分を吸収できる」と言いたいのだろうか。そうでないなら、何を言いたいのかをはっきりと書くべきである。例えば、「配分の見直しで生み出される財源は大きくありません」から始まり「医療再生のためには、もう一段の検討や努力が必要です」で終わる。これでは、見直しの方針に対して、どうしたいのかはまったく伝わらない。事業仕分けの結果に対して、あるいは、財務省の診療報酬の引き下げの方針に対しての明確なメッセージがどこにも見当たらないのである。

財務省のホームページは、国民に「診療報酬を引き上げるか、現状維持か、引き下げるか。どうだろうか?」と問いかけている。副大臣が自ら語り、その全文をホームページに掲載している。しかしながら、厚生労働省が反論したのは「財務省」に対して。しかも事実を示しただけである。国民に自らの主張をわかってもらいたいとどこまで考えたのだろうか。もっとできることがあったのではないだろうか。かなりの疑問が残る、とても残念なホームページである。

まだ間に合う。これでは駄目だと指示を出しなおしたほうがよい。

「診療報酬の引き上げを求めます。医師の給料を増やすために使うのではありません。医療を再生するために、本当に必要なところに使います。具体的には、...」ぐらいの明確なメッセージが求められているのではないだろうか。