制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

後期高齢者医療制度、改革会議を月内発足へ

2009年11月09日 10時18分23秒 | 高齢者医療・介護
厚生労働省から、後期高齢者医療制度に代わる新制度を検討する「高齢者医療制度改革会議」を今月中に発足させることが発表された。また、合わせて、以下の「6原則」も明らかになった。

1.後期高齢者医療制度は廃止する
2.民主党のマニフェストで掲げている「地域保険としての一元的運用」の第一段階として、高齢者のための新たな制度を構築する
3.後期高齢者医療制度の年齢で区分するという問題を解消する制度とする
4.市町村国保などの負担増に十分配慮する
5.高齢者の保険料が急に増加したり、不公平なものになったりしないようにする
6.市町村国保の広域化につながる見直しを行う

多くが民主党のマニフェストに掲げられてきたこと、長妻大臣が明言してきたことだが、原則の2と3をどのように解釈すればよいのだろうか。2では、高齢者のための新たな制度をつくるとし、3では、高齢者=年齢で区別した制度にしないとしている。このままでは矛盾していると受けとめられるので、例えば、「第一段階は、高齢者のみの医療保険制度だが、市町村国保の広域化を手始めに都道府県単位で医療保険者を統合・再編するので、その後は、一元的に運用=統合することになる」などと現時点の基本的な考え方をわかりやすく発表し、広く意見を求めてはいかがだろうか。
また、後期高齢者医療制度を「廃止」したとしても、高齢者であっても被保険者なのだから保険料の納付義務は無くならないし、医療費の自己負担も無くならないと早い段階でアナウンスしておかないと、新制度への(過剰かつ非現実的なまでに膨れ上がった)期待を裏切ることになる。会議での議論をすべてオープンにし、国民の関心を高めるようにすべきだろう。

このブログで書いてきたように、後期高齢者医療制度を「廃止」することはできない。医療保険制度をどうつくり直していけばよいのかという「あるべき論」と、既に「廃止」が明言されている後期高齢者医療制度をどう変えるのかという「現実論」を並行して考える必要がある。また、老人保健制度に戻さないことも明言されている。打ち手は限られている。市町村国保を広域化すると、国保連合会の役割が小さくなるなど、思わぬところにも影響が及ぶ(全体からみれば、小さな話だが)。新たな保険者は市町村か都道府県か、それとも曖昧にして広域連合とするのか。利害の対立の解消を避けて通ることはできないので、学者の理想論では動いていかない。逆に、実務的にアプローチすると大きな流れが見えなくなってしまう。このような制約条件下でバランスよく議論でき、実際に手を動かすことができる人は、本当に限られている。この会議の事務局が探し出せるだろうか。

これまでのように役人が下案をつくって審議会や委員会を招集、事務局に都合がよいように作文しつつ、いかにも有識者が議論した結果の「答申」を受けて実行に移すという進め方からどう変わるのか、注視していきたい。

後期高齢者医療制度廃止に向けた検討開始へ―厚労省
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-25087.html

後期高齢者医療制度、改革会議を月内発足へ
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20091106-567-OYT1T01167.html