制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

子ども手当法の施行前日(3月31日)に通知などが明らかに

2010年04月02日 23時22分39秒 | 子ども手当・子育て
子ども手当法案が成立後、外国人の子どもや児童福祉施設に入所する子どもへの支給に関してバタバタといろいろなことが決められた。その結果として、施行後に政令・省令、通知などが出されることになった。3ヶ月後には支給が始まるので、当然のことながら、事務処理システムへの反映には限界がある。1年限りの法律なので、いかに運用でカバーするかを考えなければならない。
後期高齢者医療制度で政令・省令や通知などを出すタイミングが遅れたために混乱を招いたことは記憶に新しい。国会での議論が施行の直前まで続いたことから仕方ない面もあるが、このしわ寄せは市町村に、さらにその先の国民に行くことになる。余裕を持って準備が進められるよう、政治主導の「前倒し」はほどほどにしておいていただきたい。

子ども・子育て
子ども手当について・関係資料

【法律】
平成22年度における子ども手当の支給に関する法律

【政令・省令】
平成22年度における子ども手当の支給に関する法律施行令
平成22年度における子ども手当の支給に関する法律に基づき市町村に交付する事務費に関する政令
平成22年度における児童手当法及び平成22年度における子ども手当の支給に関する法律第20条第1項の規定により適用する児童手当法に基づき一般事業主から徴収する拠出金の拠出金率を定める政令
平成22年度における子ども手当の支給に関する法律施行規則

【通知】
平成22年度における子ども手当の支給に関する法律等の施行について(厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)
平成22年度における子ども手当の支給に関する法律における外国人に係る事務の取扱について(厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)
市町村における子ども手当関係事務処理について(子ども手当市町村事務処理ガイドライン)(厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)
平成22年度における子ども手当の支給に関する法律等の施行に伴う児童手当関係通知の取扱について(厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課長通知)
子ども手当の寄附に係る事務の取扱いについて(厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課長通知)
子ども手当関係歳入歳出予算科目について(厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課長通知)
子育て支援対策臨時特例交付金(安心こども基金)の運営について(文部科学省初等中等教育局長・厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)
平成22年度における子ども手当の支給に関する法律の施行に伴う児童福祉施設に入所する子ども等への特別の支援について(厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)

【参考】
「平成22年度における子ども手当の支給に関する法律における外国人に係る事務の取扱いについて」のポイント
平成22年度における施設入所児童等への特別支援事業について

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/osirase/100402-1.html

外国人に関しては、支給要件の確認の厳格化が求められている。
具体的には、年に2回以上子どもと面会が行われていること(監護)、年に3回(概ね4ヶ月に1度)は生活費、学資金等の送金が継続的に行われていること、来日前に親と子どもが同居していたことを確認すること、提出を求める書類を統一して厳格な確認を行うことなどが求められている。

平成22年度における子ども手当の支給に関する法律における外国人に係る事務の取扱いについてのポイント
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/osirase/dl/100402-1q.pdf

市町村には、外国人からの問い合わせが相次いでいるとのこと。とはいえ、支給にあたってこれだけの厳格な確認が必要になれば、市町村の体制を強化しなければならなくなるかもしれない。

海外在住の子ども手当、年2回面会など条件
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100401-567-OYT1T00084.html

子ども手当法、きょう成立 外国人申請殺到も 財源いまだ綱渡り
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/m20100326013.html

子ども手当法案が衆議院を通過 今月内に成立 6月に向けて追い込み開始

2010年03月16日 22時53分50秒 | 子ども手当・子育て
子ども手当法案が衆議院本会議を通過した。与党3党に加えて公明党と共産党が賛成、自民党とみんなの党などが反対。17日には、参議院本会議で審議入りする予定で、高校授業料の実質無償化法案とともに月内に成立する見通し。

子ども手当法案が衆院通過=公明、共産も賛成、月内成立へ
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100316X148.html

高校無償化法案が衆院通過=子ども手当法案も
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100316X141.html

子ども手当、満額時の財源不透明 参院であらためて争点に
http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010031601000916.html

また、昨日に取り上げたマイクロソフトの「事務処理支援システム」がダウンロードできるようになった。

プレスリリース
IT利活用による自治体の業務支援
自治体向けに「子ども手当」の事務作業支援ツールとしてExcelテンプレートを無償提供開始
~ 大規模なシステム改修や変更の費用をかけることが難しい自治体を対象にテンプレートを提供 ~
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3826

子ども手当給付に係る作業負担を軽減する自治体向けツール
子ども手当事務支援 Excel テンプレート
http://www.microsoft.com/japan/business/industry/gov/kodomo/default.mspx

プレスリリースの「対象」には、
・子ども手当の制度変更により大規模なシステム改修やシステム変更をかけることが難しい自治体
・子ども手当システムが平成22年6月支給開始に間に合わない自治体
・平成23年度前後に子ども手当システムを含む既存業務システム更改を予定されている自治体
・支給対象者が比較的に少ない人口1万人以下の自治体
と書かれているが、誰でも自由にダウンロードできる。
マイクロソフトのページに画面イメージが掲載されているので、それらをみれば、何ができそうかはだいたいわかる。「Excelテンプレート」の名称どおり、事務処理支援システムではなく、Excelのワークシートとマクロそのもので、窓口担当者1名・パソコン1台で何とか事務をまわそうという町村向け。実際に使う申請書などの様式に合わせて編集し、使ったほうが効率的になる業務にだけ使うようにすれば使えなくはないが、事務処理システムの代わりになるものではない。あくまで、6月支給開始に間に合わない・支給対象者が比較的に少ない町村向けの「緊急用のツール」である。対象に合わない市町村が過度に期待して必要な準備を怠ると大変な目にあうので、実際に使ってみてから採用の可否を判断したほうがよい。

マイクロソフトが子ども手当の事務処理支援システムを無償提供

2010年03月15日 23時24分18秒 | 子ども手当・子育て
マイクロソフトが人口1万人以下・職員100名以下の小規模自治体(町村)向けに、子ども手当の事務を支援するプログラムデータと運用マニュアルを無償提供することが明らかになった。
提供の開始は、明日の16日から。マイクロソフトのホームページからダウンロードできるようにする。

提供するプログラムデータは、マイクロソフトEXCELのワークシート。住民基本台帳データ(ファイル)を読み込み、対象者リストを作成したり、受取資格の有無や支払記録などを管理したり、国や都道府県への報告書作成などの事務に使うことができる。1万人以下の町村を対象としているので、子どもと世帯の数はパソコンと紙の台帳で処理できるレベル。しかも無償提供なので、外字の処理ができない、事務の一部しかできないといったことも許容されると思われる。

子ども手当事務を無料支援 マイクロソフト
http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010031501000641.html

人口1万人以下・職員100名以下の町村は、全国で約400。そのうち40以上の町村で採用されることを目指しているとのこと。1年間とはいえ、紙の台帳で事務処理をするのは大変。でも、情報システムを発注するだけの余裕はない(国からの補助金はあるが)という町村をターゲットにしたソリューションであり、パソコンとEXCELがあれば、自治体の事務処理支援システムが組めるというわけではないことに注意が必要である(今日のパソコンは、20年ほど前のホストコンピュータやミニコンよりもスペックが上だが)。

なお、2月25日に開催された「全国児童福祉主管課長」で配布された資料をみると、子ども手当の事務処理がかなり簡略化されていることがわかる。準備期間が短いこと、市町村の事務の負担を極力軽減しなければならないことを考えれば、児童手当の受給資格があるか否かを不問にしたことは評価できる。

全国児童福祉主管課長会議資料(平成22年2月25日開催)
http://www.wam.go.jp/wamappl/bb16GS70.nsf/vAdmPBigcategory60/3F5C1C57D7239EE0492576DD000A8D00?OpenDocument

【別冊】子ども手当について
http://www.wam.go.jp/wamappl/bb16GS70.nsf/0/f6910fb7bb416b38492576dd0009f98b/$FILE/20100305_1bessatsu1_all.pdf

上記の資料にて、検討中とのただし書きはあるものの、諸様式が公開されている。事務処理システムは、これらの諸様式の項目を管理できればよいので、それほど難しくないだろう。まだ子ども手当法案は成立していないが、ここまでくれば時間の問題。6月の支給開始に向けて、配布資料を読み込み、大急ぎで仕上げる必要があるだろう。

子ども手当て法案 12日に衆議院厚生労働委員会で可決 16日に衆議院通過

2010年03月11日 09時28分08秒 | 子ども手当・子育て
与党3党と公明党が10日に子ども手当て法案と高校授業料の無償化法案の修正で合意し、その結果として、12日の衆議院厚生労働委員会と文部科学委員会で可決、16日の衆議院本会議での可決・通過が確実となった。公明党の幹部が「(与党3党と修正で合意したのだから)反対というわけにはいかない」と述べたことから、公明党は、両法案に賛成するものと思われる。

合意内容は、昨日のブログに書いたような想定の範囲内。法案本文の修正はなく、付則に盛り込んだり、2011年度以降に検討するといった対応で、支給に向けた準備を進めている現場への影響はそれほど大きくないと思われる(別の基金から支出することになる児童養護施設入所中の子どもへの支給に関する事務の方法は示されていないが)。
付則に盛り込まれること=合意による修正点は、「児童養護施設に入所している子どもその他の子ども手当の支給対象とならない子どもに対する支援を含め制度のあり方」と「2011年度以降の子育て支援に係る全般的な施策の拡充」について政府が検討すること。

子ども手当法案、民主・公明が修正合意
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/K2010031003260.html

また、厚生労働委員会での質疑で明らかになったのは、外国人の子どもへの支給のあり方について。法案の修正はないが、見直しを行って、2011年度以降の子ども手当法案には盛り込む方針。
具体的な内容は次のとおり。現行の児童手当法と子ども手当法には国籍の要件がないことから、外国人登録をしている外国人から申請があれば支給される。子どもも日本国内にいて外国人登録をしているならば日本人と同じ扱いで構わないが、子どもが国内にいない場合にも支給されることから問題視された。市町村の窓口では申請された子どもの数を信用するしかない(本当に生計を維持しているかなどの確認の方法がない)ために「虚偽の受給」が横行するのではないか、日本人の親が子どもを国内に残して海外に赴任する場合(逆のケース)には支給されないのだから不公平ではないかとの指摘が相次いでいるとのこと。

外国人への子ども手当、23年度分で見直し検討 鳩山首相
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100310-00000514-san-pol

続いて、2011年度以降の満額支給に関する議論では、6月に取りまとめる「(今後3年程度の経済財政運営方針を定める)中期財政フレーム」を踏まえて、どれほどの財源を確保できるのか、満額支給できるのかを見極めたいとの考えが示された。公明党との修正協議においても支給を続けるための恒久的な財源を確保することが求められており、委員会を乗り切るための答弁としては妥当だが、満額支給の実現は容易ではない。子ども手当の支給を続けるために必要な財源は5兆円を超える。税収の落ち込みは続いているなかで、社会保障費は伸び続けている(高齢人口の伸びによる自然増)。このような状況のなかで、さらに3兆円近い額を上乗せするのは容易ではなく、無駄な歳出の削減で捻出できるような額ではない。消費税率の引き上げなど、増税の議論が避けられないだろう。

子ども手当て満額支給、首相「6月めどに方針」
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100310-567-OYT1T00941.html

子ども手当法案など、今週中に衆議院を通過か

2010年03月10日 09時27分24秒 | 子ども手当・子育て
与党3党が9日に国対委員長会談を開き、子ども手当法案と高校授業料無償化法案について、週内の衆議院通過を目指す方針を確認した。会談後、民主党の山岡国対委員長は、「少なくとも委員会レベルを通し」、場合によっては「衆議院本会議に緊急上程」と考えていることを明らかにした。

子ども手当、週内衆院通過目指す=与党
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100309X765.html

また、野党対策も検討しているようで、「公明党から修正の要請が来ているので前向きに対処する。内閣、連立与党との協議で一致すれば講じたい」と、公明党からの要請を受けて法案を修正することもありうると述べている。

子ども手当・高校無償化、法案修正も 民主、公明要請で
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/K2010030902000.html

<公明>民主と修正協議へ 子ども手当て法案など
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100309-00000113-mai-pol

子ども手当法案など、民主と公明が修正合意
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100309-567-OYT1T00966.html

今週中に衆議院を通したいという段階での法案修正はないと思うが、付則に盛り込んだり、本会議で答弁したりすることで双方が納得できるならばありうると思われる。ただし、支給開始が6月に迫っていて、そのための準備が進められているので、修正を現実的な範囲に留めないと、全国の市町村からの反発を招きかねない。

公明党から修正の要請があったのは次のようなこと。
今国会に提出されている法案に2011年度以降のことが示されていないことや満額支給の財源の確保ができていないことに対しては、付則に盛り込んだり、1年間かけて検討すると答弁すればよいだろう。これまでも議論がなされてきたので、大きな影響はないと思われる。
次に、児童養護施設に入所している子どもたちなどに支給できないことに対しては、これまでの報道どおりならば、子ども手当とは別の枠組みで同額が子どもに渡るようにすると答弁すればよいだろう。法案の支給要件(第4条)を修正して対応しようとすれば、影響が大きくなる。できれば避けたいところである。
最後に、年3回の支給を年6回程度に分散することに対しては、影響が大きすぎるため、2011年度以降に持ち越すことになるだろう。2010年度は、児童手当に上乗せする構造になっているため、子ども手当だけ回数を増やすことは無理だし、整備が進められている事務処理システムの要件が変わってしまうために準備が先行しているところほど手戻りが発生してしまう。

なお、子ども手当法案は、厚生労働省のホームページに掲載されている。合わせてご覧いただきたい。

厚生労働省が今国会に提出した法律案について
“第174回国会(常会)提出法律案”
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/174.html

平成二十二年度における子ども手当の支給に関する法律
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/174_02c.pdf

子ども手当の財源確保は困難か 最高税率の見直しを検討

2010年02月22日 09時28分15秒 | 子ども手当・子育て
菅副総理・大臣が街頭演説にて、「たくさん収入のある方には少し率として多めに税を払っていただき、そういうお金を子ども手当で応援に回していく」や「今年から税制の本格的な議論を始めたい」などと述べ、所得税の最高税率を引き下げて税収の落ち込みをカバーしたいとの考えを明らかにした。

子ども手当、所得税増税で=財源確保へ最高税率見直し-菅財務相
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100220-00000095-jij-pol

「子ども手当の財源は増税で」菅財務相が発言
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100220-00000563-san-bus_all

また、野田財務副大臣は、「子ども手当の満額支給は難しい」との発言を「ハードルが高いという意味だ。ただハードルが高かろうが低かろうが、乗り越えなくてはいけない。しっかりと財源確保に向けがんばりたい」と説明した。鳩山首相の「11年度は当然予定通り満額をやる。財源は歳出削減を徹底的にやって、繰り出していく」の発言を基本としつつ、無駄の削減がどこまでできるかわからないなか、他の選択肢も用意しておく必要があるとのことだろう。
今週には、2010年度予算の目処がつき、子ども手当法案などの審議が本格化するとのこと。しばらくは目を離せない。

野田財務副大臣「子ども手当のハードル高い」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100221-00000535-san-pol

昨年度の事業仕分けの結果(その後の役人の巻き返し)をみていると、子ども手当の財源分を確保できるだけの無駄の削減ができるとは思えない。就任後、活動を本格化させている枝野行政刷新担当大臣の手腕に期待したい。
枝野大臣ば、就任会見にて、4月にも「事業仕分け第2弾」を開始することを明らかにしている。前回は準備不足で「財務省主導」と言われたが、今回は、1~2ヶ月の準備期間がある。省庁から提出されたリスト(廃止になっても構わないもの)を次々と「廃止」と宣言したショーアップした第1弾とは異なり、「制度のあり方まで視野に入れたかたちで仕分けしたい」と本格的な議論に持ち込みたいとのこと。野田副大臣が、仕分け人を担当した議員に関して「前回は少な過ぎたような気がする。倍くらいは必要だと思う」と発言するなど、着々と準備が進められているようである。

事業仕分け第2弾「議員は倍に」野田副大臣
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100221-00000643-yom-pol

ハーグ条約の加盟圧力が高まる 子どもの「奪取」と「拉致」

2010年02月07日 09時49分44秒 | 子ども手当・子育て
子どもの奪取に関する「ハーグ条約」があり、先進国のなかで締結していない国は日本だけということは、多くの国民にとって初めて聞くことだろう。ハーグ条約とは、「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」のことで、国際結婚の破綻などに伴い、一方の親が他方の親(親権あり)に無断で子どもを自国に連れ去った場合、それを「子の奪取」とし、子どもを親権のある国に戻すことを義務付けるもの。1980年に署名、1983年に発効した多国間条約で、欧米を中心に81カ国が締結している。

国際結婚の増加に伴い、日本人の親が子どもを日本に連れ帰るケースが増えている。親権を侵害されたもう一方の親の国で「親権が侵害された」と訴えることになるが、国をまたがっているために何もできない。そのため、先月末にアメリカのジョン・ルース駐日大使など8カ国の大使らが岡田外相を訪れ、ハーグ条約への早期加盟を要請している。

「子の奪取に関する条約」日本の早期加盟要請
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100130-OYT1T00726.htm

直後の報道では、政府として前向きに検討するものの、欧米と日本では結婚観に違いがあること、法制度に違いがあることなどから検討に時間を要していることへの理解を求め、8カ国の大使らも「前向きな対応に勇気づけられている」との声明を発表したことから、外交的なやりとりだったのかと思われた(発効したのは1983年。検討に時間を要していると理解を求めるのは難しい)。

対日関係に影響も=「子の奪取」で懸念表明-米次官補
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201002/2010020200850

米が日本にハーグ条約加盟迫る 「拉致問題支援に悪影響」
http://www.47news.jp/CN/201002/CN2010020601000521.html

ハーグ条約 腰重い日本 米『普天間より深刻』
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2010020602000225.html


しかし、6日に明らかになったことは、「米議会でも懸案事項になっている。日米関係の大きな懸念になりかねない」ということ。来日したキャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は、日本とアメリカの間で約70件が未解決のまま(日本とアメリカの二重国籍の子ども)だと明らかにした。外務省が把握している「日本人による子の奪取」は、アメリカとの間で77件、イギリスとカナダでそれぞれ37件、フランスで35件など。「普天間よりも深刻」や子どもの奪取は「拉致」であり「拉致問題の支援にも悪影響」とまで言われたら、政府としても動かざるを得なくなる。

政府は、これらの加盟圧力に先立って、外務省に「子の親権問題担当室」を昨年の12月1日に設置。外務省が把握しているケースの対応を一本化するとともに、ハーグ条約への加盟の是非についても検討を進めることになっている。
国際的な批判を避けるためにも批准に向けた検討を本格化する必要があるが、「外圧」に屈するようなことがあってはならない。欧米諸国とは、家族観(親子の関係性)が違うし、親権・監護権などの考え方も違う。これらの文化的・社会的な違いから、批准に慎重になっていることを明確に伝えるべきだろう。これらの違いが慎重論の根本にあることは、アジアやアフリカの諸国がほとんど批准していないことからも裏付けられる。

児童養護施設の入所者も対象に ~子ども手当法案(要綱)のURL

2010年02月04日 09時55分39秒 | 子ども手当・子育て
長妻大臣は、参議院本会議の代表質問で、児童養護施設などに入っている子どもにも「子ども手当」を支給する方針を明らかにした。
国会に提出済の「子ども手当法案」の支給要件は、児童手当法の要件を踏襲したもので、父または母などの生計維持者には支給できるが、児童養護施設の施設長や里親などには支給できない。そのため、「安心こども基金」などを活用して2010年度分を支給、2011年度分からは支給要件を見直すことになりそうである。なお、必要な予算額は、6億5000万円とのこと(約5000人分)。

<子ども手当>児童養護施設の入所者も対象に 長妻厚労相
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100203-00000081-mai-pol

実は、これは、先月の中頃には明らかになっていた方針。第7回厚生労働省政策会議(1月14日)の議事要旨には、「施設に入っている子どもや親のいない子どもには支払われるのか」に対して「施設に入所している子どもについては、親が監護していれば親に子ども手当が支払われる。ただし、親が虐待などを行っている場合には、子ども手当は支払われない」「仮に施設に支払う場合、施設長が財産処分できるのかなどの問題が生じる」、それを受けての「施設に入所している子どもこそ、温かい手を差し伸べるべき」といったやりとりが残されている。

第7回厚生労働省政策会議の議事要旨
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/kaigi/2010/01/k0114-2.html

第8回厚生労働省政策会議(1月22日)の配布資料に、子ども手当法案の概要と要綱があった。「子ども手当法案」の正式名称は「平成二十二年度における子ども手当の支給に関する法律案」。全文が掲載されたら、改めて取り上げたい。

第8回厚生労働省政策会議
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/kaigi/2010/01/k0122-1.html

平成22年度における子ども手当の支給に関する法律案(仮称)の概要
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/kaigi/2010/01/dl/k0122-1a.pdf

平成二十二年度における子ども手当の支給に関する法律案要綱
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/kaigi/2010/01/dl/k0122-1b.pdf

子ども手当の支給要件は、以下のようになっている。

一 支給要件
子ども手当は、次のいずれかに該当する者が日本国内に住所を有するときに支給するものとすること。
(一)子どもを監護し、かつ、これと生計を同じくするその父又は母
(二)父母に監護されず又はこれと生計を同じくしない子どもを監護し、かつ、その生計を維持する者
(三)子どもを監護し、かつ、これと生計を同じくするその父又は母であって、父母に監護されず又はこれと生計を同じくしない子どもを監護し、かつ、その生計を維持するもの

これは、基本的には、児童手当法の第四条(支給要件)の「支給要件児童」を「子ども」に置き換えたもの。児童養護施設などの入所者が支給要件から外れる理由は、国会の質問・答弁の記録(2008年5月30日)によると、「児童福祉施設に入所し、又は里親に委託されている児童については、当該児童が孤児であるか否かにかかわらず、別途措置費等が支弁されており、当該施設の長又は里親は当該児童の生計を維持しているものとは認められないことから」とのこと。

児童手当法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S46/S46HO073.html

児童手当制度に関する質問主意書
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a169459.htm

答弁本文情報
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b169459.htm

子ども手当、満額の支給は困難か 財源論は避けて通れず

2010年02月01日 09時45分42秒 | 子ども手当・子育て
野田財務副大臣は、31日のNHKの番組で、2011年度からの子ども手当の満額支給について、「難しい。ハードルは高く、これからの作業になる」と述べた。前日の30日、愛知県豊田市で開かれた民主党支部の総会でも同じように述べており、財務省からの牽制が早々に始まったと思われる。
政府の方針として決まったわけではないが、財政状況を客観的にみれば、満額の支給が先送りされても仕方ないようにも思える。子ども手当の満額支給よりも子育て環境の整備に予算を振り分け、支出を抑えて財政の健全化に取り組むほうが、国民の理解を得やすいのではないだろうか。野田副大臣は、「中期的な財政フレームを作っていく。3か年にわたる歳出計画、歳入の見通し、歳出削減をどうやるかを作る。その流れの中で予算編成をやっていく。できないとは言っていない。これからの作業だ」「どういう知恵を出すのかだ」とも述べているので、いろいろな考えを出しつつ、世論を見極めようとしているのかもしれない。

子ども手当満額「難しい」=11年度以降見通し-野田財務副大臣
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100131X297.html

2011年度予算を組み上げる前に、特別会計を含めて事業仕分けと組み替えに取り組み、予算化していくことになる。ただ、子ども手当の満額支給には5兆円を上回る予算が必要との試算があり、それだけの額が簡単に出てくるとは思えない。さらに、このブログでも取り上げた「子ども・子育てビジョン」の実現には、年間7千億から1兆円ほど必要になることを考えれば、限られた予算をどう割り当てるべきかという現実を踏まえた議論を始めなければならないことがわかる。

<子ども手当>11年度満額「厳しい」 税収低迷理由に--野田副財務相
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20100131ddm002010114000c.html

政府の国家戦略室は、「中期的な財政運営に関する検討会」を開催し、中長期的な財政健全化や複数年度予算などに関する検討を始めている。伸び続ける社会保障費を支えるための財源の確保と、確保した財源を年金・医療・介護・福祉などのどれに割り当てるのか、さらに子ども・子育てに割り当てられた財源を「現物=子育て環境整備」の給付と「現金=子ども手当など」の給付のいずれに割り当てるのかといった「財源論」を避けては通れない。

財政健全化目標めぐる検討開始-政府
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-26056.html


野田副大臣の発言に対して、管副総理・大臣と平野官房長官から、さっそくと打ち消すようなコメントが出されている。子ども手当の財源確保の時と同じように、いろいろな考え方を並べておき、制約条件下でベストな「落としどころ」を探ろうということだろう。
平野官房長官は、「どういう財源を充てられるか、これから汗をかかなくてはならない」と述べ、管副総理・大臣は、「社会保障分野だけで6兆円の増額が見込まれる。これをどういう形で埋め込んで、出せるかが問題だ」「やるといったら、やらないといけない」などと述べている。いずれも満額の支給に必要となる財源を確保したうえでの発言ではなく、野田副大臣の発言とバランスをとるためのコメントと思われる。
あと半年もすれば、社会保障費の増額分の「6兆円」をどうするのかに取り組み、何らかの答えを出さなければならない。またまだ様子を探り合っている状況なのだろう。

子ども手当満額支給、菅氏「やるといったらやらないと」
http://www.asahi.com/politics/update/0131/TKY201001310252.html?ref=goo

子ども手当は満額支給=平野官房長官
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100201X385.html

子ども手当から、未納給食費の天引きを検討 実現は困難か

2010年01月31日 10時01分29秒 | 子ども手当・子育て
「子ども手当てから小中学校の給食費の滞納分を充当したい」という地方自治体からの要望に対して、鳩山首相は前向きに検討する姿勢を示した(山梨県で行われた意見交換にて)。給食費の滞納分のうち、3分の2ほどは「払えるにも関わらず、払いたくないから払わない」という理由。全国市町村会は、給食費や保育料のうち、悪質な未納分を相殺できる仕組みの検討を求めており、これらを実現するためには、子ども手当の差し押さえ=充当するための条文を「こども手当法案」に盛り込むことが必要になる。

国会に提出済みの「子ども手当法案」では、給付金の譲渡や差し押さえなどはできない。厚生労働省としては、法案の差し替えはしたくないだろうし、法律で禁止していることを省令や通知などで可能とすることはできないので、調整は難航するものと思われる。

子ども手当を未納給食費に充当、首相が検討
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100130-567-OYT1T00794.html

給食費の滞納分、子ども手当から天引き検討 鳩山首相
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/K2010013002890.html

給食費滞納問題「首長には切実」30日の鳩山首相
http://www.asahi.com/politics/update/0130/TKY201001300309.html

地方自治体の認識としては、「給食費を払いたいけれども、経済的な理由から払えない」親よりも「住民税支払っているのでなどと理由をつけて、払いたくないから払わない」親のほうが多いということなのだろう。このような悪質な滞納者は、いわゆる「モンスターペアレント」。どこまで本当なのかわからないが、国のレベルまで要望を上げなければならないほどの教育現場の実態があるのだろう。
また、法案を差し替えて実現できるようにしても、運用するのは大変である。学校が保護者に説明して同意を得て、福祉課などに連絡して差し押さえの手続きをするよりも、保護者を説得して払ってもらったほうが早い。保護者に「払いたくない(払う必要がない)から払わないという理由なら、最終手段として子ども手当を差し押さえる」と言える(最終通告できる)だけでも十分効果的と思われる。

モンスターペアレント実態赤裸々 無理難題と理不尽全18例掲載
・子供と親の分、保育所で朝食を用意して欲しい
・保育料も、教材費も、遠足のバス代も払わない
http://www.j-cast.com/2008/04/12018756.html

給食費滞納9万9000人、原因の6割が「親のモラル」
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20070125ur04.htm

文部科学省の全国調査で、2005年度の滞納総額が22億円。子ども100人に1人の割合との実態が明らかになっている。この記事においても言及があるが、「払いたくても払えない」人がいるのも確か。その場合には、保護者から事情をきき、各種制度の情報提供や減免などの手続きの支援をしっかりと行うべきだろう。