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自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

事業仕分けリスト決定 診療報酬や薬価も対象に

2009年11月10日 10時03分18秒 | 予算・事業仕分け
各省庁から出された概算要求 95億円・約3000事業のうち、447事業をまとめて216項目に絞り込み、仕分け作業が11日から始まる。

場所は、市ケ谷の体育館。「仕分け人」は、民間有識者など56人を含む計80人。報道陣に全面公開されるため、仕分け側と説明側の双方に緊張感が生まれることが期待される。判定は、作業グループの多数決で決まり、「不要」「地方へ移管」「改善」「継続」の4分類。220の対象事業の総額は約5億円と報じられているので、その半数程度を「不要」「地方へ移管」とするか、仕分けの結果から類推しての査定(仕分け対象にならなかった事業)を合わせて、3億円減の目標を達成することになる。

このブログに関連するものとしては、「薬価の見直し」や「診療報酬の配分」が対象に加えられたと報じられている。

診療報酬、地方交付税、思いやり予算…大物、どう削る?
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/m20091108038.html?C=S

「事業仕分け」薬価・診療報酬も対象…公開作業へ
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20091109-567-OYT1T00459.html

事業仕分けリスト今夜決定 医療費国庫負担も対象
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/e20091109002.html


薬価を対象に加えることの狙いは、価格の安い後発医薬品(ジェネリック医薬品)の利用促進。診療報酬は、病院勤務医の待遇改善(配分の見直し)。省庁担当者の説明と議論が全面的に公開されることから、「まっとうな判定」がなされることを期待したい。
診療報酬改定の議論は、これから本格化する。仕分けの考え方を取り入れ、ぜひともメリハリをきかせていただきたい。

ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは、薬の特許が切れた後に発売される成分が同じ薬で、効果はほぼ同じと言われている。薬の開発費が価格に乗せられていないこと、中小の製薬会社でもつくれることから、安価。ジェネリック医薬品に切り替えることで、患者の自己負担も下がり、国の医療費も抑制できる。新薬にはジェネリック医薬品はないが、新薬のなかには、ジェネリック医薬品とそれほど効果が変わらないものも多い。そのため、医師や薬剤師に「ジェネリックでもいい」と相談すれば、代わりの薬が出てくることもある。
薬価といえば、かつては「薬価差益」の大きさが話題になっていた(3割から4割ほどあったらしい)。なお、薬価差益とは、診療報酬で定められた薬価と、病院などの納入価格の差。最近の薬価切り下げで、差益はかなり小さくなっており、中には、差損が出るものもあるらしい。しかしながら、国民への説明が十分でないため、「新薬には差益があり、ジェネリック医薬品にはない。儲けるために(ジェネリック医薬品があると)知らせないのではないか」、「病院が儲けるために薬を出しているのだから、全部飲まなくても構わないのではないか」と思われている。そのため、薬価をさらに引き下げてジェネリック医薬品との価格差を小さくしようという考えのようである。

薬価差益が小さくなったのは、「病院が儲けるために患者を薬漬けにしている」との批判=キャンペーンがなされたため。しかしながら、そのように取り上げられない部分には、大きな「差益」が残っている。例えば、臨床検査は、検査実施料(診療報酬)と、検査の費用(臨床検査会社への委託検査額など)の間に大きな差があり、それが病院の利益になっている。薬価と同じように「検査差益」を小さくし、その分を正当な診療報酬に振り替えてはどうだろうか。そうしないと、同じような検査をやたらと繰り返す「検査漬け」は無くならない。薬価の仕分け結果から類推して大胆に査定してほしい。

これからも医療費は伸びていく。国民の負担を軽減するために、医療費に含まれる「無駄」を徹底的に省き、本当に必要な医療費を確保しなければならない。薬価差益や検査差益=儲けを小さくしようというのだから、医療関係者の抵抗も予想される。全面公開される事業仕分けの場を使って、その抵抗を退けるべきだろう。