制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

療養病床の削減を「凍結」 大量の「介護難民」を出さないために

2009年11月06日 10時12分40秒 | 高齢者医療・介護
介護型療養病床の廃止と医療型療養病床の削減を「凍結」し、全面的に見直す方針が明らかになった。

療養病床の削減凍結、長妻厚労相が方針
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20091102-567-OYT1T01147.html

<療養病床>介護型全廃「凍結」 厚労相、見直し明言
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20091103ddm002010036000c.html?C=S

医療費は、病院の病床数(ベッド数)に比例して大きくなる。また、入院期間が長くなれば、それだけ大きくなる(病院は「経営」のために、ベッドの空きを無くし、回転率を上げようとする。入院患者がいれば、それだけの医療費がかかるのだから、比例するのは当然。逆に考えれば、ベッド数を減らせば、医療費は下がるはず)。そのため、政府は、医療費の伸びを適正化するために病床数を増やさないようにし、かつ平均入院日数を削減しようとしている。しかし、退院後の「受け皿」となることを期待されていた地域の医療・介護の体制整備は遅々として進まず、このまま療養病床の削減を強行しては、大量の「介護難民」が出ることは避けられない。それゆえの方針転換だと思われる。

しかし、このブログで書いてきたように、都市部の高齢化が一気に進む。なかでも首都圏の高齢者数は1000万人を超える。その2割に医療・介護のニーズがあるとすれば、単純に計算すると数十万の単位で病床が足りなくなる。都心には、それだけの病院や施設を整備できないとすれば、「要介護になれば、住み慣れた地域や自宅から離れなければならない」社会となる。

それでは、都市部から「介護難民」が出ないようにするためにはどうすればよいのだろうか。療養病床の削減を「凍結」し、さらに高齢者の急増を見越して、病院や施設を整備すればよい。本当にこのように考えてよいのだろうか。

さきほど書いたように、本人がいかに望もうが、要介護になれば、住み慣れた地域や自宅に戻ることはできなくなる。家族や友人・知人から切り離されて郊外の病院や施設で、一人寂しく過ごさなければならない。これこそ「介護難民=棄民」なのではないだろうか。

入所する施設がみつからずに不安を抱える人たちも「介護難民」だし、幸いなことに入所できた人たちも同じく「介護難民」である。今から迎える超高齢社会においては、視点をこのように切り替えなければならない。

医療や介護が必要になったとしても、住み慣れた地域や自宅に居ることができる、誰にも遠慮することなく「早く良くなりたい。退院して自宅に戻りたい」といえる社会をつくることこそ、「介護難民」を出さないための唯一の解だろう。
今、まさしく取り組まなければならないことは、大規模な病院や施設などを建てることではなく、医療や介護が必要になったとしても地域や自宅に戻れるように、訪問診療や訪問看護、在宅系の介護・福祉のサービスを充実させることである。
このブログで書いたように、首都圏の高齢者が1000万人を超えるのは2015年。あと6年である。「危機」に直面してから対策を講じていては間に合わない。地域保健~地域医療~地域福祉と連なる地域の体制整備には時間がかかる。今から計画的に進めても間に合わないかもしれない。これぐらいの危機感をもって取り組むべきである(地域の問題なのだから、東京都を中心に8都県が集まって議論してはどうだろうか。厚生労働省の動きを待っていては間に合わないし、当事者意識をもって取り組むべきことである)。