制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

事業仕分けの結果、中央社会保険医療協議会が「大荒れ」

2009年11月14日 10時08分51秒 | 予算・事業仕分け
1日目と2日目の事業仕分けで、診療報酬を見直すようにと評価されたことを受けて、中央社会保険医療協議会(中医協)が大荒れになったようである。これまでの議論を尊重することなく、一方的に「従来どおりの診療報酬の配分では、医師不足問題の解決にはつながらない」「開業医の点数を下げ、勤務医に合わせて欲しい」「診療所優遇を廃止すべき」、薬価では「後発品の薬価並みまでの引き下げ」「市販品類似薬は保険給付の対象外にすべき」などと指摘されたことへの感情的な反発(特に医師側)が強かったからだと思われる。

新聞報道からは「町のおじさんおばさんが集まって医療の議論をしている」など、典型的な「医師」ならではの意見もあったようである(正直なところ、恥ずかしい...)。もはや、「ヒポクラテスの誓い」の時代ではない。「医療の知識は医師のもの、それ以外の誰にも与えない」「患者に利すると思う方法を医師が選択する(ゆえに、患者=国民はそれに従えばよい)」とも読める誓いは、今の時代に通用しない(他には重要なことが誓われているので、パターナリズム的な部分のみ解釈を改めればよいだけなのだが)。
もし、今日の医療がどのような状況にあるのか、診療報酬をどのように見直すべきかをきちんと考えているならば、誰にでもわかるように説明する責任がある。国民=患者の多くは医療の知識がないのだから、専門家である我々=医療関係者に任せてほしい。国民のためになるように考えておくから大丈夫(知ろうとしなくてよい)というスタンスだとすれば、そこから変えないと、翌年度も同じように「見直し」と仕分けられることになるだろう。

対立を避ける方法は、中医協の議論を完全にオープンにすること、医療の知識が乏しくても何が問題でどのように変えようとしているのかわかるように説明すること(あるいは、公開された議論の意味を噛み砕いて説明する第三者が多くあらわれること)だろう。情報の格差を埋めるような工夫をしないと、両者の間に広がる溝は埋まらない。その結果、毎年のように「見直し」と「抑制」を求める仕分け側と、「素人の国民にはわかるまい」と従おうとしない中医協=医師という「対立の構図」が植えつけられてしまう。その場合、後者が不利になるのは間違いない。ただでさえ、地域住民を「人質」にして、待遇改善と診療報酬の引き上げを求めている(貧困率がこれだけ高まっている時代に、医師は、どれだけ稼げば満足するのだろうか)と思われているのだから、これ以上の反感を買うような動きは控えたほうがよいだろう。
国民の多くは、医療の知識がないに等しい。実際のところは、医療関係者に任せるしかないのだから、それこそ「ヒポクラテスの誓い」に従って尊敬を集めるように行動してほしい。

中医協:事業仕分けの診療報酬議論を批判
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091113k0000e010061000c.html


厚生労働省側は、政務三役に外部委員6名を加えたチームを立ち上げ、今後の医療の在り方(中長期的なビジョン)について検討を始めているらしい。ニュースで報じられておらず、議事や資料は非公開なので、漏れ聞こえることを書いておきたい。話し合われたことは、勤務医の待遇を改善するための方策(診療報酬上でどのように評価するか)、チーム医療や在宅で療養生活を続けるにあたっての医療・看護・介護・福祉の連携体制のあり方など(昨日に書いた、どこかの実証事業のキーワードと重なる...)。次回の会合は、今日(11月14日)。
なお、外部委員は、以下の通り。増員もありうるとのこと。

有賀徹(昭和大病院副院長・医学部教授)
海野信也(北里大病院副院長・産婦人科教授)
大久保一郎(筑波大教授)
小野俊介(東大大学院准教授)
楠田聡(東京女子医科大母子総合医療センター教授)
松田晋哉(産業医科大教授)


なお、3日目の仕分け結果の詳報は、以下のURLを参照していただきたい。

仕分け結果の詳細(11月13日分)
http://www.47news.jp/CN/200911/CN2009111301000870.html