制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

厚生労働省の調査で「低所得世帯」と「生活保護受給世帯」の実態が明らかに

2010年04月10日 08時27分05秒 | ベーシックインカム
厚生労働省は、所得が生活保護受給の基準となる「最低生活費」を下回り、貯蓄もない世帯が全国で337万世帯にのぼる可能性があること、その「低所得世帯」のうち、生活保護を受給していない世帯が229万世帯(68%)あるとの推計を公表した。
この推計のもとになったのは、2007年の「国民生活基礎調査」で、総務省が2004年に実施した「全国消費実態調査」の結果(低所得世帯は142万世帯、生活保護を受給していない世帯は45万世帯(32%))とは大きな違いがある。調査と推計の方法の違いによるものと思われるが、ここ数年でいわゆる「ワーキングプア」が増えていること、所得の漸減(年収300万円どころか、「年収200万円時代」も覚悟しなくてはならない現状)が続いていることから、生活実態の厳しさは増しているものと思われる。

水準より低収入でも生活保護未受給229万世帯
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20100409-567-OYT1T01200.html

年収300万円なら十分“勝ち組”に?給料の「無限デフレスパイラル」が始まった
http://news.goo.ne.jp/article/diamond/business/2010040907-diamond.html

詳細なデータは厚生労働省のホームページをご覧いただきたい(まだ公開されていない)。
推計にあたっての全世帯数は、4800万。そのうち229万世帯(約5%)が最低生活費を下回っている。母子世帯74万世帯の約30%の22万世帯が、単身高齢世帯439万世帯の約10%の44万世帯が最低生活費を下回っている。このブログで何度か取り上げているが、母子世帯などの生活の厳しさが統計的にも裏付けられたといえる。

同時に明らかにされたのは、生活保護受給者の自殺率の高さである。10万人あたりの自殺者数は、全国民平均25.3人に対して生活保護受給者は54.8人と2倍となっている(2008年)。調査結果によると、153万7893人のうち843人が自殺し、その約7割の581人は何らかの精神疾患を抱えていたとのこと。精神疾患があるがゆえに生活に困窮して生活保護の受給、自殺へと進むこともあれば、生活に困窮したことがきっかけとなって精神疾患(たとえば、重度のうつ)を引き起こすこともあると考えられる。

生活保護受給者、自殺率2倍=精神疾患が影響か-厚労省調査
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/nation/jiji-100409X831.html

支払基金、厚生労働省の省内事業仕分けの対象に

2010年04月07日 22時32分24秒 | 予算・事業仕分け
支払基金を取り巻く状況が厳しさを増している。
7日の報道発表で、厚生労働省が独自に行う事業仕分けの第1回の対象として、独立行政法人の「雇用・能力開発機構」と特別民間法人の「社会保険診療報酬支払基金」の2法人が発表された。いきなり「廃止」といった派手なパフォーマンスはないと思うが、仕分け人は、学識経験者・企業経営者・首長・一般市民ら25人なので、これまでのような「暗黙の了解」は通じないだろう。

厚労省、独自の省内事業仕分け…刷新会議に先行
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100407-567-OYT1T01097.html

厚生労働省省内事業仕分け(第1回)の実施について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000005kvm.html

事業仕分けの実施は4月12日(月)だが、それまでに大きな山を迎える。
明日の8日(木)には、厚生労働省で「審査支払機関の在り方に関する検討会」の第1回会合が開催される。昨年の事業仕分けでは、支払基金と国保連合会の統合やレセプト審査の適正化を行うなどの「見直しを行う」とされたことから、被用者保険の審査支払を行っている支払基金と国民健康保険の審査支払を行っている国保連合会で共通して持っている機能をどちらかに片寄せしたり、組織ごと統合したりといった方向に議論が進む可能性は否定できない。
支払基金を取り巻く環境がこれだけ厳しさを増しているということは、片寄せの先は国保連合会ではないかとも思われる(厚生労働省は「廃止」や「統合」に向けての既成事実の積み上げを図っている?)。

レセプト請求の審査の効率化も協議―厚労省が検討会
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-27049.html

検討会は4月中に2回開催の予定。省内事業仕分けを加えた3つの山を越えた先には、さらに注目を集める事業仕分け・第2弾が待っている。このブログでも取り上げているように、事業仕分けの後半戦(5月2日頃からの4日間)は公益法人・特別民間法人で、支払基金は特別民間法人の例として出されるほどの扱いとなっている。GW期間中に「民主党政権の成果」をアピールするネタ(シンボリックな存在)として扱われたりすると、この流れが加速するかもしれない。

7日には、事業仕分け・第2弾で対象となる独立行政法人の候補が明らかになった。11府省所管の54法人で事業数は100以上(厚生労働省が所管する法人は、福祉医療機構や高齢・障害者雇用支援機構など8つ)。官僚OBの天下り状況や事業執行の効率性、公益法人などに業務委託する「中抜き」構造の有無、民間への事業移管の可否など、このブログでも取り上げてきた観点から選定したもので、事業仕分けでは、各法人が実施している事業の内容を精査して廃止や見直し・民間への移管などの判定を下すことになる。

50法人超が対象=国民生活センターや住宅金融機構-事業仕分け第2弾
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100407X321.html

仕分け対象候補の独立行政法人
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201004/2010040700827&rel=m&g=pol

第1回生活保護受給者の社会的な居場所づくりと新しい公共に関する研究会、開催される

2010年04月06日 09時13分41秒 | ベーシックインカム
厚生労働省は、「生活保護受給者の社会的な居場所づくりと新しい公共に関する研究会」を立ち上げ、第1回会合を開催した。
不況の影響で生活保護の受給世帯・受給者は増加を続けており、昨年12月の統計データによると全国で約181万人。申請の急増で職員・ケースワーカーの対応が追いつかず、自立支援までつながっていないケースが増えている。

生活保護は「セーフティネット」であり、本来は一時的なものであるべき。保護費を支給して当面の生活を支えると同時に「自立」に向けて様々な支援をし、生活保護から抜け出すような運用をしないと、生活保護の受給世帯・受給者は増え続けることになる。しかしながら、市町村の職員は当面の仕事に追われていることに加えて、ケースワーカーとしての専門教育を受けた職員が十分にいないこともあり、必要な自立支援をしようにもできない。その結果として、受給者が地域社会から孤立したり、勤労意欲を失ったりするケースがあると指摘されている。この悪いスパイラルに早く楔を打ち込まないと、状況はさらに悪化していくことになる。
しかし、市町村の職員が手探りで取り組んでいるようでは限界がある(ようやくわかってきた頃にローテーション人事で異動してしまうため、ノウハウを蓄積できない)。また、ホームレスや生活保護の受給者(生活困窮者)を支援する民間の力にも限界がある。

そのため、厚生労働省は、研究会を立ち上げ、先進的な取り組みをしている地域や団体から意見をきくなど支援のあり方を研究して夏頃までに提言をまとめるとのこと。状況の悪化を食い止めるために、自立支援の「成功事例」を取り上げ、共有するだけでも意味がある。実効性ある提言を期待したい。

5日の第1回会合では、地元の介護事業者や農家の協力を得て職業体験の機会をつくり、社会参加・就労を促している北海道・釧路市の取り組みとホームレスの自立を支援する東京都・新宿区の取り組みが紹介された。これらを、全国の市町村で実践できるように汎用化し、専門教育を受けていなくてもある程度の生活支援・自立支援ができるように取りまとめていただきたい。

生活保護支援探る研究会 厚労省、民間の力活用
http://www.47news.jp/CN/201004/CN2010040501000799.html

事業仕分け・第2弾 日程などが明らかに

2010年04月05日 09時09分34秒 | 予算・事業仕分け
事業仕分け・第2弾に向けての準備が整いつつある。
既に行政刷新会議が公費からの収入が多い公益法人を対象としたヒアリングを3月9日から実施(331法人)。独立行政法人は98の全てのヒアリングを実施している。
現時点でヒアリングを実施できていない公益法人は、872(絞り込み後の法人数)。これを民主党の「一年生議員」の95人(衆議院89人、参議院6人)が省庁ごとの10のグループに分かれて事前調査する。調査レポートを12日の地域主権・規制改革研究会(民主党)に報告、仕分け対象となる公益法人を絞り込む。最終的な選定は20日頃になる予定。

「仕分け調査員」に新人95人=民主
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100402X593.html

事業仕分け第2弾、23日から 新人95議員が事前調査
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/K2010040204840.html

一年生議員にとっては、実績のアピールになる。例えば、GW期間中に地元に帰って、「事業仕分けに関わった。実際に公益法人をみて改革を進めなければならないと感じた」などと演説できれば、支持率の回復や票の獲得につながると考えるだろう。1週間しかないが、これまでアピールする場が限られていた議員にとっては、またとないチャンス。全力で取り組むものと思われる。

枝野氏が「仕分け調査人」にエール
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/snk20100403049.html

事業仕分けは、以下のスケジュールで実施される。

前半戦
 4月23日・26~28日の4日間
 独立行政法人

後半戦
 5月2日頃から4日間
 公益法人・特別民間法人

仕分け前半戦は独法 20日にも対象選定
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/politics/CO2010040301000400.html

子ども手当法の施行前日(3月31日)に通知などが明らかに

2010年04月02日 23時22分39秒 | 子ども手当・子育て
子ども手当法案が成立後、外国人の子どもや児童福祉施設に入所する子どもへの支給に関してバタバタといろいろなことが決められた。その結果として、施行後に政令・省令、通知などが出されることになった。3ヶ月後には支給が始まるので、当然のことながら、事務処理システムへの反映には限界がある。1年限りの法律なので、いかに運用でカバーするかを考えなければならない。
後期高齢者医療制度で政令・省令や通知などを出すタイミングが遅れたために混乱を招いたことは記憶に新しい。国会での議論が施行の直前まで続いたことから仕方ない面もあるが、このしわ寄せは市町村に、さらにその先の国民に行くことになる。余裕を持って準備が進められるよう、政治主導の「前倒し」はほどほどにしておいていただきたい。

子ども・子育て
子ども手当について・関係資料

【法律】
平成22年度における子ども手当の支給に関する法律

【政令・省令】
平成22年度における子ども手当の支給に関する法律施行令
平成22年度における子ども手当の支給に関する法律に基づき市町村に交付する事務費に関する政令
平成22年度における児童手当法及び平成22年度における子ども手当の支給に関する法律第20条第1項の規定により適用する児童手当法に基づき一般事業主から徴収する拠出金の拠出金率を定める政令
平成22年度における子ども手当の支給に関する法律施行規則

【通知】
平成22年度における子ども手当の支給に関する法律等の施行について(厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)
平成22年度における子ども手当の支給に関する法律における外国人に係る事務の取扱について(厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)
市町村における子ども手当関係事務処理について(子ども手当市町村事務処理ガイドライン)(厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)
平成22年度における子ども手当の支給に関する法律等の施行に伴う児童手当関係通知の取扱について(厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課長通知)
子ども手当の寄附に係る事務の取扱いについて(厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課長通知)
子ども手当関係歳入歳出予算科目について(厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課長通知)
子育て支援対策臨時特例交付金(安心こども基金)の運営について(文部科学省初等中等教育局長・厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)
平成22年度における子ども手当の支給に関する法律の施行に伴う児童福祉施設に入所する子ども等への特別の支援について(厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)

【参考】
「平成22年度における子ども手当の支給に関する法律における外国人に係る事務の取扱いについて」のポイント
平成22年度における施設入所児童等への特別支援事業について

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/osirase/100402-1.html

外国人に関しては、支給要件の確認の厳格化が求められている。
具体的には、年に2回以上子どもと面会が行われていること(監護)、年に3回(概ね4ヶ月に1度)は生活費、学資金等の送金が継続的に行われていること、来日前に親と子どもが同居していたことを確認すること、提出を求める書類を統一して厳格な確認を行うことなどが求められている。

平成22年度における子ども手当の支給に関する法律における外国人に係る事務の取扱いについてのポイント
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/osirase/dl/100402-1q.pdf

市町村には、外国人からの問い合わせが相次いでいるとのこと。とはいえ、支給にあたってこれだけの厳格な確認が必要になれば、市町村の体制を強化しなければならなくなるかもしれない。

海外在住の子ども手当、年2回面会など条件
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100401-567-OYT1T00084.html

子ども手当法、きょう成立 外国人申請殺到も 財源いまだ綱渡り
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/m20100326013.html

審査支払機関の在り方に関する検討会、開催予定が明らかに

2010年04月01日 21時09分02秒 | 情報化・IT化
このブログで何度か取り上げているが、日本の審査支払機関には、47都道府県ごとに1つずつの国保連とそれらを中央で取りまとめている国保中央会(国民健康保険分)、47都道府県ごとに支部を置く支払基金(被用者保険分)の2種類がある。
後期高齢者医療制度の廃止に向けて、市町村国保を広域化・都道府県単位化すれば、全国で保険者数は47となる。被用者保険は、健保組合がどれほど残るかわからないが、解散して協会けんぽに加入する傾向が続けば、残る健保組合と共済組合をすべてをくっつけて協会けんぽを47の支部にわけることも視野に入ってくる。
医療保険者を都道府県単位でまとめていくとすれば、国民健康保険分と被用者保険分の2種類ある審査支払機関は1つにしても十分ではないかということになる。

現状は、そこまで至っていないが、厚生労働省は「審査支払機関の在り方に関する検討会」を立ち上げ、

・審査支払機関の組織の見直し
・審査支払機関の競争の促進
・審査支払業務の効率化、民間参入の促進

の3点について話し合うことにしたようである。

審査支払機関の在り方に関する検討会の開催について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000005hil.html

組織の見直しについては、これまで紙が大半を占めていたレセプト(請求書)は、オンライン請求の原則化によって電子化が進んでおり、ITシステムによる審査(機械的に実施できる単純なもの)が増えている。今後も電子化を進めていくことになれば、審査支払機関はかなりスリムな組織となる。これは、隣の国=韓国の医療ITの取り組みをみれば明らかである。

次の競争の促進については、これまでも支払基金が市町村国保から審査支払を受託できるようにしようとか、その逆もできるようにしようといった話はあり、法的にはできるようになっているが、実際に委託先を変えたというニュースはみたことがない。2種類の審査支払機関はあるけれども、両者間で競争はないといえるのではないか、という指摘から議論が始まると思われる。

最後の効率化や民間参入の促進については、なかなか簡単ではないだろう。単純な効率化は、電子化を進めてITシステムで行う審査を増やす、専門的な判断を必要とする疑わしいレセプトから順番に並べるといったことが考えられるが、これまでのように日本医師会が反対にまわるだろう。効率的に審査をしている国保連や支払基金の支部がもつノウハウを展開するといったことはすぐにできそうだが、その程度では効率化に入らないと指摘されそうである。
また、民間参入の促進については、少々無理があるだろう。レセプトには診療科や病名などが記載されているため、センシティブな個人情報と位置づけられる。いくら審査のノウハウがあり、請求支払の間にはいる財務力があるとしても、民間企業がレセプトを処理することは、そう簡単には認められることではないと思われる。「規制・制度改革に関する分科会」のテーマとしてあがってもおかしくないと思うが、個人情報であることを疎かにはできないだろう。

4月8日(木)に第1回、22日(木)に第2回が開催される。その後は月に1度程度の開催で、年内に提言をまとめる予定。国保連や支払基金は、国民にそれほど知られている組織でない。事業仕分け・第2弾で大々的に取り上げられるぐらいのことがなければ、新聞各社はそれほど報じないだろう。厚生労働省のホームページに公開される情報をしっかり追いかけていきたい。

レセプト請求の審査の効率化も協議―厚労省が検討会
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-27049.html