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診療報酬の引き下げ・配分見直し 財務省がホームページで主張を公開

2009年11月21日 10時18分41秒 | 予算・事業仕分け
事業仕分けで、診療報酬の配分を見直すようにとの評価されたことを受けて、厚生労働省(中央社会保険医療協議会)と財務省の間の攻防が本格化しそうである。

「医師だけ高止まり」 診療報酬引き下げ、予算に反映へ
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/K2009112003600.html

次期報酬改定の本体部分「原則引き下げ」―財務省が方針提示
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-25276.html

長妻大臣は、事業仕分けの前から診療報酬の引き上げを明言していた。マニフェストにもそのように書かれているので、民主党としては、国民生活に直結する分野の一つである、医療に手厚く予算配分したいと考えていることは確かである。しかし、政権を担当する与党となり、この財政状況では、「理念」どおりにはいかないのも確かである。
最も「現実路線」を選ばざるを得ない財務省からは、診療報酬を引き下げてもよいのではないか、引き下げても医師不足などの解決には影響が出ないのではないか、との考え方が出されている。
厚生労働省としては、2~3%の引き上げで、妥協したとしても現状の維持。財務省としては、2~3%の引き下げ。真っ向から対立すると不利になるのは財務省なので、国民に広く情報提供し、味方につけようとしている。
具体的には、ホームページに「病院の勤務医の年収は約1500万円、開業医の年収は約2500万円(月給200万円を超える)。開業医が1.7倍も高い」ことや、「後発品の水準まで薬価を引き下げれば、8000億円程度の引き下げが可能」などの客観的な事実を掲載。その上で、様々な機会をつかって「民間の給料が伸び悩み、雇用も不安定化している。公務員の給与を決める人事院勧告もマイナス。医師の給料だけが高止まりしているのはいかがなものか」との主張を展開していくことになると思われる。

診療報酬の1%は、約3400億円。内訳は様々だが、その全てを国民が負担している。「2~3%」とはいえ、小さい値ではない。

これまで診療報酬には、なかなか切り込めなかった。財務省は、事業仕分けから始まった「情報公開」が切り込みに有効だとわかった(実感した)のだろう。ぜひとも頑張って欲しいし、厚生労働省も自らの主張をホームページなどを使って展開すべきだろう。
なお、その際には、「医師の常識」と「国民の常識」のずれをあらかじめチェックすべきである。例えば、「ロハス・メディカル」の「ニュース~医療の今がわかる」をみてみたい。

診療報酬は破綻している~『現場協議会より』
http://lohasmedical.jp/news/2009/11/20103125.php

この記事の3ページ目をご覧いただきたい。勤務医の給与が1200~1500万円前後なのに対して、看護師は、500万円前後。給与が高すぎるといっても医師の半分程度。このような数値を明らかにした後に「病院が赤字になっているから、診療報酬を引き上げろ」「医師の給与が安いので、なり手がいない」と主張しても、なかなか通らないだろう。
どう考えても赤字になっているのは「経営の失敗」なのだから、突出している医師の給与を引き下げて、それでもどうしようにもならなくなってから、診療報酬を引き上げて欲しいと主張すべき。自分たちの「失敗」を棚に上げ、経営努力も不十分なまま。言われるがままに診療報酬を引き上げてよいのだろうか... その引き上げ分を保険料と税金などで負担する国民の大半はそのように考える。その感覚のずれに気づかずに「このままでは、地域医療が崩壊する」などと主張すると反発を招くだけである。

どちらの主張が通ることになるのかは別にして、国が積極的に情報を開示・提供して議論を促し、予算編成の過程を「透明化」することは、とても良いことである。


財務省
平成22年度予算編成上の主な個別論点
http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/h22/kobeturonnten.htm