制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

子ども手当法案、今国会への提出見送り 一人親世帯の貧困率 54%

2009年11月15日 10時12分03秒 | 子ども手当・子育て
事業仕分けに注目が集まっているなか、民主党の目玉政策の一つである「子ども手当」関連法案の今国会への提出が見送られたとのこと。手当の裏づけになる税制改定の議論(扶養控除の廃止)が進んでいないためである。来年には参議院選挙があり、それまでに間に合わせないと「公約違反」となるので、次の国会までに税制改定の議論を決着させて財源を確保し、法案の提出、6月後半から支給開始というスケジュールを描いているようである(夏までに支給を開始するためには、並行して支給事務の検討を進めておかなければならない。規模が大きいので、ITシステムの改修・導入が必要になるが、その経費を計上しておく必要がある。「表」では無駄を激しく追及しつつ、「裏」では未だ国会に提出していない法案のための経費を確保するようなことをしてよいのだろうか)。

いかにも「参議院選挙対策」の感があるが、厚生労働省のみで進められる話ではないので、調整が難航しているのだろう。

事業仕分けで概算要求を圧縮し、マニフェスト実現に必要な予算を確保しようとしているが、搾り出すにも限度がある。例えば、生活保護の母子加算(約60億円)は、政治判断で今年度の予備費から出すことになったが、来年度の概算要求では「事項要求」に留まっている。財務省は、事項要求の事業には、基本的に予算をつけない方針である。母子加算を復活させた後は、父子家庭にも支給するとしており、実現すると財源がさらに必要になる。児童扶養手当を減額するなどの交渉条件を出して必要な財源を捻出すると報じられているが、事業仕分けの結果と今後の査定、折衝次第でどうなるかわからないということになる。
単純に「母子加算が復活」「父子家庭にも支給される」と喜んではいられない。別の誰かのところ(児童扶養手当が支給されている家庭など)にしわ寄せがいくことにも配慮しなければならない。

そのようななか、13日には、母子家庭などの一人親世帯の相対的貧困率が54.3%(2006年時点)、OECD加盟の先進30カ国のなかで最悪の数値であることが明らかにされた。このブログでも紹介した「相対的貧困率15.7%」の算出に使ったデータから、一人親世帯のみを抽出して導き出した数値である。これだけの明確な差があるのだから、「一人親世帯」がいかに不利な社会であるかは明らかである。さらに細かく分析すれば、母子家庭の困窮ぶりが明らかになると思われる。別の調査だが、父子家庭の7割が常勤であるのに対して、母子家庭は4割に留まる。子育てと仕事の両立が難しく、パート勤務では生活を支えきれない。頑張って働いても収入が生活保護世帯を下回ってしまう「ワーキングプア」の母親が多いということだろう。
同時に明らかになった2000年時点の数値(63.1%)より10ポイント近く改善されているといっても、一人親世帯の半数が未だ貧困状態にあることには変わりない。何らかの手を早急に打つ必要があり、しかも、これまで打ってきた手は、それほどの効果がなかったということである(厚生労働省は、これらの数値を把握していながら公表していなかったのだから罪は大きい。これも政権交代の成果の一つである)。

貧困 1人親世帯の54% 30カ国で日本最悪
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/m20091114031.html


社会保障制度全体を見直すにあたって、公的扶助を充実させるのはもちろん、子育てをしやすい社会にいかに変えていくか、子育て中であることがハンディキャップにならないようにするためには何をしなければならないのか(明確な「差別」が堂々と行われているのだから)をしっかり考えるべきである。