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事業仕分けの結果を受け、9項目の予算見直し指針決定 子ども手当は後退か

2009年11月20日 10時09分24秒 | 予算・事業仕分け
事業仕分けの前半5日を終えた成果は、いわゆる「埋蔵金」を含めて、1兆3千億円程度。これでは、目標の3兆円に届かないだろうし、税収の落ち込みを考えると、目標に達したとしても予算編成は厳しい。このように2日前に書いた。本日、さっそくと次の2つの動きがあった。

1つめは、事業仕分けの結果を受けての概算要求の見直し指示である。仕分けの対象になったのは、事業全体の1割程度。その結果を受けて類似の事業は合わせて見直す(査定する)ことは明らかにされていた。19日に開催された行政刷新会議にて、概算要求=予算の見直しの指針が明らかになった。それは、次の9つで、

独立行政法人などの過剰な基金返納
省内や他省庁間での類似事業の重複排除
補助金交付での不必要な団体の関与排除
モデル事業は必要性、効果を厳格に検証
広報、イベント経費は費用対効果を検証し、予算削減や重点化
情報技術(IT)調達の導入・運用コスト見直し
独立行政法人、公益法人向け支出の必要性検証
特別会計の必要性検証
地方に権限・財源を移管する方向で見直す

である。
この指針を受けて、省庁が概算要求を見直して報告することになる。予算を編成できるか、という危機的な状況なので、多少でも削る余地のあれば、どんどん削ってほしい。このブログで後半に注目している「安心ジャパンプロジェクト(経済産業省)」は、上記指針の3つ(重複、モデル事業、IT)が該当している。地域の課題への取り組みなので、地方に移管できるなら4つ。中間報告と指針の決定を受けて、前半よりも厳しく仕分けることになると思われるので、これまで以上に両者の攻防が楽しみである(少々、不謹慎か)。


2つめは、マニフェストに関連する事業も「聖域」なく見直すとの国家戦略室の方針である。予算編成に困っている財務省も同調している。こども手当の予算2.1兆円も無事では済まないらしく、来月上旬には、事業内容や金額の算定根拠などの本格的なヒアリングが予定されているとのこと。長妻大臣は「所得制限なし、全額国費」、鳩山首相も「所得制限を設けないことが基本理念」と改めて述べているが、藤井大臣や管大臣は、所得制限を設けることや、地方自治体や事業主が財源を一部負担することも「議論の対象になる」と述べている。こちらも、両者が牽制し合っているような状況である。

「所得制限なし」貫く=子ども手当-長妻厚労相
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-091119X987.html

子ども手当、地方や企業も負担検討…菅国家戦略相
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20091119-567-OYT1T01242.html

次の国会に提出が予定されている「子ども手当法案」は、実は「児童手当法改正法案」である。もし、所得制限を設けて、全額国費の方針から後退することになれば、実質的に、児童手当を「子ども手当」に名称変更するだけになる。その間にも、扶養控除の廃止などの税制の見直しは粛々と進められるだろう。そうなると、子育て中の世帯の多くは負担増になり、さすがに国民の理解は得られない。(参議院選挙があるため)何とか知恵を絞らなければならないが、この財政状況では「無い袖は振れない」のも事実。圧縮できなかった分は他の省庁が被ることになるのだから、厚生労働省には、なりふり構わず、お金をかき集めて吐き出す姿勢(誠意)が求められる。
なお、所得制限を設けるか否かは、子ども手当法の理念と目的にも関わることである。例えば、子育て中の世帯の経済的な負担を軽減するための手当と位置づけるならば、所得制限はあってよい。しかし、子どもに対する手当であり、子育てを担う世帯(世帯主=親を想定して)に支給すると位置づけるならば、所得制限は設けないとすべき。法の理念と目的に関わることなので、財政面のみから決められるものではない。