制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

長妻大臣の指示1000件超 これからは情報のリークにも神経を尖らせる?

2010年03月17日 23時20分46秒 | その他
かねてから報道されていたことだが、長妻大臣からの指示がとうとう1000件を超えたとのこと。指示のなかには、大臣からとは思えないほどの細かいものや「箸の上げ下げまで...」とも受けとめられるようなものまであり、担当する役人らが困るものまであるという。しかし、逆にいえば、そのような細かいところまで指示しないと満足な仕事ができないということなのだろう。

細かすぎる? 長妻厚労相、指示1000件超
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/m20100317027.html

産経新聞の報道によると、「取材など報道の可能性を察知した場合には政務三役に報告すること」「記者に会った際には話した内容を報告」という指示もあるとのこと。この指示がいつのものかわからないが、先日の第4回高齢者医療制度改革会議では、その前日に共同通信社が「政府案」を決まったことかのごとく報道し、当日は(委員がそれぞれの立場や主張から意見をぶつけあう)議論らしい議論になっていなかった感もある。
意図的に情報を漏らして国民の反応をみたり、世論を「誘導」したりすることもあると思う。しかし、「政治主導」で進めたい政務三役が知らぬところで情報がリークされ、大事な場を白けさせるようなことは避けたいとの思いがあるのではないだろうか。

<長妻厚労相>年金事務所視察、改善要求を連発
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20100314ddm041010102000c.html

“ミスター年金”事務所視察で指示連発
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100313-567-OYT1T00702.html

大臣室には、国民から届いた声などが山積になっており、それぞれにどのように対応するかを指示した記録が付けられているとのこと。しかも、それらをきちんと管理しているので、半年間で1000件を超えたことや、期日までに達成できたか否かなどの進捗状況がわかるということなのだろう。
一国民としては、これからも大臣自らが情報を集め、考え、指示を出すことを続けていただきたいし、このブログで書いているようなことも情報源(国民から届いた声)の一つとして加えていただければと思う。

健康増進法 第25条の規定見直し 公共施設などでの原則全面禁煙化を通知

2010年02月26日 10時31分12秒 | その他
厚生労働省は、25日、受動喫煙の防止対策として、多くの人が利用する公共施設などでの原則全面喫煙を求める健康局長通知を発出した。

「受動喫煙防止対策について」に関する局長通知の発出について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000004k3v.html

2005年に「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」が発効し、2007年に開催された第2回締約国会議において、「たばこの煙にさらされることからの保護に関するガイドライン」が採択されるなど、受動喫煙を取り巻く環境は変化してきている。今回の通知は、2009年に取りまとめられた「受動喫煙防止対策のあり方に関する検討会報告書」に基づく。
原則全面禁煙となるのは、学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設(健康増進法 第25条)。通知で定められた、その他の多数の者が利用する施設は、鉄軌道駅、バスターミナル、航空旅客ターミナル、旅客船ターミナル、金融機関、美術館、博物館、社会福祉施設、商店、ホテル、旅館等の宿泊施設、屋外競技場、遊技場、娯楽施設、鉄軌道車両、バス、タクシー、航空機及び旅客船など。

<受動喫煙防止策>原則全面禁煙を通知 学校、官公庁、飲食店など--厚労省
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20100226ddm012010012000c.html

「飲食店は全面禁煙」厚労省、都道府県に通知
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20100225-567-OYT1T01054.html

公共施設の全面禁煙を要請=都道府県に通知-厚労省
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/nation/jiji-100225X716.html

「公共施設は原則全面禁煙」厚労省通知 飲食店など対象
http://www.asahi.com/national/update/0225/TKY201002250514.html?ref=goo

この通知は、全国の都道府県や市町村に発出されたもの。飲食店やホテルなどには市町村を通して受動喫煙の対策を求めていくことになる。受動喫煙対策には分煙対策では不十分で、全面禁煙を原則とする。全面禁煙が困難な場合に限り、暫定的に分煙での対応を認めるものの、喫煙可能な区域を明示すること、その区域に未成年者や妊婦が入らないような措置を求めている。また、あくまで暫定的に認めるものであって、将来的には全面禁煙を実現するように求めている。

飲食業界困った、「全面禁煙」厚労省が通知へ
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20100221-567-OYT1T00509.html

これだけタバコへの風当たりが強くなっているにも関わらず、歩行喫煙は減っていないし、吸殻を道端に捨てて平気な人もいる。食事中に近くのテーブルから漂ってくるタバコの煙は迷惑そのもの。この通知をきっかけに欧米並みの全面禁煙化を実現して欲しい。

厚生労働省、アフターサービス室を設置 民間人4人程度を公募(予定)

2010年01月20日 10時13分00秒 | その他
厚生労働省が導入予定の、新事業や制度改正を外部の視点から評価する仕組み、改善努力を続けるための仕組みの概要が明らかになった。このブログでは、1週間ほど前に取り上げているので、そちらもお読みいただければ幸いである。

厚労省アフターサービス室設置へ 長妻氏が指示
http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010011901000668.html

新たに導入する仕組みは、厚生労働省の政策評価を担当する部署に設置する「アフターサービス室」。社会保障分野に通じた民間の人材を4人程度公募し、2年間の任期付きで配置するとのこと。長妻大臣の「2010年年頭所感」には、厚生労働省に不足している能力として「実態把握能力」「制度改善能力」「コミュニケーション能力」の3つがあると書かれている。新たに設置される「アフターサービス室」は、制度改善能力の強化を主な目的とするもの。誰がどこで、なぜ困っているのかなどの「実態を把握」すること、対応する新しい制度をつくり、新しい事業を始めた後に、きちんと機能しているか、改善が必要かなどを把握して「制度を改善」すること、国民に対して、的確に「情報を発信」することが必要だという一連の能力=活動の「核」にあたる。

いかに優れた制度・政策であっても、万人のニーズに対応することはできない。対象とするニーズから外れるものが出てしまうのは仕方ないことだし、むしろ外れてしまうニーズを拾って新たな制度・政策につなぐことが必要とされる。いかに優れた制度・政策であっても、動き始めた直後から、少しずつ「手直しが必要な制度・政策」へと近づいていく。動き始めたことで新たなニーズが掘り起こされることもあれば、構想時には想定していなかった新たなニーズが見えてくることもある。それらの現行の制度・政策では対応できないニーズを把握し、現状に合わせて手直ししていくことが必要とされる。このように、すべての制度・政策には、「不断の改善努力」が義務付けられているといえる。

民間では当たり前の「アフターサービス」というよりも、より多くの顧客に受けいれられるように製品やサービスの改善の努力を続ける企業活動そのものといえる。企業においては、市場=顧客の声をきき、どう応えればよいかを考え抜き、具体化して市場に新しい製品やサービスを投入する。市場=顧客の声を再びきき、適切だったか評価する。このサイクルをまわして、新たな市場=顧客を獲得することが企業の使命といえる。長妻大臣の言葉を言い換えると、「制度・政策を考え、実行に移すところまではよいとしよう。しかし、今の厚生労働省は、実行しっぱなしで、評価と改善ができていない。それでは、PDCAサイクルのPとDしかないようなもの。厚生労働省でも民間と同じ努力をしてPDCAサイクルをきっちり回そう」ということになる。

アフターサービス室の立ち上げは、7月を予定しているとのこと。PDCAサイクルのCとAを担うことになるアフターサービス室の活躍を期待したい。

厚生労働省、新事業・制度改正を外部評価する仕組みを導入

2010年01月12日 10時05分35秒 | その他
日経ネットが、2010年夏に、厚生労働省が実施した新事業や制度改正を外部の視点から評価する仕組みを導入する、と報じている。
詳しくは、以下のURLをご覧いただきたい。

新事業・制度改正、外部に評価組織 厚労省
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20100111AT3S0600K10012010.html

省内に有識者で構成する外部評価組織を立ち上げること、評価組織は、事業や制度の実態把握を通じて、無駄がないか、制度が有効に機能しているかなどを評価し、効果がないと判断した場合には、廃止や見直しに踏み切るとのこと。きちんと運用されていること=アウトプットに加えて、運用することで所期の効果が上がっていること=アウトカムを確認し、評価することは、とても良いことだし、外部の目をきちんと入れることも大事なことである。また、その結果を事業の継続など=翌年度のインプットに反映する「フィードバックループ」をつくることが、外部評価組織の第1のポイントである。

子ども手当を例にすると、何人に支給したのかがアウトプット。子育て世帯の経済的な負担をどれほど軽減できたのか、子育てへの不安は解消されたのか、出生率の引き上げにどれほど寄与したのかがアウトカム。インプットが子ども手当の支給に必要な予算(事務経費を含む)。評価すべきはアウトカム=成果で、子ども手当の支給を始めるまでに、何を、いつまでに、どのレベルまで引き上げるのかをコミットすべきである。なお、子ども手当の成果を誰にでもわかるように評価するために、できるだけ定量的かつ客観的に把握すべきである。また、インプット=経費と比較して、そのアウトプット=成果を得るために最適な方法だったのかを評価すべきである(コストパフォーマンス=投資効果)。
なお、子育ての不安は、多くの領域に渡るものであり、手当により解消できる不安は、その一部である。アウトカムに「安心して子育てできる社会(子育て中の世帯にアンケートし、定量化する)」や「合計特殊出生率」を持ってくると、子ども手当がどれほど寄与したのかわからなくなる(言ったもの勝ちになってしまう)。政策目標から具体的なサブ目標に展開し、それをどのように実現し、評価するのかを考え、新事業や制度改正の前後で所期の効果が上がっているか否かを確かめる。このような考え方が自然にできる委員を招聘していただきたい。


このブログでは、公知の情報から、厚生労働省や経済産業省などが実施しようとしている事業や制度改正に対する意見を書いてきた。自立支援法や後期高齢者医療制度の「廃止」の検討は、これから本格化する。このブログにとって、これまでの3ヶ月少々は「助走期間」のようなもの。これからも、しっかり評価し、意見を書いていきたい。
長妻大臣および厚生労働省には、有識者からなる外部評価組織に加えて、このブログのようなインターネット上の評価も合わせて活用していただければと思う。

なお、厚生労働省の役人に、省の意図を汲み取ることに長けた「御用学者」で外部評価組織を固められたら、この仕組みの意味がない。外部評価組織の人選が第2のポイントである。長妻大臣が人選に責任を持ち、厚生労働省にとって都合のよい人選(省の制度・政策に批判的でなく、コントロールしやすい人ばかり)になっていないか、外部から意見をきいて確認する必要があるだろう。

京極氏の論文無断引用が発覚、業界に動揺が広がる

2010年01月08日 09時52分23秒 | その他
社会福祉の権威で、多くの審議会や委員会の座長や委員を歴任されている京極高宣氏(現在は、国立社会保障・人口問題研究所所長)が、論文の盗用や使いまわしをしていたと朝日新聞がスクープした。

国立研究所長が論文盗用、使い回しも 社会福祉の権威
http://www.asahi.com/national/update/0107/TKY201001060438.html?ref=goo

国立研究所長が論文を無断引用 厚生省時代に社会福祉分野
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/nation/CO2010010701000426.html

中央法規出版から2003年に出版した著作集(全10巻)のうち、第6巻に収録された「海外の社会福祉」。社会福祉・医療事業団(WAM)の広報紙に連載した内容をまとめたもので、フランスの社会福祉政策について論じた部分の約7割が、国会図書館の調査員の論文「フランスにおける社会福祉の法制と行政組織」から引き写されており、他の4カ国分の論文も内容を参考にしたとのこと。また、その内容を、1987年と1992年の2回にわたって、別の研究事業の報告書として提出していたことが明らかになった。

論文無断引用の国立研究所長「盗用ではない」
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20100107-567-OYT1T01194.html

京極氏は、厚生労働省で開かれた記者会見で「結果的に無断引用になったが、自分の視点で書き直しており、盗用ではない」「当時は報告書が未公開だったので、あえて引用元を明示しなくてもいいと上司に言われた」などと釈明しているが、社会的信頼の失墜は免れないだろう。
信頼の失墜は、京極氏に限らない。最近では、介護保険制度を始めとする多くの政策の立案に関わられているし、社会福祉学の学問としての創成期から長きに渡って研究領域をリードされてきたことからも、社会福祉研究の土台を揺るがしかねないスクープといえる。

税制と社会保障の一体的な改革は、今からの数年でグランドデザインが描かれ、着実に進められる。「国民の生命、生活を守る」ための政策を論ずるにあたっては、社会福祉学から大きな声を上げていく必要がある。権威と称されてきた京極氏の事件をきっかけに、何がどう変わるのか注視していきたい。

社会福祉学の研究者は、研究者倫理に反することをしていても気づかない(現場を知っていれば、教授になれるから)などと思われがち。実際には、そのような研究者は一部かもしれないが、相対的にみて「甘い」ことも確か。今回の事件を研究領域全体の問題として捉え、いかに信頼回復を図っていくかを関連する学会や研究者一人ひとりが考えるべきだろう。
また、これだけ社会福祉学の研究成果が望まれている時代なのだから、「空白期間」をつくらないようにしなければならないし、社会に発する声が小さくならないようにしなければならない。「次の世代」や「次の次の世代」へのバトンタッチを急ぎ、現在の社会福祉学的な問題に対応するためにも、学問としての建て直しが必要になるだろう。

ハローワークのワンストップ化、第2弾が決定 14日から

2009年12月12日 10時20分29秒 | その他
11月30日に全国77ヶ所のハローワークで実施されたワンストップサービスが規模を拡大して実施される。今回は全国一斉ではなく、実施する場所と日をずらして年末まで様々な支援サービスが提供される。

まず、来週月曜からの5日間、14日から18日のうち1日を「介護就職デイ」とし、全国すべてのハローワークで介護分野の就職面接会が実施される。締めくくりとして、19日(土)の13:00から、厚生労働省の講堂(霞ヶ関)で大規模イベントが実施される。介護事業者などの出店ブース(50程度)での情報提供や介護の仕事への理解を深めるためのセミナーや相談コーナーを設けるとのこと。詳細は不明だが、事前予約などは不要と思われる。

「介護就職デイ」の実施について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000002z64.html

厚労省がハローワークで介護の面接会を開催―14日から全国で
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-25508.html

全国の有効求人倍率が0.44倍に対して、介護分野は1.33倍と、人手不足の状況が続いている。そのため、全国の事業者が説明会などを実施しているが、年々参加者が減っている(しかも、事務職の希望者ばかり)。仕事がなくて困っている人たちが介護の仕事を積極的に選べるようにしないと、成果は期待できない。あと2日間で何とかなる問題ではないが、並行して取り組まなければならないことである。

介護職目指す学生半減 福岡県内の福祉士養成校、4年間で
http://news.goo.ne.jp/article/nishinippon/region/20091211_local_FT_007-nnp.html


次に、先月末に実施した「ワンストップサービスデイ」と同様の取り組みが21日を中心に全国で実施される。現時点では、全都道府県の332市区町村(16の政令指定都市、34の中核市)が参加する予定。調整が続いている市町村もあるとのことで、さらに規模が大きくなると思われる。
なお、ハローワークごとに実施の日が異なり、市役所の会議室などハローワーク以外の場所でも実施されるとのこと。そのため、参加希望者は事前の確認が必要。先月末の試行後の振り返りで出された「当日になって知った人も多くいる。求職者への周知・情報提供が十分でなかった」などの反省を活かし、厚生労働省、全国のハローワークや参加自治体などが工夫を凝らして、地域住民への情報提供に努めてほしい。

また、年末年始(12月29日から1月3日)に、45の市町村で、生活困窮者向けの生活総合相談が実施される。このブログで、1週間ほど前に「リーマン・ショックで仕事を失った人たちの失業給付受給期間(1年間)が終わろうとしている」と書いたが、全国で約95万人にのぼるとのこと。年末年始を乗り切るためにも、全国の市区町村に展開していただきたい取り組みである。

全都道府県でワンストップ窓口=14日から第2弾-失業者支援
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/business/jiji-091211X140.html

求職・生活支援のワンストップ、21日中心に
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20091211-567-OYT1T01166.html

ハローワークのワンストップ化、利用者2399人 年末に第2回目を実施

2009年12月04日 10時37分49秒 | その他
先月末に全国77ヶ所のハローワークで実施されたワンストップサービスの利用者は、2399人。その効果を検証するために開催された「貧困・困窮者支援チーム」の会議で、12月下旬に第2回目の「ワンストップサービスデイ」を開催すること、安心して年末年始をおくれるようにと住宅紹介を中心とする生活総合相談を実施することが確認された。また、全国の都道府県と政令指定都市、中核都市に協力を呼びかけ、昨年度末のようなこと(日比谷公園の「年越し派遣村」)が再び起こらないよう、全力を挙げて取り組むことになった。

失業者の総合相談、年末年始開催へ=住宅紹介が中心-政府
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-091203X603.html

今回の試行を高く評価する声がある一方で、ワンストップサービスを試行していることを知らずに訪れた人たちがいる(困っている人たちに情報が届いていない)、「生活保護は相談のみ」としたためにワンストップになっていないと評価する人たちもいる。あと2週間しかないが、改善ポイントを整理し、第2回目の試行が始まる前に業務マニュアル(実践的ノウハウ集)として展開すべきだろう。


<菅副総理>「求職者支援は福祉と連動を」と指示
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091203-00000089-mai-pol

仕事を失うと同時に住まいも失う人が絶えない。そのような場合でも失業給付が出るまでには3ヶ月かかる。住むところのない不安定な暮らしを強いられ、それが理由で次の仕事が見つからない、生活保護も受けられないということになると、路上生活=ホームレスに向かう「悪いスパイラル」に入ってしまう。そうすると、なかなか抜け出せない。住宅手当やつなぎ資金の貸付などの制度があったとしても、あることを知らなかったり、要件を充たしていないからと利用できなかったりする。失業給付などを受け取ろうにも、金融機関に口座がないと受け取れないし、住まいが定まっていないと新たに口座をつくることもできない。
つまり、失業がきっかけとなって「貧困・生活困窮」に陥らないようにするための「セーフティネット」が制度ごとにばらばらに張られていて、どこにも引っかかることなく落ちてしまう人たちが出てしまうような状態である。ハローワークでのワンストップサービス(窓口の一元化)は、あまりにも対症療法的。様々なセーフティネットを連動させ、重ね合わせるように張ること=社会保障制度として実現することが求められているということだろう。

このブログで書いたように、失業者の5人に4人は、雇用保険に加入していない。仕事を失うと家賃が払えなくなり、住まいも失う。既存のセーフティネットではカバーできない人たちが増え続けているということである。「求職者支援は福祉と連動を」というのは、ハローワークで仕事を紹介するだけでは不十分。仕事に就くための何らかの「壁」があれば、乗り越えるように支援する、その準備が整うまでの間の生活を支えるために、生活保護や貸付などのサービスを使えるようにする。仕事に就いて、望む生活を実現することを目標として、様々なサービスを連動させ、セーフティネット(これ以上、落ちないようにするための網)から元の高さまで跳ね返すような「トランポリン」的な支援のあり方が求められている。そうしないと、セーフティネットから多くの人たちが抜け出せなくなってしまう。

なお、既存のセーフティネットもボロボロになっており、早急に手入れをしなければならない状態である。雇用情勢の悪化を受けて、失業手当の支給が急増しており、労働保険特別会計に3000億円を投入する方針が明らかになった(補正予算に計上予定)。10月の失業給付の受給者は、約85万5千人で、前年同月より約4割増えている。リーマン・ブラザーズが破綻したのは、2008年9月。「対岸の火事」のように思っていたが、その直後から大きな影響が出始め、「リーマン・ショック」という言葉がうまれるに至った。それから1年あまりが過ぎようとしており、リーマン・ショックで仕事を失った人たちの失業給付受給期間(1年間)が終わろうとしている。年末から年度末に向けての経済情勢・雇用情勢、緊急雇用対策などから目が離せない。

失業手当の受給者急増 3千億円追加投入方針 補正予算
http://www.asahi.com/politics/update/1203/TKY200912020475.html?ref=goo

ハローワークのワンストップ化、規模を拡大して試行中

2009年11月30日 09時45分43秒 | その他
「年越し派遣村」が繰り返されることがないようにと、「ハローワークでのワンストップサービス」が始まる(経済と雇用の情勢は今年のほうが厳しいと思う)。28日には詳細が明らかになり、「17都道府県の77ヶ所」で試行されることになった。東京都、愛知県、大阪府のハローワークは全て。政令指定都市のハローワークや船橋市、横須賀市、岐阜市などのハローワークでも試行される。

失業者の問題まとめて相談、17都道府県で30日
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091128-00000892-yom-soci

実施ハローワーク等
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/employ/onestop01.html

サービス内容
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/employ/onestop.html


場所によっては、弁護士が多重債務の相談に応じたり、臨床心理士が相談に応じたりするとのこと。各地で様々な創意工夫がなされること、そのノウハウが全国各地のハローワークに展開できることは、とてもよいことである。ハローワークは国の出先機関であるために、地域社会とのつながりが薄い。失業者・生活困窮者をトータルで支えるためには、地域社会とのつながりは不可欠であり、ワンストップ化の成否は、市区町村や社会福祉協議会、弁護士会、臨床心理士会、地域の様々な支援団体などといかに良好な関係を築くかにかかっている。つながりの広さと強さは、地域の失業者・生活困窮者の将来の生活に直結するのだから、職員には、(慣れない仕事で大変だと思うが)何としても頑張ってほしいし、困っている人たちが頼りにして集まってくる「ハローワークという場所」の可能性を引き出してほしい。
ハローワークは、頼りに集まってくる「困っている人たち」と、かれらを「支援する人たち」が出会う「場所」になりうる。ハローワークの職員が常に前面に出なくても構わない。時には、場所を提供し、出会いを活性化させる「裏方」に徹することも必要である。地域の支援者・団体においても同様である。ハローワークという場所=地域の社会資源の可能性を引き出すために、主義・主張と縦割りの壁を越えて協力していただきたい。


ハローワークのワンストップ化に並行して、内閣府の「自殺対策緊急戦略チーム」が「自殺対策100日プラン」をまとめている。自殺者が11年連続で3万人を超えており、雇用情勢の悪化などにより年末や年度末にさらに増えることが懸念されることから実施される緊急対策で、ハローワークに総合的な窓口を設けるとのこと。自殺のおそれのある人たちに保健師やNPOなどが提供する専門的なサービスをつなぐなど、今回のワンストップサービスと連動させることを前提としている。また、様々な支援策を紹介する「生きる支援のガイドブック」も作成し、配布するらしい。
この2つの対策は、このブログでも発信してきたことであり、ぜひとも成功に結びつけてほしい(生活=生命がかかっているのだから、成功するまで知恵を絞らなければならないのだが)。

自殺対策100日プラン=福島担当相
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-091127X522.html

政府が自殺対策100日プラン 年度末に向け職安に窓口
http://www.47news.jp/CN/200911/CN2009112701000456.html


「自殺対策100日プラン」は、年度末までの緊急施策として、
・地域別や職業別などで自殺の原因を分析し、仕組みをつくる「自殺実態に基づく対策の立案」
・失業者や経営者ら「自殺のハイリスク群」への支援
・自殺多発地を拠点にした支援
・問題を抱えた人向けのガイドブック作成など、支援策を活用するためのツール開発
の4つが掲げられているとのこと(詳細はいずれ公開されると思う)。

「人手不足の介護に人材を」緊急雇用創造チームが初会合

2009年11月08日 10時09分13秒 | その他
政府の緊急雇用対策本部の「緊急雇用創造チーム」が初会合を開き、雇用創出の「3つの重点分野」である「介護」「農林」「地域社会」を担当するサブチームを設置。介護では、山井和則厚労政務官が主査を、小川淳也総務政務官が副主査を務めることになった。緊急雇用創造チームは、緊急雇用対策本部の「推進チーム」の一つで、既に「貧困・困窮者支援チーム」と「新卒者支援チーム」が発足している。
会議では、「人手不足といわれながらも、なかなか人が集まらない状況なので、特にここ(介護)に力を注いでいく」、「今、非常に深刻な雇用不安となっているが、その中で逆に人手不足となっている分野の一つが介護だろうと思っている」との発言があった。

取り組みの目玉になることは以前から報じられていたが、うまくいくとは限らない。
単純化すれば、一方に大量の求職者(失業者や離職者など)がいて、もう一方には人手不足の業界がある。ゆえに左から右へと人を動かせば、両方の問題が解決する、との乱暴な考えである。ミスマッチは避けられない。
確かに、介護現場は慢性的な人手不足だし、これから迎える超高齢社会に備えるために人手の確保を急ぐ必要がある。しかし、介護するということは、それほど簡単なものではない。向き・不向きもあるし、少なくとも「おもい・気持ち」が無ければ、やっていけない。中途半端な気持ちでできる仕事ではない。生活のための仕事なら、いくらでもある(時給に換算すると、コンビニのアルバイト並みである)。少し景気が上向けば、介護の現場からあっさり出て行ってしまうようでは、逆に問題を大きくするだろう。

介護業界は、この乱暴な考えに異議を申し立てるべきだろう。

第一に、「給料を得ながら無料で研修を受けることができ、そのまま就職することもできるから」との理由で、大量の求職者が介護の現場にやってくるからである。当然ながら、福祉や介護の仕事に魅力を感じていない人たちもいるし、向いていない人たちもいる(多くは自覚しているだろう)。それらの人たちが資格を取得するのための研修の一環として、現場実習にやってくるのである。
慢性的な人手不足のなか、なんとか回している状態であり、やる気のない現場実習に付き合う余裕はない。苦労して付き合ったとしても、「介護は向いていないから」と継続して働く気もない人たちもいる。これでは、報われない。しかも、そのような中途半端な気持ちでは、利用者に迷惑がかかる。そのフォローだけでも大変である。

第二に、「介護の仕事は、ちょっとした研修を受ければ簡単に資格がとれる=誰でもできる専門性の低い仕事」とのイメージを持たれかねないからである。しかも、高齢者介護の現場は、「雇用の調整弁」ではない。福祉・介護の専門性を高めなければならないと介護福祉士・社会福祉士の資格要件を引き上げたのではなかったのだろうか。それならば、福祉・介護は「高度な専門性を求められる仕事」であり、「介護雇用プログラムごときで、どんどん増やせる人材ではない」と主張すべき。「介護雇用プログラムでも申し込んでみるか」や「介護施設しか採用してくれなかった」の「でも・しか」では続かないことはわかっているはずである。

そもそも、高齢者介護の現場は、この方針にどう思っているのだろうか。
緊急雇用創出事業の委託を受ければ、それだけ経営が安定する。求職者の中には向いている人たちもいるだろうし、わずかでも定着すればよい、ぐらいの思いだろうか。それとも、まだ「他人事」だろうか。

賛成(歓迎)とも反対とも、何の声も上がらないことが、一番の問題だろう。

「人手不足の介護に人材を」―緊急雇用創造チームが初会合
http://news.goo.ne.jp/article/cabrain/life/cabrain-25084.html

「年金通帳」で、年金の「個人勘定」化が進むと

2009年10月17日 10時29分00秒 | その他
年金通帳の考え方は、かなり前から打ち出されていたので、目新しさはない。しかし、「これまで納付した年金保険料額」と「将来、給付される年金額」が印字され見比べられるという「社会保障個人勘定」の考え方が取り入れられることから、国民=被保険者への情報提供のあり方を考えてみたい。

解決しなければならない問題は、「年金記録問題」だけではない。

多くの若者が、「自分が年をとったときに年金がもらえるかわからない」や「納めた保険料を取り返すことができない。損をする」と考え、「未加入でもよい」あるいは、毎月の給与から天引きされる社会保険料に「何でこんなに」との思いを持っている。
「年金通帳」で、負担と給付の関係が明確になったら、どうなるだろうか。人口ピラミッドがこれだけ崩れ、長年に渡って物価が上昇してきたことから、現役世代は、負担額が給付額を上回る。「個人勘定」化に踏み込むと、国民は、年金制度を「損得」で捉えることになる。「これだけ取られているのに、もらえるのは、たったのこれだけ」との思いを持つことになる、現役世代の年金制度への不満は、ますます高まるだろう。

だからといって「都合が悪いことだから国民=被保険者からは見えないようにすればよい」というわけではない。しかし、国民に向けて発せられる情報=メッセージによっては、社会保険制度=年金制度が崩壊するきっかけになりそうな気がする。

社会保険制度は、生活をおくる上での様々なリスクを被保険者が分散して負担する「社会的な制度」である。年金制度は、「年をとって働けなくなる=生活に必要な収入を得ることができなくなる」ことをリスクとして捉え、生活が立ち行かなくならないよう、国民=被保険者全体で支え合おうという制度である。つまり、「個人勘定」にして被保険者1人あたりの損と得を見えるようにし、「年金制度に加入することが、経済的に合理的だと示す。逆の場合は、未加入のほうが合理的」との民間の保険商品の概念を持ち込むことが、社会保険制度のリスク分散や世代間の支え合いなどの「相互扶助」の理念を壊してしまうのではないか、と思われる。

日本の年金制度は、3階建てになっており、社会保険の概念と民間保険の概念が入り混じっていて、すっきりしない。
1階の国民年金部分は、まさしく社会保険の考え方であり、最低限の生活を保障するための年金制度。2階と3階は、現役時代に納めた保険料(所得)に応じて支給される、民間の保険商品の考え方である。どちらかといえば「損得」で割り切れるところであり、強制加入の社会保険制度には馴染みが悪い。
「年金通帳」を使った国民=被保険者への情報提供のあり方によっては、社会保険制度が根底から崩れていくかもしれない。マニフェストには、次のように書かれている。

所得の把握を確実に行うために、税と社会保障制度共通の番号制度を導入する。

民主党には、複雑化した社会保険制度を根底から組みなおす目論見があるのかもしれない。