制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

事業仕分けの次は「規制仕分け」 公開の場で規制のあり方を議論

2010年02月28日 10時01分09秒 | 予算・事業仕分け
3月上旬にも、行政刷新会議の下に「規制・制度改革分科会」が設置され、環境・医療・農業などの規制改革の議論を本格的にスタート、6月までに一定の結論を出すことが明らかになった。
内閣府の規制改革会議の設置は、平成22年(2010年)3月31日までとなっていることから、この組織の後継と位置づけられる。

内閣府本府組織令(抄)
附則(規制改革会議の設置期間の特例)
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/about/rules/organization.html

時事通信によると、規制の改革への省庁や業界団体の抵抗が強ければ、「事業仕分け」と同じように、公開の場で規制のあり方を議論し、見直しを求める「規制仕分け」を実施することも検討しているとのこと。

「規制仕分け」も検討=行政刷新分科会、来月スタート
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100227X045.html


このブログに関係する分野は、「医療」だろう。これまでも混合診療のあり方について議論されてきたが、日本医師会と一体となった厚生労働省にことごとく潰されてきた。その他の分野においても同様である。例えば、厚生労働省がモデル事業を実施しようとしている「特定看護師」に関しても、日本医師会は「日医のすべてを懸けて反対ということを申し上げてまいりたい」と、断固として創設を阻止する考えを表明している。

「日医のすべてを懸けて反対」―「特定看護師」創設に羽生田常任理事
https://www.cabrain.net/news/regist.do;jsessionid=2ACB16B01ACB865A62547AA64AD39119

このブログでも取り上げたが、日本医師会は、医師法第17条「医師でなければ、医業をなしてはならない」を根拠とする規制に関しては、いかに社会的に必要とされているとしても、絶対に譲らないと思われる(どう出てくるか、とてもわかりやすいともいえる)。例えば、救急車で急病人を運んでいる間にできる医学的な処置は限定されている。なぜなら、救急車には医師が乗っておらず、いかに緊急を要していたとしても医師でない者が医学的な措置をしてはならないからである。人命を左右しかねないこのような規制は数多くある。医療分野における究極の「規制仕分け」は、医師法第17条の見直しだろう。

医師にとって、自らが独占している領域が崩れることは絶対に避けなければならないことである。国民の前に出して「規制仕分け」しなければ、厚生労働省と日本医師会(省庁と業界団体)の抵抗を崩すことはできないだろう。ぜひとも実現してほしい。

事業仕分け・第2弾、仕分け対象の7基準が明らかに

2010年02月27日 09時58分31秒 | 予算・事業仕分け
枝野大臣が26日の記者会見で、4月にも始める予定の「事業仕分け・第2弾」で対象となる公益法人の「絞り込み基準」を明らかにした。公益法人の実態は良くわからないが、2008年12月の時点で6625もあるとのこと。このすべてを仕分けようとすると、大変な時間と労力が必要になるため、以下の7つの基準であらかじめ絞り込む。
7つの基準は、

・2007年度時点で国または独立行政法人から1000万円以上の公費支出を受けたこと
・法令で国から権限を付与されていること
・収入に占める公費からの支出が5割以上あること
・天下り(官僚OB)を受け入れていること
・財産が10億円を超えていること
・地方自治体から支出を受けていること
・国からの公費支出を受けた法人のうち、その事業をさらに外部に委託していること

で、これらのいずれかに該当する公益法人は数千にのぼるとの見通しが明らかにされた。絞り込み作業のステップは、(1)7基準による機械的な抽出、(2)事業内容の調査、(3)事業仕分け対象の選定となり、4月までにここまで終えるとのこと。事業仕分けの場では公費の支出の是非を議論する。
会計検査院によると、公費支出を受けた公益法人は、1848。総額は8263億円。
昨年の事業仕分けで指摘が相次いだ「丸投げ」や「中抜き」の排除、溜め込まれた公費の返還を目的とする。

政府系公益法人の「仕分け」公費支出額など基準
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100226-567-OYT1T00410.html

枝野氏、公益法人仕分けに7基準 天下りの有無など
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/politics/CO2010022601000377.html

仕分け対象で7基準=天下り受け入れなど-公益法人
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100226X844.html

また、この作業に並行して、内閣府のホームページにある「ハトミミ.com」で、職員や国民から問題や見直し策などの意見を募集する(3月23日まで)。

仕分け第2弾へ意見募集
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100223X112.html


ハトミミ.com
独立行政法人及び政府関連公益法人の事業仕分けのための意見募集
http://www.cao.go.jp/sasshin/hatomimi/doppou-koueki.html

(1)独立行政法人の抜本的な見直し
・事務・事業の見直しについてのご意見・ご提案
・組織・管理運営の見直しについてのご意見・ご提案
・独法制度そのものに関する横断的見直しについてのご意見・ご提案

(2)政府関連公益法人の徹底的な見直し
・行政が実施させている事務・事業の徹底的な見直しについてのご意見・ご提案
(行政から政府関連公益法人への無駄な支出、不透明な権限付与など)

健康増進法 第25条の規定見直し 公共施設などでの原則全面禁煙化を通知

2010年02月26日 10時31分12秒 | その他
厚生労働省は、25日、受動喫煙の防止対策として、多くの人が利用する公共施設などでの原則全面喫煙を求める健康局長通知を発出した。

「受動喫煙防止対策について」に関する局長通知の発出について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000004k3v.html

2005年に「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」が発効し、2007年に開催された第2回締約国会議において、「たばこの煙にさらされることからの保護に関するガイドライン」が採択されるなど、受動喫煙を取り巻く環境は変化してきている。今回の通知は、2009年に取りまとめられた「受動喫煙防止対策のあり方に関する検討会報告書」に基づく。
原則全面禁煙となるのは、学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設(健康増進法 第25条)。通知で定められた、その他の多数の者が利用する施設は、鉄軌道駅、バスターミナル、航空旅客ターミナル、旅客船ターミナル、金融機関、美術館、博物館、社会福祉施設、商店、ホテル、旅館等の宿泊施設、屋外競技場、遊技場、娯楽施設、鉄軌道車両、バス、タクシー、航空機及び旅客船など。

<受動喫煙防止策>原則全面禁煙を通知 学校、官公庁、飲食店など--厚労省
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20100226ddm012010012000c.html

「飲食店は全面禁煙」厚労省、都道府県に通知
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20100225-567-OYT1T01054.html

公共施設の全面禁煙を要請=都道府県に通知-厚労省
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/nation/jiji-100225X716.html

「公共施設は原則全面禁煙」厚労省通知 飲食店など対象
http://www.asahi.com/national/update/0225/TKY201002250514.html?ref=goo

この通知は、全国の都道府県や市町村に発出されたもの。飲食店やホテルなどには市町村を通して受動喫煙の対策を求めていくことになる。受動喫煙対策には分煙対策では不十分で、全面禁煙を原則とする。全面禁煙が困難な場合に限り、暫定的に分煙での対応を認めるものの、喫煙可能な区域を明示すること、その区域に未成年者や妊婦が入らないような措置を求めている。また、あくまで暫定的に認めるものであって、将来的には全面禁煙を実現するように求めている。

飲食業界困った、「全面禁煙」厚労省が通知へ
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20100221-567-OYT1T00509.html

これだけタバコへの風当たりが強くなっているにも関わらず、歩行喫煙は減っていないし、吸殻を道端に捨てて平気な人もいる。食事中に近くのテーブルから漂ってくるタバコの煙は迷惑そのもの。この通知をきっかけに欧米並みの全面禁煙化を実現して欲しい。

新たな高齢者医療制度のあり方の4つの意見、運営者の2つの意見

2010年02月25日 10時10分40秒 | 高齢者医療・介護
昨日に続き、「第3回高齢者医療制度改革会議」の資料を整理しておきたい。第4回は、3月8日に開催される予定で、議論のテーマは、費用負担のあり方となる。逆にいえば、第3回のテーマである制度の基本的な枠組みおよび運営主体のあり方については、結論が出るまで検討を進めるものの、議論は先に進める=方針は、ほぼ固まったものと思われる。

新たな制度の4つの考え方は、以下のとおり。

○池上委員案
医療保険者を都道府県単位で一元化する案。年齢による区別をしない。
・市町村国保を都道府県の単位で統合し、広域連合が運営する
・被用者保険(健保組合・共済組合)を都道府県の単位に分割・統合する
・都道府県の単位で、市町村国保と被用者保険を統合する
・後期高齢者医療制度は廃止する

○対馬委員案(健保連)
65歳以上を「別建て」の保険とする案。
・都道府県の単位で、65歳以上の高齢者が加入する医療保険者を立ち上げる
・後期高齢者医療制度の「前期・後期」の区別をしない

○小島委員案(連合)
国保は国保、被用者保険は被用者保険という「突き抜け」の保険とする案。
・被用者保険加入者が退職後も継続して加入できる「退職者健康保険制度(仮称)」を立ち上げる
・市町村国保を都道府県の単位で統合する
・市町村国保と後期高齢者医療広域連を一体的に運営する

○宮武委員案
市町村国保と高齢者医療を一体的に運営する案。
・市町村国保を都道府県の単位で統合する
・市町村国保と後期高齢者医療広域連を一体的に運営する

市町村国保を広域化し、都道府県の単位で一体的に運営する案が有力視されているとのこと。宮武委員案=一定年齢以上の独立保険方式とする案を中心に検討していくことになるだろう。
また、その場合に、運営者を広域連合とするか、都道府県とするかは意見が分かれるところだろう。広域連合は、後期高齢者医療制度で実績があり、事務や市町村との連携への不安はないが、市町村からの出向職員の集まりのため、最終的な責任が不明確であったり、住民からみれば遠いように思えたりなどのデメリットがある。都道府県は、それらのデメリットはないが、保険運営のノウハウがないために事務面での不安がある、市町村の住民への関わりが薄くなるのではないかなどの不安があるなどの、広域連合のメリットを裏返したデメリットがある。
保険者となることを都道府県が受け入れるか、市町村(広域連合)が受け入れるか、引き受ける代わりのインセンティブに何を提示するかという政治的な駆け引きもあるので、メリット・デメリットを単純に比較して決められるものではない。調整がつかなければ、広域連合を基本としつつ、都道府県の関わりを大きくするという折衷案も考えられる。
いずれにせよ、都道府県が医療計画(P)を策定して医療体制を整える(D)。都道府県を単位とする保険者が給付した医療費を分析する(C)。都道府県と保険者が分析結果を評価し、医療体制の見直しなどの対策を講じる(A)という「PDCAサイクル」をまわすことができるようになる。
PDCAサイクルをまわすことで、医療の質を向上させるとともに医療費を抑制することができる。例えば、安い後発薬があるにも関わらず使っていない被保険者や調剤薬局に保険者から通知を出したり、何度も同じ検査を受けていたり、そのたびに同じ薬を処方されていたりする被保険者などに通知を出すといった計画(P)を立て、実際にやってみる(D)。被保険者の受診行動がどのように変わったか、医療費をどこまで適正化できたかを評価し、取り組みを総括する(CA)。保険者の規模を大きくし、医療機関などとの力関係を健全なものとすることで、日本の医療を変えることができるかもしれない。

市町村国保の広域化に向けての「広域化等支援計画」の概要が明らかに

2010年02月24日 10時11分30秒 | 高齢者医療・介護
今月9日に開催された「第3回高齢者医療制度改革会議」の資料が公開されている。今日は、その資料から、市町村国保の広域化に向けた動きを取り上げたい。

第3回高齢者医療制度改革会議
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/02/s0209-6.html

資料2:本日の議題に関する基本資料
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/02/dl/s0209-6b.pdf

資料2の参考資料によると、国は、都道府県が市町村と協議しつつ市町村国保の都道府県単位化を進められるようにしたいと考えている模様。そのため、都道府県が以下のことを実施できるようにする(インセンティブをつけて)。

・保険財政共同安定化事業の拡大
・「広域化等支援計画(仮称)」の策定

なお、広域化等支援計画は3~5年程度の支援計画で、その内容は、

・事業運営の広域化
 収納対策の共同実施、医療費適正化策の共同実施、広域的な保健事業の実施、保険者事務の共同化など
・財政運営の広域化
 保険財政共同安定化事業の拡充、都道府県調整交付金の活用、広域化等支援基金の活用など
・都道府県内の標準設定
 保険者規模別の収納率の目標、赤字解消の目標年次、保険料算定方式、応益割合などの標準設定

となっている(案)。
また、都道府県を単位とする「地域保険としての一元的運用」のあり方については、高齢者医療制度の見直しに合わせて議論するとしている。

この資料からは、高齢者医療と市町村国保の運営のあり方の議論が終わるまでの間は、現行制度の枠組みのなかでできることに取り組み、実質的な広域化を進めようとしていることがわかる。これまでの議論をみていると、どこが地域保険者になったとしても、住民に近い市町村が引き続き事務処理を担うことは、ほぼ間違いない(国民年金や後期高齢者医療制度の事務・役割分担が参考になる)。それならば、保険者再編の議論に先行して、保険者事務の共同化を進めておいたり、保険料の格差の問題に取り組んだりしておいても無駄にならないとの判断だろう。
その前のページ「高齢者医療と市町村国保の運営のあり方について」から論点をピックアップすると、

・市町村国保では、保険料額にばらつきがある。どのように保険料の基準・額の統一を図るべきか
・市町村が収納率の向上に積極的に取り組む仕組み(インセンティブ)をどのように設けるべきか
・市町村が保健事業の推進に積極的に取り組む仕組み(インセンティブ)をどのように設けるべきか

となる。これらは、広域化等支援計画の策定にあたって、都道府県が市町村の意見を聞きつつ検討していく内容そのものである。
1つめの論点は、保険料額などが都道府県平均よりも下回っている市町村にとって、広域化は保険料額の引き上げにつながる。デメリットのほうが大きい住民にどのように説明すれば理解が得られるのか、保険料の格差を段階的に小さくするための具体的な方策をどのように定めるのかという問題である。市町村合併が「破談」になった原因の一つ(住民税の引き上げと住民サービスの低下を懸念する市町村が反対にまわる)と同じであり、簡単に解決できる問題ではない。
2つめ・3つめの論点は、地域保険者のあり方がどうなったとしても、市町村の役割はこれまでどおりであるとしっかり明記することから始めるべきことである。インセンティブ・ディスインセンティブの仕組みはその後に考えればよい。

社会保障・税に関わる番号制度に関する検討会、第2回検討会開催される

2010年02月23日 09時31分13秒 | 情報化・IT化
22日に、税と社会保障の共通番号制度の第2回検討会が開催された。
第2回検討会で明らかになった方針は、以下のとおり。

・既存の番号と共存させる
医療保険の被保険者番号や基礎年金番号などの既存の番号を残し、それらを束ねる「共通番号」を導入する。
既存の番号を共通番号で置き換えると、他制度の情報を紐付けてみられるようになる。メリットもあるが、情報の漏洩や他目的での使用などのデメリットのほうが大きいとの判断なのだろう。
被保険者番号を廃止して、共通番号に置き換えるとすれば、何らかのサービスを利用するたびに、その番号を他者に知らせなければならなくなる。多くの情報を引き出せる番号が流通することに国民は不安を抱くだろう。プライバシーに配慮すると、裏で束ねる番号として使ったほうがよい。
このような議論の結果、1つの番号に集約しない方向で意見が一致したとのこと。

・住民基本台帳ネットワークを活用する
検討会の終了後、古川内閣府副大臣(事務局長)は「住基ネットが一番幅広く付いている番号であることは事実」や「外国人は入っていない」と述べ、住民基本台帳ネットワークを使う方向で検討していること、検討課題が残っていることを明らかにした。
峰崎財務副大臣も個人的な意見と前置きしつつ、「住民基本台帳ネットワークが適していると思う」と述べている。財務副大臣=納税者番号として、住民票コードそのものを使うか、住民票コードと連携する新たな番号を付与するかという議論がなされたものと思われる。
このブログで何度も取り上げているが、住民票コードの利用目的の拡大(報酬を受け取る相手に知らせる、その相手が番号をデータベース化するなど)には住民基本台帳法(第四章の二 第四節 本人確認情報の保護)の改正が必要となる。
住基ネットの最高裁判決において「行政機関が住基ネットにより住民の本人確認情報を管理、利用等する行為は、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表するものということはできず、当該個人がこれに同意していないとしても、憲法13条により保障された上記の自由を侵害するものではなく、自己のプライバシーに関わる情報の取扱いについて自己決定する権利ないし利益が違法に侵害されたとする被上告人ら(原告ら)の主張にも理由がない」とされていることからも、住民票コードを納税者番号として広く流通させることは難しいと考えられる。

住民基本台帳法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S42/S42HO081.html


新聞各紙の情報を総合すると、社会保障の分野においては、既存の被保険者番号をそのまま使い、保険者や市町村などの内部で共通番号を持ち、表に出ている個別の番号と裏で紐づけられるようにすること。税の分野においては、広く使われる納税者番号を国民全員と外国人に付与すること(その番号が、住民票コードと同一になる可能性も検討する)。社会保障の分野の番号と税の分野の番号は同一か簡単に紐付けられるようにすること。複数のITシステムの連携の核に住基ネットを置くことという、共通番号制度の概観がおぼろげながら見えてくる。

社会保障と税の共通番号、既存番号と併存へ
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100222-567-OYT1T01145.html

複数分野束ねる「基礎番号」検討=社会保障と税の共通制度で-第2回検討会
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/business/jiji-100222X012.html

共通番号に住基ネット最適 峰崎財務副大臣
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100222-00000583-san-bus_all

社会保障の給付や所得税の決定などの事務に住民票コード=共通番号が使われることに関して、国民の理解は得られやすい。しかし、その番号を国民全員が持ち運び、会社にも知らせ、何らかの報酬を受け取る際には、第三者にも知らせなければならないとなれば、理解は簡単に得られないだろう。住基ネットの最高裁判決もあることから、納税者番号を新たに付与し、その番号と住民票コード=共通番号と紐付けられるようにしておく、というのが現実的な「落としどころ」になると思われる。
外国人は住民票コードを持っていないため、この仕組みに乗せるならば、外国人登録制度の見直しが必要になる。外国人登録をしていない人たちが多くいるし、市町村が引越しや帰国などの異動情報を把握できていないなどの問題があり、新たな在留管理制度へと移行しないと対応できないと思われる。

子ども手当の財源確保は困難か 最高税率の見直しを検討

2010年02月22日 09時28分15秒 | 子ども手当・子育て
菅副総理・大臣が街頭演説にて、「たくさん収入のある方には少し率として多めに税を払っていただき、そういうお金を子ども手当で応援に回していく」や「今年から税制の本格的な議論を始めたい」などと述べ、所得税の最高税率を引き下げて税収の落ち込みをカバーしたいとの考えを明らかにした。

子ども手当、所得税増税で=財源確保へ最高税率見直し-菅財務相
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100220-00000095-jij-pol

「子ども手当の財源は増税で」菅財務相が発言
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100220-00000563-san-bus_all

また、野田財務副大臣は、「子ども手当の満額支給は難しい」との発言を「ハードルが高いという意味だ。ただハードルが高かろうが低かろうが、乗り越えなくてはいけない。しっかりと財源確保に向けがんばりたい」と説明した。鳩山首相の「11年度は当然予定通り満額をやる。財源は歳出削減を徹底的にやって、繰り出していく」の発言を基本としつつ、無駄の削減がどこまでできるかわからないなか、他の選択肢も用意しておく必要があるとのことだろう。
今週には、2010年度予算の目処がつき、子ども手当法案などの審議が本格化するとのこと。しばらくは目を離せない。

野田財務副大臣「子ども手当のハードル高い」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100221-00000535-san-pol

昨年度の事業仕分けの結果(その後の役人の巻き返し)をみていると、子ども手当の財源分を確保できるだけの無駄の削減ができるとは思えない。就任後、活動を本格化させている枝野行政刷新担当大臣の手腕に期待したい。
枝野大臣ば、就任会見にて、4月にも「事業仕分け第2弾」を開始することを明らかにしている。前回は準備不足で「財務省主導」と言われたが、今回は、1~2ヶ月の準備期間がある。省庁から提出されたリスト(廃止になっても構わないもの)を次々と「廃止」と宣言したショーアップした第1弾とは異なり、「制度のあり方まで視野に入れたかたちで仕分けしたい」と本格的な議論に持ち込みたいとのこと。野田副大臣が、仕分け人を担当した議員に関して「前回は少な過ぎたような気がする。倍くらいは必要だと思う」と発言するなど、着々と準備が進められているようである。

事業仕分け第2弾「議員は倍に」野田副大臣
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100221-00000643-yom-pol

チーム医療の推進に向けて「特定看護師」を創設 モデル事業を実施

2010年02月21日 10時17分23秒 | 高齢者医療・介護
厚生労働省の「チーム医療の推進に関する検討会」にて、医師の「包括的指示」のもと、特定の医療行為ができる「特定看護師」の創設について話し合われた。厚生労働省は、2010年度からモデル事業を実施し、報告書を取りまとめた後、特定看護師の要件の作成などに着手する方向で検討を進めている。

高度な医療行為できる看護師資格新設へ 厚労省が素案
http://www.asahi.com/national/update/0218/TKY201002170511.html?ref=goo

医師の指示で高度医療、「特定看護師」導入へ
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20100219-567-OYT1T01085.html

特定看護師の要件は、
・看護師免許を保有
・看護師としての一定期間以上の実務経験(例えば5年以上)
・新たに設立する第三者機関が認定した大学院の修士課程を修了
・修士課程修了後、第三者機関による知識・能力の確認及び評価
の4項目(素案)。
モデル事業にて検証し、問題がなければ、保健師助産師看護師法を改正し、法律上で明確に位置づけるとしている。

特定看護師ができる医療行為は、
・検査など
 患者の重症度の評価や治療の効果判定などのための身体所見の把握や検査
 動脈血ガス測定のための採血など、侵襲性の高い検査の実施
 エコー、胸部単純エックス線撮影、CT、MRIなどの実施時期の判断、読影の補助など(エコーについては実施を含む)
 IVR時の造影剤の投与、カテーテル挿入時の介助、検査中・検査後の患者の管理など
・処置
 人口呼吸器装着中の患者のウイニング、気管内挿管、抜管など
 創部ドレーンの抜去など
 深部に及ばない創部の切開、縫合などの創傷処置
 褥瘡の壊死組織のデブリードマンなど
・患者の状態に応じた薬剤の選択・使用
 疼痛、発熱、脱水、便通異常、不眠などへの対症療法
 副作用出現時や症状改善時の薬剤変更・中止
となっている(素案)。

看護師の業務範囲拡大の要件で議論
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-26011.html

「特定看護師」創設、モデル事業実施へ
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-26421.html

今後、都市部では、医療を必要とする高齢者が急増する。患者を病院がすべて引き受けることはできなくなるだろう。介護と同様、医療においても「施設から地域へ」の動きを加速させなければ、医療は「崩壊」してしまう。そうならないように、医師の負担を減らし効率化を進めること、医療の地域化を進めることが求められている。今回の看護師ができる範囲の拡大は、第一歩。他のメディカルスタッフの役割の拡大、組織と職種をまたがっての連携・役割分担など、検討しなければならないことは山積している。

目指すべきは、医師法第17条「医師でなければ、医業をなしてはならない」による縛りの見直しである。

医師法
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=2&H_NAME=&H_NAME_YOMI=%82%A2&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S23HO201&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1

湯浅誠氏、内閣府参与を辞任の意向

2010年02月20日 10時07分49秒 | ベーシックインカム
昨年10月に内閣府参与に起用された湯浅誠氏が「仕事に一区切りがついた」と辞任の意向を示していることが明らかになった。
朝日新聞によると、17日、湯浅氏から鳩山首相に辞任の意向の申し出があり、了承されたのこと。このことが公になったのは、19日午前の菅副総理・大臣の閣議後の記者会見で。菅氏は、「貧困問題は状況が改善されていない。同じような立場で協力してもらいたい」や「もともと、年内まではやるが、その後のことは白紙にしてほしいと言われていた。継続してほしいと私も首相も話している。近々、最終的な気持ちを確かめたい」などと述べ、慰留する考えを示している。

湯浅氏は引き続き協力を=菅副総理
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100219X587.html

元「年越し派遣村」村長の湯浅氏、辞任意向
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100219-567-OYT1T00563.html

湯浅誠氏、内閣府参与を辞任 「一区切りつけたい」
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/K2010021805270.html

昨日のブログで、「湯浅氏を事務局長に迎え」と書いたばかりなので、この時点で「一区切り」とは、いささか残念。
昨年11月のワンストップサービスの施行後、政府は、生活困窮・貧困者対策と連動させた「自殺対策100日プラン」を発表している。失業者対策ならば、支援を必要とするのは、年末よりもむしろ年度末。「一区切り」というなら、ぜひとも年度末まで頑張っていただきたいと思う。このまま辞任してしまうと、年末年始の「年越し派遣村」に約8億円の国費を使い、その成果を総括せず、反省を活かすことなくいなくなってしまった... と評価を落とすことになりかねない。

自殺対策緊急戦略チーム
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/senryaku/index.html

おそらく、このように思われかねないということをわかったうえでの決断だったと思う。第三者からはわからない苦労が多くあったのだろう(参与とはいえ、自分が思い描いていたことが何ひとつ実現できないとか、実現するためにものすごく大きなエネルギーを必要とするとか)。辞任の気持ちが変わらないなら、後任選びをしっかりしていただきたい。

自分を湯浅氏の立場に置き換えて考えてみると、この仕事の難しさがよくわかる。現実的な「第2のセーフティネット」とはどのようなものか。どこに働きかければ、それを実現できるのか。厚生労働省や地方自治体などがまともに取り合ってくれるのか。おそらく取り付く島もないだろう。
現実的にできることから手をつけていくしかないが、貧困問題の状況を大きく改善するものでないことは最初からわかっている。抜本的な解決を目指すためには、雇用保険を始めとする社会保障全体をどう再構築するかという議論は避けられない。

正直なところ、誰が後任になっても、手に負えない問題だと思う(誰が後任になるのかを楽しみにしつつ、参与はしばらく空席になりそうな気もする)。

年末年始の「生活総合相談」に要した国費が明らかに 5535人に7億9000万円

2010年02月19日 09時26分51秒 | ベーシックインカム
年末年始に194の自治体が実施した「生活総合相談」に訪れた求職者などは5535人、仕事探しや生活保護などを中心とする相談件数は6135件。それに要した国費は7億9000万円だったことが、政府の貧困・困窮者支援チームによる全国の実施状況の取りまとめにより明らかになった。

宿泊場所1万7000人分提供=年末年始の困窮者対策実績-政府
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-100217X242.html

時事通信社の記事をどう読めばよいかわからないが(ひどい文章なので、7億9000万円の内訳がわからない)、かかった費用を窓口に訪れた人数で割ると、1人あたり14万2728円。これを高すぎるとみるか、安いとみるか。ハローワークの職員に加えて市町村や社会福祉協議会の担当職員などの人件費(これまでの報道を合わせ読むと、延べ1万7654人の宿泊費などを含むと思われる)と考えると、経費としては妥当な金額。コストパフォーマンスを論じるならば、生活総合相談に訪れる人数を増やす努力がどれほどなされたのか、自立に向けてどのような働きかけを行ったのか(プロセス)、生活総合相談により貧困・困窮者層から抜け出すことができたのは何人なのか(アウトカム)を問うべきだろう。
時事通信社が報じた数値(インプットとアウトプット)を、貧困・困窮者支援チームの会合で報告しておしまいにしてはならない。きちんとプロセスとアウトカムを検証し、支援策として妥当であったのかを評価していただきたい。

年末年始の生活総合相談の実施状況
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kinkyukoyou/suisin/Hdai6/siryou2.pdf


それよりも心配なのは、政府の貧困・困窮者支援チームの動き。第6回会合(1/13)の資料7「ワンストップ・サービス・デイ、年末年始対策の実施を受けた課題と今後の対応について」をみると、あまりにも現実感・切迫感がない。

緊急雇用対策本部推進チームの活動状況
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kinkyukoyou/suisin/

ワンストップ・サービス・デイ、年末年始対策の実施を受けた課題と今後の対応について
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kinkyukoyou/suisin/Hdai6/siryou7.pdf

今後の対応についての1つめに「景気の回復による雇用機会の確保・拡大」があげられている。景気の回復を目指し、国として様々な手を打とうとしているのはわからないでもないが、生活困窮・貧困状態にある人たちへの対策としては、いささか「他力本願」的にも思える。また、「第2のセーフティネットの改善等」や「第2のセーフティネット等のサービスを日常的にワンストップで提供でき、切れ目のないセーフティネットを実現するための体制整備」においても、生活困窮・貧困状態にある人たちに1分1秒も早く手を差し伸べるには、ほど遠いようにも思える。事態はもっと切迫していることは、言われなくてもわかっているはず。役人がつくるような、しっかり書かれているけれども中身がない文書で「今後の対応」とまとめているようでは、残念である。

生活保護受給者、10年で2・3倍…大阪市財政圧迫
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20100218-OYO1T00980.htm?from=top

大阪市の生活保護受給者の急増(2010年度予算における生活保護費は2863億円で、一般会計の16.9%を占める)の記事からも、あまり積極的な対策をとると財政面への跳ね返りが大きくなること、そのために支援策を抑え気味にしなければならないとの事情もわからないでもない。しかしながら、湯浅氏を事務局長に迎え、「生活を守る」ことをスローガンに取り組んでいるのだから、「絵に描いた餅」になるかもしれないけれども、(厚生労働省からの圧力を排して)真にあるべき第2セーフティネットの姿を堂々と論じていただきたい。